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『Jailer』 (主演:Rajinikanth、Vinayakan)

久しぶりにインド映画を見てきた。
というわけで、例のごとくネタバレも含めて感想をつらつらと書いていく。

主演は、タミル映画界のみならずインド映画界を代表する大ベテラン俳優ラジニカーント(Rajinikanth)。
御年72歳の彼は「Superstar」と称され、まさに神のような人気を誇る。

ここ1年半ほど、有名俳優が出ていたり話題になったりしているインド映画を中心に劇場で見てきたが、『Jailer』は過去最高熱量の歓声と指笛が飛び交った。
どうやら多数のベテラン有名俳優がカメオ出演しているらしく、最初から最後まで指笛歓声の嵐だった。
さながらオールスター感謝祭だ。

先日日本で公開された『RRR』がかなりのブームになっていると聞くが、それまでの日本におけるインド映画興行収入は1995年に公開された『ムトゥ 踊るマハラジャ』(日本では1998年公開)が最高だった。

『ムトゥ 踊るマハラジャ』のラジニカーント

そして、その主演こそがラジニカーントなのだ。
だから、ラジニカーントは日本人の間でも根強い人気があるようだ。

ところで、現在ラジニカーントをネットで検索すると以下のような写真が出てくる。

とても失礼な話なのだが、どうしても頭頂部に目がいってしまう。
この外見でどんなスーパースターになるんだ?と思っていたら、作品中のラジニカーントは以下の通り。

う~ん、渋かっこいい。
髪型で人の印象ってガラリと変わるんだなと実感した。
ファンの人から怒られてしまうが。


そろそろ内容の話を。
以下、ざっくりとしたあらすじ。

ムトゥ(ラジニカーント)は引退した警官で、チェンナイで家族と暮らしている。父と同じく警察官をしている息子のアルジュンは、大規模窃盗団を捜査している最中に失踪し、彼の失踪は自殺として処理される。アルジュンの死を悲しむムトゥは、窃盗団のリーダーであるバーマンに復讐することを決意し、仲間の手を借りながら彼の組織を壊滅させる。

言葉で書くと「息子の死に嘆き悲しむ父親が復讐を果たす話」なのだが、実際の映画を見るとそんな家族愛のストーリーではないような気がした。
ムトゥの表情が、ギャングの手下を殺めたり、アジトに乗り込んだりする状況を楽しんでいるような気がするのだ。
人を殺す正当な理由を与えられて喜ぶ狂ジジイって感じ。
特にインターミッション前のシーンは最高に狂っていた(誉め言葉)。

ムトゥは元看守で、その時に関係を結んだ元囚人たちの協力を得て復讐を果たす。
作中に、ムトゥが看守をしていた頃の回想シーンがある。
これが日本の映画だったら、「どんな犯罪者に対しても誠実に接する人情に篤い看守」のような描かれ方がされるだろうが、ムトゥは違う。

中庭に並べた囚人の間を歩きながら「俺は王だ」とご機嫌に歌ったり、口答えした囚人の耳をみんなの前で切り落としたりする傍若無人な振る舞いを見せる。
凶悪犯罪者よりも強い力と狂気をもってひれ伏せさせるタイプの看守だったのだ。
しかし、囚人の中でも彼が目を付けたギャングには贔屓するという、笑っちゃうくらいヤバい奴だ。

しかし、このシーンで客席は大いに沸いて「ムトゥ様かっこいい!最高!」といった雰囲気になる。
一体どうなってるんだ。

南インド映画を見ていると、暴力で解決するシーンが多く、根底には「力こそ正義」みたいな価値観があるような気がする。
そういった「男らしさ」をラジニカーントが好演していた。

この映画の前半はヴァイオレンスなシーンが多いのだが、後半はガラリと雰囲気が変わる。
由緒ある寺院の王冠を盗み出すという展開になり、さながら「王冠泥棒大作戦」といったドタバタコメディ映画の様相を呈し始めるのだ。
一つの作品にコメディ、シリアス、アクション、ロマンスなどが盛り込まれているのがインド映画の特徴だが、前後半で違う映画を見ているのではないかと思ってしまうほどのギャップが面白い。
なかなか飽きない演出や展開になっている。


8月10日に公開されてからまだ5日しか経っていないが、『Jailer』はすでに35億ルピー(約60億円)の興行収入を記録し、今年公開されたインド映画で3位にランクインしている。
1位がSRK主演の『Pathaan』で105億ルピー。
これにどこまで迫れるかといったところだろう。

ところでSRKといえば、次の主演作『Jawan』が早くも9月7日に公開される。
タミル映画界きっての演技派俳優 Vijay Sethupathi が共演するとのことで、こちらも非常に楽しみ。

『Jawan』

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