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『Viduthalai Part-1』 (主演:Soori , Vijay Sethupathi)

「ECR(チェンナイ南部の幹線道路)に新しい映画館ができた」という情報をゲットしたので、早速行ってきた。

Vijay Park Multiplex Mall

小さなショッピングモールのような感じだが、店舗部分はまだ未完成だった。
映画館だけ先行オープンした形だ。

さて、映画情報サイトでかなりの高評価を獲得していた作品を見てみることに。
タイトルは『Viduthalai Part-1』
Viduthalaiとは、タミル語で解放自由を意味する言葉らしい。

あらすじ
列車爆破テロを受けて、警察は人民軍のリーダーである "Vaathiyar" Perumalを逮捕するために「ゴーストハント作戦」を開始する。善良で真面目な警官であるクマレサンは、部隊のドライバーとして作戦に携わる。警察の作戦部隊のやり方は横暴で、人民軍が潜伏していると見られる集落の人々を拷問し、時には十分な証拠がない人でもそのまま殺してしまう。それを見て、クマレサンは警察のやり方に疑問を抱くようになる。

見終わった感想としては、とにかくキツい映画だった。

南インド映画には、暴力乱闘殺傷シーンが付きものである。
ぼくはもともと自分の血を見ることすら嫌なくらい軟弱な男なのだが、この1年間いろいろな南インド映画を見てきて、そういったシーンへの耐性が付きつつある。
それでも、この映画には思わず目を背けてしまうようなカットがいくつかあった。

実際のところ、『Viduthalai』は暴力や殺傷のシーンが多いわけではない。
作品中の死者の数でも、もっとたくさん人が死ぬ映画は他にもある。
しかし、この映画は拷問のシーンが多く、じわじわと人を痛みつけていく描写に心臓がキュッとなる。

暴力的なアクション映画でも、コミカルだったりハートフルだったりする場面が随所に挟み込まれていることが多い。
グロテスクな描写が多い作品でも、殺傷シーンは戦隊ヒーローの殺陣のような大げさな立ち回りが描かれていたりして、最終的に娯楽作品として楽しめるように落とし込まれていることが多い気がする。
大抵の映画は見終わった後に、「目を背けたくなるようなシーンはいくつかあったけど、なんやかんや楽しかったな」と感じることが多いが、この映画はそのような気配が一切ない。

クマレサンが村娘と恋仲になり、逢引きするシーンが頻繁にある。
しかし、これも心温まるシーンではなく、常にどこか不穏な空気が漂っている。
嵐の前の静けさのように、これからの2人にとんでもない不幸が待ち受けているのが直感できてしまうのだ。
2人が仲睦まじくするほどその悲惨さが引き立たされ、スクリーンの向こうの彼らに「もうやめて!これ以上、親密にならないで!」と思わず言いたくなってしまう。

作品の舞台が具体的にどこなのかは分からないが、森の中の集落と周辺の小さな町、廃墟のような部隊の駐屯地を中心に映画は展開していく。
どこに潜んでいるか分からない民間の武装組織 vs 警察隊という構図で、非常に緊迫した状況設定である。
しかし、例えば人食いトラが跋扈するジャングルだったり、殺人鬼が潜む絶海の孤島だったりするような超極限状態というわけではなく、あくまでも舞台は普通にありそうな田舎町であり、それが返って恐ろしい。
何の変哲もない田舎町で、市民を守るはずの警察があくまでもその建前は保持しつつも、市民に暴虐の限りを尽くすという場面が淡々と展開され、ちょっとボタンを掛け違えたかのような静かな狂気が漂っている。

見終わった後、劇場内はガンガンに冷房がかかっていたのだが、手のひらにじっとりと冷や汗をかいていた。
この映画には続編があるわけだが、圧倒的ハッピーエンドが確約されなければ続編は見に行かないかもしれない。

最後に、出演者の紹介。

Soori(左)とVijay Sethupathi(右)

善良な警察官クマレサンを演じたのはSoori
タミル映画にはコメディ俳優として有名な俳優が何人かいるが、彼はそんな俳優の一人。
しかしこの映画にはコメディシーンは一切なく、上層部の横暴に憤る善良な警官を熱演している。

人民軍のリーダー役を演じたのはVijay Sethupathi
タミル映画界を代表する演技派俳優で、ファンも多い。
謎多いキャラクターを演じたため、Part-1では出演機会が少なかった。
Part-2で主要キャラになる見通し。

クマレサンが恋に落ちた村娘を演じたのはBhavani Sre
あのA.R.Rahmanの姪で、女優だけでなく音楽家としても活動しているらしい。

Bhavani Sre


以上、作品の感想についてかなりネガティブな書き方をしてしまったが、言い方を変えれば、それだけ脚本や演出が真に迫るものだったということ。
いわゆる社会的な作品で、高い評価を獲得しているのも納得できる。
ただ、映画には明るい娯楽性を求める自分とは合わないなと思った。

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