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そこに居てくれるだけで


人は時々、自分の存在価値を考えてしまいます。
また、人と比べる事で、あれが出来ない、
これも出来ないと時々自信を失います。

僕の知人に司法書士の資格を取り、地域で、
とても活躍している若者がいます。
僕はその彼の事を子供の頃からよく知っていて、
実は、彼の父親が、その昔、
不幸にも重度なアルコール依存があり、
入退院を繰り返し、定職に就けずに、
家庭内で暴力事件などもたびたび
起こしていていた時期がありました。

彼の母親もその事で経済的にも精神的にも
大変苦労をしていて、夜遅くまで働いて、
子供2人を頑張って育てていました。

本人も、その影響か、精神的にバランスを崩して、
中学生の頃は、かなり、やんちゃな時期もありました。
しかし、高校生になり、母親の苦労を見て何かを感じる所が
あったのか、勉学に目覚めて、有名大学に推薦入学で進み、
司法書士試験に受かる所まで頑張ったのです

その彼と、ある年末の会合の席で、
お酒を酌みかわす機会がありました。
お酒が進み、僕が、「高校生の頃から、
一念発起で頑張って、本当に偉いね」と話を振ると、
彼は、はにかみながら、昔の事などを、
ぽつりぽつりと話してくれました。

彼の父親はすでに、肝臓病で他界していましたが、
彼は、「母親や自分達兄弟に、
すぐ手を上げる父親が憎かった」と
話し始めました。
「家庭内の恥を話すようですが、
母は自分に期待をかけていて
リアルにお父さんのようにはなるなと、
何度も言っていました。
僕は、少しでも苦労している母の為になればと、
人より少し、頑張れました」
と僕に話しました。

しかし、その後、彼は驚く事を言ったのです・
「ずっと親父は憎くかったけど、今になって思うのは、
あいつが、もし、普通で、まともな親父だったら、
きっと僕は大学まで行っていないし、
近所で工場勤めでもしていたと思います。
今でも親父は好きじゃないけど、
今は結婚もして、今の幸せも、
半分はあの親父のお陰かもしれないです」と
彼は話したのです。

人間は、仕事や、普段の本人の言動や行動等を評価しますが、
人は、存在そのものに価値があるのかもしれないと、
僕はそれを聞いて思いました。
アル中の親父でも、反面教師となって、「その存在が」、
結果的に息子を立派に自立させていたのです。

世の中の人は、必ず誰かの子共であり、
誰かの先輩、後輩です。
人によっては、誰かの兄だったり、妹だったり、
夫だったり妻だったり
誰かの父親だったり、母親だったり、

自分のご先祖を、たった30代さかのぼっただけで、
その数は、軽く1億人を超えていて、
その1億人の内で、たったひとりが早死にしたり
結婚しなかっただけで、あなたはこの世にいません。

もし、生涯独身で子供を作らなくても、
世の中に不必要な人など一人も存在せず、
世の中のあらゆる人は、必ず、誰かと関係していて。
その存在自体に価値があり、全員が周りの人達に少なからず
影響を及ぼしあって生きています。
近所の、とっても怖い爺さんでも、孫にとっては大好きな、
優しいおじいちゃんかもしれません
人間関係の中で、人に与える事が、
結果的に悪影響か、良い影響か、
時間が経ってみないと全く分からないのです。

「明石家さんま」さんは「生きてるだけで、まる儲け」と
ご自分の娘に「いまる」と名付けたのは有名な話です。

僕達全員、別に頑張らなくても、存在しているだけで、
すでに、十分価値ある存在なのです。
誰かの厄介になっていようが、いまいが、
人は、ただ生きているだけで、
社会に影響し、貢献をしています。


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