春の足音

3月になり、着実に春の気配を感じている。
寒い寒い長野の冬を越えた時の
あの喜びを感じるまであともうわずかではなかろうか。
極寒のバイト先で、カイロを使わず厚着だけで寒さを感じず過ごせるようになってきた
ということは、
これはかなり春の気配である。
どんだけ過酷な環境で働いているか、ということはさておき、
水に触りたくなったり
締め切っていた部屋の間仕切りを開けたくなったり
自転車に乗りたくなったりするのは、
春が近くに来ているからに他ならない。
寒くて辛い冬を乗り越えて春を迎える、その喜びを、
長野県民全体で祝い讃える祭りをしたい。
夏祭りよりも秋祭りよりも、春祭りが一番重要かつ喜び度が高いと思うのだが、
どうでしょうか?

話は変わって、
先日、バイト先で花の注文を受けた。
40代くらいの男性のお客様で、
結婚記念日に奥様に渡す花束のご注文だった。
私は基本的にお客様の顔がなかなか覚えられない質なので、
そのお客様も初めてお会いすると思っていたのだが、
「去年贈ったのはこの花束なんです」と言って見せてもらった写真は
どう見ても自分が作った花束だった。
そしてなんとなく思い出し始めた。
ミモザが好きで、黄色が好きで、と、
そんなようなこと、去年も言われたような気がする。
ご来店の時間も前と同じ、夕方だったような気がする。
「黄色や小さい花が好きな人なので、そういう花を入れてください」というご注文をいただいたので、
今回もミモザを入れて、
スプレーバラやレースフラワーなどの小さめの花を入れて、
ふわっとボリューム感のある花束を作った。
前回の花束とは印象が変わるように、と、
ラッピングの紙の色も変えた。
出来上がった花束を「ありがとうございます」と受け取ってくださったお客様に、
私は「毎年ご利用いただいてありがとうございます」とお伝えした。
本当にそう思ったから。
多分あの方は、1年に1度、結婚記念日の時にしか
いらっしゃらないのではないかと思う。
年に1度の大切な日のために、
我がバイト先を選んでくださるということ、
それはかなり嬉しいことだと思う。
そして、そんな特別な日の花束を、2年連続でお作りできたこと。
自分の手を介して出来た花束が、
誰かの大切な時間に寄り添い、
人の気持ちの橋渡しになっていっている姿を想像すると、
花屋っていい仕事だよなあ、、と思う。
大切な日のお花を今年もお作りすることができたということが
ありがたかったし嬉しかった。
そして、そんな風に、
相手の好きな花を毎年渡したい、と思える、
そのご夫婦の像が、
とても素敵だなあ、と思った。

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