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胸椎黄色靭帯骨化症の疫学と臨床所見

こんにちは!理学療法士のこじろう(@reha_spine)です。

今回の記事は、【整形外科⭐︎リハマガジン】として初回になります!

普段は【腰痛マガジン】のメンバーとして腰痛に関する記事を投稿しております!


この度、【整形外科⭐︎リハマガジン】を始めた理由としては、やはりアウトプットしないとなかなか身につかないと実感しました😂

私は整形外科の病院に勤めて10年以上になりますが、頭の中に詰め込んだ内容は徐々に薄れていき「前に勉強した内容だけどほぼ記憶にない!」状態に陥っております!

そして研修会で学んだ内容は資料を見直さないとほぼ覚えていないというお金も時間も無駄にしている自分に以前から気づいていました。

「一度勉強した内容を簡単に見返せる」「普段の臨床の疑問をアウトプットする」という目的でこのマガジンを開始しました。

なので気軽に読んで頂けると幸いです😄


今後発信していく内容としては以下の通りです!!

🔖 様々な整形外科疾患に対する疫学や基本的な内容を集約したもの
🔖 文献で気になった記事を紹介
🔖 自分自身の日々の臨床の疑問点に対して調べたこと
🔖 研修会で学んだ内容を分かりやすくまとめたもの


まずは、どこの馬の骨か分からないと思うので簡単に自己紹介をさせて頂きます!

▶︎執筆者紹介

☑︎こじろう
☑︎職業:理学療法士(11年)
☑︎保有資格:
認定理学療法士(運動噐)
FRP(ファンクショナルローラーピラティス)ミドルコースインストラクター
転倒予防指導士
栄養コンシェルジュⅠ
☑︎専門分野
整形外科、ピラティス


では今回の内容です!!

初回の内容は「胸椎黄色靭帯骨化症」という少しレアな内容です!

なぜこの内容かというと、この度この疾患の方を担当させて頂くことが有り、理解を深めるためにこの内容にしました。

基本的な疫学的なところをまとめていきます!

▶︎胸椎黄色靭帯骨化症とは

黄色靭帯骨化(OLF)はの症状は胸椎椎間板ヘルニアや後縦靭帯骨化症(OPLL)と同様に胸部脊髄症になります。

発症年齢は50-59歳以降で有病率が高く、年齢とともに更に上昇しやすくなります。

好発部位はOPLLが上・中位胸椎であるのに対してOLFは上位胸椎(T3-5)・下位胸椎(T10-12)となります。

OLFは脊髄を背側から圧迫する骨化巣であるため、後方からの椎弓切除により摘出します。

診断は以下のもので比較的容易に可能となります。

☑︎OPLLは側面単純X線像、断層画像、矢状断MR画像
☑︎OLFはCT、CTミエログラフィー、横断MR画像

画像上の特徴としては、OLFはMRIではT1強調像・T2強調像ともに低信号を呈しますが、骨化巣の同定にはT2強調像が優れています。

また、画像上にてOLFが4mm以上となると脊髄圧迫が脊髄症の原因となりうる。


▶︎OLFの疫学

【発症率】
中国人健常ボランティアでのMRI解析ではOLFの有病率は3,8%という報告やがん検診の全身スクリーニングのためPET-CTを受けた症例において胸椎OLFの有病率は12%であったとの報告もあります。

頚椎後縦靭帯骨化症(OPLL)の患者では効率に胸椎OLFを併発するといわれています。頚椎OPLLにて除圧術を施行された45%にOLFを認めた、頚椎OPLLが連続型であると有意にOLF合併頻度が高いなどの報告があります。


【OLFに併存する脊椎病変】
胸椎OLFには他の脊椎疾患が併存する確率が高いため、脊椎全体をチェックする必要があります。

☑︎30%以上に同部位の椎間板ヘルニア
☑︎18%に頚椎OPLL
☑︎6%に胸椎OPLL
☑︎21%にびまん性特発性骨増殖症(DISH)
☑︎75%に頚椎または腰椎病変


▶︎症状

☑︎錐体路障害として下肢の痙性麻痺(急性発症の場合は弛緩性の場合もある)
☑︎下半身の知覚・運動障害
☑︎腰痛・下肢痛
☑︎排尿障害(進行した場合)

▶︎神経学的所見

☑︎Th10/11椎間:アキレス腱反射(ATR)、膝蓋腱反射(PTR)ともに亢進(80%)。
☑︎Th11/12椎間:ATR,PTRが亢進することもあればL4髄節、あるいは硬膜内L4神経根障害が生じればPTRが低下することもあります。症状としては腰痛(上位腰椎神経根障害の可能性)が特徴的。
☑︎Th12/L1椎間:下腿以下の筋力低下(特に前脛骨筋)と感覚障害、膀胱直腸障害が特徴的。ATRは通常低下もしくは消失。
☑︎L1/2椎間:大腿部や膝外側の疼痛が特徴的


また、Th10-11胸髄節に病変があるときは「Beevor徴候」が有用なことがあります。

「Beevor徴候」
Th10-11胸髄節に病変がある場合に腹直筋の下半分に脱力が起こるため、臥位で患者に臍を見るように頭を挙上させると臍が上方に移動する現象


▶︎予後と成績不良因子

【胸椎OLFの高位別の平均改善率】
☑︎上位胸椎:56,5%
☑︎中位胸椎:6.6%
☑︎下位胸椎:54%
【成績関連因子】
☑︎術前罹患期間
☑︎脊髄前後方向の圧迫率
☑︎中位胸椎OLF
☑︎術前JOAスコア6点未満
☑︎硬膜への癒着の有無(無しの方が成績良好)

▶︎手術の合併症

癒合型、膨隆型のOLFでは硬膜骨化を合併する頻度が高く、手術では約7%〜30%の頻度で硬膜損傷を合併することがあります。

また、術後の神経症状の悪化は0〜18%に見られ、硬膜損傷、硬膜外血腫などが原因として挙げられます。その後の経過としては早期に回復したものもあれば、長期に遺残する場合もあります。硬膜外血腫の頻度は1,1%〜3,8%、術後感染は1,1%〜12,1%との報告があります。


▶︎まとめ

以上、胸椎黄色靭帯骨化症について、疫学から神経症状、予後、術後合併症についてまとめました。

以上で今回の内容は終わりとなります。

また、このような形で日々の疑問を投稿していきたいと思いますので宜しくお願いしますします!

ではまた次回をお楽しみに!!


▶︎参考文献

・脊柱靭帯骨化症 診療ガイドライン2019
・標準整形外科学




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