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”お金の通り路は時代と共に変わる”邱永漢「起業の着眼点」を読んで② 

前回に引き続き、邱永漢さんの「起業の着眼点」を読んで気になった文章をピックアップします。

俗に「早起きは三文の得」という言葉がありますが、同じ仕事をやっても、人よりも早く起きて、人一倍働く人とそうでない人がおります。人よりもよく身体を動かし、人より汗水垂らせば、人より報いられると私の時代の人は親から教えられて育ちました。私にしても自分の周囲で働く人を見て、真面目でよく働く人を要領の良い人より重用したい気持ちになります。そう思うこと自体に間違いがあるとは思ってはおりませんが、どんなやり方が人に成功をもたらすかという観点に立って見ると、勤勉さが成功の要因の中で占めるパーセンテージは残念ながら、そんなにおおきいなものではありません。農業社会の場合は皆で同じことをするのですから、隣りよりまめに働けば、隣りより良い結果が得られましたが、工業社会にになると話は一変します。

同上

千差万別の人と顔をつきあわせて対応しているうちに、時代時代によってお金の儲かる仕事とそうでない仕事があって、お金の儲かる仕事を見つけた人は成功する確率が高いということにいやでも気がつかざるを得ませんでした。
汗水たらして一生懸命働くよりも、お金の儲かる確率の高い仕事を見つけることのほうがずっとうまくことが多いのです。努力するよりもお金の儲かる仕事を見つけることが優先するのです。

同上

お金儲けのうまい人とはお金の儲かる仕事を見つけることの上手い人のことです。一生懸命、働く人のことではありません。(中略)
いままでお金の通り路だったところをお金が通らなくなります。ことしも昨年と同じことが起こるだろうと、笊ををもって待っていた人のふところにお金はころがりこんできません。魚を釣る人だってどこに魚がたむろしているかカンを働かせて釣り場を変えなければ、魚に出会えません。
ところが、商売とか事業をやる人は毎日同じところに位置して、去年と同じことをくりかえす人が多いので、お金の通り路では無くなったことを棚に上げて、もしくはそのことには全く無頓着で、天候のせいにしたり、景気のせいににしたりします。
(中略)
お金の通り路が時代によって変わるのです。

同上

過去13年、海外のスタートアップと協業する仕事をしてきたからこそ、この主張の意味がよくわかります。そして、こんな意見を持っていて、部下や後輩を指導する日本企業のサラリーマンは本当に少ないのではないかと思います。自部門の売上や利益を前年より上げるために、全てのエネルギーを割き、金の通り路が変わってしまったことに何年も気づかず、不毛な努力を関係者にさせてしまう悲劇が今もなお、そこかしこで起こっているように思います。お金の通り路は変化し続けるんだという単純な事実に気づかないまま、儲からなくなった会社や部署に勤め上げ、消化不良のような状態のまま、定年を迎えてしまう会社員はたくさんいると思います。
だからこそ、僕は、会社員は、会社に過度に依存し、感情的に寄りかかるようなことは避け、この「金の通り路を見つける」スキルを磨く練習をすべきだと思います。これは、条件の良い部署に移るとか、会社の中で出世するといったスキルとは別種のものなです。閉じられた小さな村における幸福になるルールを見つけるのとは圧倒的に違い、世界に開かれ、日々変化する市場に自分を晒し続けて、金の通り路の変化に気づくスキルを身につけるべきだと思います。短期では、つまり、今勤務している会社では、そのスキルを身に付けてもその人を幸せしてくれないかもしれませんが、長期で見れば、自分自身で飯が食べられるようになり、かつ投資家としての道が開かれる可能性が出てくるのだと思います。成功している起業家はそのようなスキルを皆持っているように思います。




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