2.影響を受けた本(3)『地獄大図鑑』

『地獄大図鑑』木谷恭介

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物心つく前から。
両親は、とくに母は信心深いところがあって、家族四人で月に一度は石切神社へ参り、年に一度は大神神社へ、中山寺へ、清荒神へ参拝した。

そんなだから、後年、寺院と神社の区別がつかない人たちが存在すると知った時は少なからず驚愕したし、かといって両親から寺院と神社の違いを聞いた覚えもない。そのあたりは不明瞭なのだけれども、仏教と神道の異なりは幼いながらも弁えていたのだと思う。

この本について詳細まで記憶しているわけではない。
けれども、その視覚的衝撃と、システマチックで残酷な世界観は後の仏教への興味に深く太く関係するものと思われる。
地獄思想、ひいては六道輪廻思想が実は仏教独自のものではなく、仏教に先立つヴェーダ神話に基づくものであり、それが今もなお続くカースト制の裏付けで、その思想からの解脱を説いたのがゴータマ・シッダールタであることはかなり時間が経ってから知ることとなる。

当時は恐怖というより、鮮やかに彩られる地獄の景色に魅せられた。スプラッタでありゴアであり、残酷の美。それが生前の行いに依るものであること。「だからこそ」仏に帰依し、心も行いも清くしなさいということ。
般若心経を諳んじ、その意味するところを探り出したのもその頃だと思う。

今は般若心経や六道輪廻に疑問を呈する身ではあるけれども、その疑問を抱くことすらもこの本のビジュアルショックが端緒であることに変わりはない。


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