連載 「こけしの恩返し」11 就職、終了編
会社でお世話になった人で忘れてはならない存在、それは、
課長。
私は事務の仕事を途中からほぼしなくなったので、営業の課長とはそこまで密に仕事をする機会がなかったのだが、官庁のポスターを作る案件では課長が窓口となっていたため、その仕事を通して大分お世話になった。
課長はお母さんが画家、ということもあり、美術方面に対して理解と見る目をお持ちだった。だから、ポスターなどをつくる中でもいろいろなアドバイスをいただいたし、励ましてもいただいたし、それに課長はよく褒めてくださった。
「きよっち、これいいよ!」と、言ってもらえると、なんだかほんとに大丈夫な気がしてきたものだった。
課長は人生経験が豊富なので、いろんなことに対して見解が広く、それにある程度ものごとを客観的にいつも見ているような、感情に走らない落ち着いた目線があるような気がしていて、だから課長の言うことは信頼できたし、大丈夫と言われればそれはきっと大丈夫なんだ、と思える説得力があった。
会社を辞めた後も、課長と営業事務の先輩と3人で会うことがあった。大体四ッ谷界隈の居酒屋で、最近どうだ?というような話から人生生きてく上でのヒントになるような話や会社の話やあの人の話や結婚の話やくだらない話や、いろんな話をした。
私は3人で会う時間がとても好きだった。お二人といると、優しくてあたたかいものに包まれているような安心感があったし、私にとって貴重な心許せる場所だった。
今回、私が長野へ引っ越すことに対しても、課長は「変化はすごくいいことだ」と言って背中を押してくれた。離れていても、ふとしたときに気にかけてくださる、本当にありがたい存在です。
会社に就職したことで学んだことや得たことはたくさんあったけれど、私にとって一番の収穫は、素晴らしい人たちと巡り会えたこと、だと思う。
そして、自分には何が出来て何が出来ないか、
何が好きで何が好きではないか、
を気付かせてくれた機会でもあった。
あの夏、実家で寝込んだ先に待っていたものが、こんなにも大きなものだったとは。いろんな巡り合わせ、奇跡のような天の采配に感謝しています。
就職、ありがとうございました!
会社を辞めようと決めてから、私はデザイン事務所に転職しようと考えていた。ほぼ自己流でやってきたデザインの仕事を、もっと本格的にやってみたい、そして技術を身につけて、独り立ちできるようになりたい、と思ったのだ。就職する前に一度デザイン事務所を受けた時はイラストレーターを目指すと言って辞退したけれど、今回こそは、腹を決めて学びにいく時なんじゃないか、と自分を鼓舞し、いくつか気になった事務所をピックアップし、まずひとつ応募してみたところ、なんと内定をいただいた。もっと難航するかと思いきや。きっとこれはこういう流れがきているんだ、ありがとう神様! と未来にワクワクしながら、内定のお知らせをもらったことを母親に電話した夜の景色をぼんやりと覚えている。
かくして、私は4年勤めた会社を辞め、デザイン事務所へ勤務することになったのでした。
次回、デザイン事務所のことを書く前に、就職期と同時進行で活動していたアトリエギャラリーのことについて書きたいと思います!
お読みいただきありがとうございました!
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