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続・事業に資するPR〜「インボイス残業」の狙いと背景、又は“徳"PRの未来〜

こんにちは、すべての経済活動をデジタル化し、優しいデジタル社会を実現したい @kiyohero です。

本記事は、LayerXのPRの裏側をお伝えする「事業に資するPR」シリーズの最新稿です。noteを書こう書こうと思いつつ、この時期での投稿になってしまいました。このnoteでは、今年9月に発信し、X(Twitter)でもトレンド入りすることができた「インボイス残業」の狙いと背景についてお伝えします。

LayerXの「事業に資するPR」については、akkyy_kさんの以下の記事もぜひご覧ください。


「インボイス制度」とは

まず最初に、「インボイス制度」とは何かを説明します。

2023年10月1日から、適格請求書等保存方式―いわゆる「インボイス制度」がスタートしました。このnoteはPRの方向けなので詳細は割愛しますが、この制度に対応しないと、企業が支払う消費税額が増え、結果的に利益も減るので、企業の事業継続が難しくなる可能性があり得る制度です。

また「請求書」という側面から、一見経理の方々の業務が増えそうに思われますが、実際には請求書の発行・受取、領収書を受け取っての経費精算、法人カード利用時の領収書など、従業員にとっても大きく影響がある制度でもあります。

請求書、経費精算、法人カードなど、企業の支払いに関わる業務をなめらかにする「バクラク」では早くから上記の課題に着目し、2022年早々にはプロダクトとしての対応方針を公表したり、代表・福島(fukkyy)のトップメッセージを発信したりするなど、PRとしてもとても注力していました。

それほど大きな社会課題である一方で、社会的・メディアの報道的には「フリーランスの問題でしょ」「経理の人だけが大変になるんでしょ」といった空気がまん延していました。制度開始前には多少は社会の認識も変わってくるかなと思っていたのですが、2023年6月になっても上記の空気感はまったく変わる気配はありませんでした。

OKRとは“願い”

そんな状況ではありましたが、バクラクのインボイス制度対応機能は日々どんどん拡充され、文字通り「いつの間にか」インボイス対応ができるぐらい、経理の方だけでなく、従業員にとっても使いやすく、本当におすすめできるプロダクトになっていました。それなのに「インボイス制度=経理やフリーランスの問題」だと社会から認識され続けているのは、PRとして忸怩たる思いでした。

そこで2023年7-9月(当社ではQ3に当たります)のPRチームのOKRに、インボイス制度の認知拡大を設定することにしました。ここでのミソは、マーケ担当でもなんでもないのに「日経新聞全面広告の展開」と入れていることです。この1年間、PRとしてとれる手段は全部とってきた、それでも空気が変わらないのであれば(シリーズAのスタートアップなのでじゃぶじゃぶお金を使うわけではない前提で)マスマーケも検討していかなければいけないのでは。そのぐらいの危機感と想いを込めて設定しました。ちなみになぜ日経新聞全面広告なのかは、ここでは割愛します。

PJ-BOSAIとは「防災訓練」のようにインボイス制度に向き合ってほしい、と名付けた社内のプロジェクト名

結果として、制度開始直前の9月には「たいへんなルーチンを、ラクチンに」と題した全面広告を日経新聞に掲載しました。そのクリエイティブとして使われていたのが、「インボイス残業」です(発案は広告会社のコピーライターの方)。

「やりたくないです」を5エリアの方言で表現しました

並行して、前々から進めていた「インボイス制度対応による業務負担」の試算結果を、「インボイス残業」とタイトル付けしてプレスリリースすることを決めました。この時点で2023年9月中旬。10月に制度は開始してしまうので、社会の認識をひっくり返すには、ぎりぎりのタイミングです。実際、日々リリースする情報に対するメディアの方からの反応を見つつ、「まだ足りない」「これでも足りないのか」と、Be Animalに説明会やイベントなどを仕込んでいた時期です。

メディア掲載、Xトレンド入り

「インボイス残業」というわかりやすいワードと、リアルな業務増加時間が合わさって、このリリースは多くのメディアに掲載され、Xでもトレンド入りすることができました。


Xでもトレンド入り
LayerXのPR史上、最大のPVも達成しました

個人的にとても嬉しかったのが、前職の同僚(ほぼ同期)でもあり、リスナーとしてもファンである野村さんのPodcastで言及いただけたことです。会社を離れても、こうして元同僚に認識してもらえるのは嬉しいですね。IGPIの塩野さんも個人的にリスペクトしているので、一層嬉しかったシーンでした。

上記を実現できたのは、もちろんPRだけの力ではありません。次項では、この「インボイス残業」を実現できたチーム体制についてお伝えします。

LayerX・バクラクのPRチーム体制

上述で2022年からインボイス制度についてのPRを行ってきたことをお伝えしましたが、PRだけでなくマーケ、PdM、PMM、事業開発、採用など社内全体に「全員PR」が根付いているのがLayerXの特長です。この「インボイス残業」を実現できたのも、「全員PR」というカルチャーがあったからこそだと思っています。

2022年からチームを跨いでPR活動してきましたが、特に直近の「インボイス残業」を推進できた要因として、「GTM(Go To Makert)」と呼ばれるタスクフォースの存在が大きいと思います。

バクラクでは「インボイスGTM」として、バクラクのインボイス制度対応機能を市場に浸透させていく(=Go To Makert)というタスクフォースが結成されています。ドメインエキスパートの簗(@Q_finance_)、「インボイス残業」の試算だけでなく「企業のインボイス対応力向上プロジェクト」など各種施策をリードした稲田(@HirotoInada)を中心に、お客様と接し解像度が高い仲間がいたからこそ各種施策の精度が上がり、また説明責任も果たせたのだと思います。もちろん前述の通り広告会社のコピーライターさんがいなければ発案しきれなかったですし、各種リリースで壁打ちさせていただいているパートナーさん(カケルさんといいます。非常にスタートアップ向けでおすすめできるPRエージェンシーです)のおかげでアクションのスピードが上がったと思っています。

個人的な経験則として、「PRはPRだけで存在し得ない」と思っています。採用広報を強化するのであれば採用の現場の解像度が大事ですし、そもそものPR自体にも、経営とアラインした目線が必要です。

LayerXのPRは「事業に資するPR」をミッションとして掲げていますが、必ずしも数字(売上)以外の資すり方もあるのだとあらためて実感した事例でした。

「インボイス残業」への反応

最後に、記録的にXでの「インボイス残業」への反応をまとめていきます。

目指すべきは、「徳」PR

個人的なミッションとして、LayerXのPRでは、「脱・ひとりPR」「脱・個人技PR」を目指していきたいなと思ってやってきました。

その回答のひとつが「事業に資するPR」だなと思ってチームミッションにもしていたのですが、今回の体験も踏まえて、すぐには売上には反映しない、BSに資するような「徳」PRというのもひとつのあり方なのかなと思いました。


LayerXは、⻑期的な視点で社会の発展に寄与する存在であり続けたい。短期的な売上至上主義に走らず、仲間や社会から信頼を得られる行動を追求しよう。

https://layerx.co.jp/about/

LayerXでの経験を通して、「事業に資するPR」かつ「社会を変える“徳”PR」を実現していければいいなと思います。

本件に限らずスタートアップでのPR、特にひとりPRを脱してチームPRを実現する未来などに興味ある方はぜひお話しましょう〜〜。