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【書評・感想】貨幣の「新」世界史 ハンムラビ法典からビットコインまで【お金の起源は債務?】


著者

カビール・セガール(著)、小坂 恵理(翻訳)

発売日

早川書房 / 2016年04月25日

書評

本書は貨幣の役割をあらゆる角度から考えることを目的とした書籍です。最初にお金を「価値のシンボル」と定義しており、本書に通底する考え方となっています。大きく三部構成となっており、「なぜ」お金が生まれ用いられてきたのか、「何」がお金として使われてきたのか、「どのように」お金が使われているのか、が述べられます。歴史学、人類学、行動経済学、政治や宗教、投資といった異なる学問を行き来する内容になっておりとても勉強になります。

お金の期限を論じる章では貨幣が初めて用いられたリディア王国の時代に遡りますが、利子付き融資の歴史はそれよりも古いといいます。私が最も興味深く感じたのは貨幣の成り立ちが従来言われているような物々交換の延長で始まったわけではなく、債務が起源となっているかもしれないということです。

債務こそお金の前身だったのだ。今日ではお金と債務を別個のものとして考える傾向が強いが、両者は共通の源から発生している。ドルが負債、すなわち連邦準備銀行の債務と見なされることからも、人類にとって貸し借りがいかに大切な行為だったのか理解できるだろう。

貨幣の「新」世界史 ハンムラビ法典からビットコインまで

お金の形態を述べる章では金属に裏付けられた貨幣、信用をベースにした紙幣やビットコインに代表される暗号通貨に至るまで時系列で網羅的な説明が続きます。歴史を通してお金の形態が変わっても、お金が価値のシンボルであることは変わらないことがわかります。最後は宗教や芸術を通して我々がどのようにお金に向き合っていけば良いのか、お金はあればあるほど良いのか、といったことを考えます。

お金とは何なのかを定義した上で、複数の学問分野を跨いで多角的な視点でお金について考える内容となっています。タイトルは貨幣の「新」世界史となっていますが、単なるお金の歴史に留まった内容では全くなく、立体的にお金の意味について考えることができる書籍です。

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