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「仕事の辞め方」(鈴木おさむ著)を読んで:気持ちよく会社を去る事について

「仕事の辞め方」(鈴木おさむ著:幻冬社)を読みました。
 僕も来年5月60歳、定年で会社を去ることにしているので気になりました。広告代理店に大学卒業以来勤務していますが、テレビ業界と仕事をしたことはなく、テレビを見ないで生きてきた人間なので、マスコミ、芸能界における著者の鈴木おさむさんの地位の凄さは知りませんが、この本を読み始めれば、すぐに彼の才能を理解できました。

いくつも、うなづける文章がありましたが、中でも印象深かったのは、「会社を辞めてうまくいってる人、いない人」の章です。

ここ数年で辞めていっている人をざっと見ていて、やはりうまくいっている人もいれば、いってない人もいます。その違いはなんでしょうか。自分なりに考えてみました。(中略)
一番大切ななのは、辞める会社をちゃんと辞めているかどうかです。(中略)
しこりを残して辞める場合は、ここ数年の、自分に対しての会社からの評価に納得していない場合が多いです。(中略)
だとしても、辞める時は、会社側にこれまで自分を雇ってくれたことへの十分な感謝の思いを伝える「フリ」にして、笑顔で送りだしてもらえばいいのに、最後はあまり出社しなかったり、挨拶もせずに辞めていったりする人が多いんです。

同上

僕は、ずいぶんと多くのビジネス書を読んできましたが、これまで、このような内容を著した本に出会ったことはありませんでした。ものすごくウェットなメッセージだと思いました。今時のビジネス書ならば、自分が成長するためには、環境と付き合う人を変えなければならない、であるならば、一刻も早く、今所属している組織から飛び出し、新しいフィールドに動き、挑戦をしなければならない、今、いるところへの不義理など、うじうじ気にしてたら、いつまでたっても転職できない、なんてメッセージがありがちですが、鈴木さんはその種の人ではない人です。
きっとその業界の頂点を上り詰めたのだと思いますが、それが人との出会いによって得られたもので、縁と運によるものだと思っていらっしゃるのだと思います。ご自身が50歳を過ぎているからこそ気づいていらっしゃるのだと思います。

そして、僕も、鈴木おさむさんのこの意見に100%合意です。広告代理店は、モノを作って売っているわけではないので、人の出会いが全てです。60歳に近くなると、自分がいかに会社の看板に支えられて、さまざまな人に出会い続け、ワクワクする経験をし続けることができたのかがわかってきます。「世話になった」という気持ちが強くなります。

でも、もう一人の僕が言います。結局のところ、転職しなくて、定年まで来てしまったからこそ、自分を肯定するために、、無理矢理そう思い込もうとしているのだ、と。過去、何回かあった、人生を大きく変えてしまうような転職話を受けていたら、今頃、全然違う人生観になっていたはずだ、と。
親不孝の息子が、散々両親に悪態をついて出ていった後、活躍して、親孝行をするために親元に戻ってくるようなドラマが会社と元社員の間に多々あるはずです。

親子の数だけユニークなドラマがあるように会社と社員の間柄にはさまざまなドラマがありますね。そんなことを考えさせられた一冊でした。



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