連載 「こけしの恩返し」18 花屋のバイト編(2)


花屋は忙しい。やることが後から後から湧いてくるので、ぼーっとできる時間はほぼない。くるくると回るコマのように、一日中回り続ける。最初のうちはそのペースについて行くのがやっとだったのだが、少しずつ慣れてくると、そんな働き方も悪くはない、いや、おもしろい、結構自分に合っているかも、と思うようになった。身体を動かすことは嫌いじゃないし、一日中パソコンの前に座って仕事をするよりは立って動いている方が自分には合っている、そう思ったのだ。それに、花屋の仕事は常に変化する。全く同じオーダーはないし、お客さんも様々、要求も様々で、マニュアルなんてあっても適用しないことばかり起こる。それが一番大変な部分ではあるのだけれど、ルーティーンの仕事が苦手な私にとっては、このくらい変化に満ちた仕事の方が、飽きずに続けられたのかもしれない。

一歩一歩、少しずつ手持ちのアイテムを増やしていくように、少しずつできることが増えていった。小さいブーケを作れるようになり、そこから少し大きなブーケになり、そうやってブーケを作れるようになることは成長を確認するような感覚で嬉しかった。

花屋は一年に数回超繁忙期がやってくる。母の日、年末、が2大トップ。あとは3月の送別の時期。母の日と年末はシフトが詰め込まれ、毎日夜遅くまで働く日々が続くので、最終日はへとへとだった。これは若い子じゃないと続かないな。。。と思うような働き方だった。そんな繁忙期、体力的にはかなり辛いけれど、スタッフみんなが一同に集まるその時期は、部活のような楽しさもあった。夜遅くまでへろへろになりながらも、みんな和気あいあいとした雰囲気でしゃべりながら作業をした。電気も消されて暗くなりながらも、みんなで協力し合って仕事をしている空間は、なんだか不思議な居心地の良さがあった。

私の居た店舗は、とにかくスタッフの人柄が抜群だった。こんなに周りの人に恵まれた職場は初めてだったし、この先もあんな居心地のいい職場はないんじゃないか、と思う。みんな、思いやりがあって、やさしくて、楽しくて、笑顔が素敵だった。こんな私を受け入れてくれている、そのことが本当にありがたかった。笑顔が苦手だし、基本的に人が苦手で、人間的に未熟な部分が多い私は、多分あの職場で精神的に一番幼かったと思う。一番年上だったけれど。。でも、そんな私を「居て良し!」と、全面的に受け入れてくれた。それぞれの得意な分野を伸ばしていけばいい、という、店長の考え方にもとても救われた。私は、あの店舗じゃなかったらあんなに長くは絶対に続けられなかったと思う。あの店舗を選んで本当によかったと思うし、みんながいてくれたことに、心から感謝している。

もうみんなと働くことはないんだな、と思うと、本当に切ない。東京で働く最後の職場が、あんなに素晴らしい職場だったというのは、東京が私にくれたご褒美のような気がしてならない。私と仕事の関係は、うまくいかないことが多かったけれど、あの職場に巡り会えたことは、負の経験を帳消しにするくらい、素晴らしいギフトだった。あっちにぶつかりこっちにぶつかりしながら必死で歩を進めた末にゲットしたものは、キラキラ光る宝石だったのだ。


花屋のみんな、本当に本当にありがとうございました!!!

みんなのことが、大好きです!!!

みんなの幸せを、心から願っています!!!

ありがとうございました!!!



次回、バイト以外の制作などにまるわる話に触れます!

お読みいただきありがとうございました!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?