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仏壇屋のお仕事紹介『寺院営業のやり方』

寺院営業の目的は「住職と仲良くなり、注文につなげる」というもの。

今回は「じゃあ仲良くなるには、どうしたらいいの?」という話です。

ポイントはいくつかあります。

・坊守さん(奥さん)と仲良くなる

・雑務をこなして、恩を着せる

・何回も訪問し、おしゃべりする

・檀家さんを大切にする

です。それぞれ紹介します。


坊守さん(奥さん)と仲良くなる

お寺を訪問したとき、まず対応してくれるのは奥さんです。仲の良い寺では住職が対応してくれますが、あまり付き合いのない寺では住職が出てくることはまれです。

「奥さんをクリアしないと住職にも会えない」ということです。逆に言えば、「奥さんと仲良くなれば、住職とも仲良くなれる」ということにもなります。

「財布を管理しているのは奥さん」

これは寺でも同じことが言えます。尻に敷かれている住職が結構多いです。檀家さんの家で説法をし、寺に戻ると奥さんにガミガミ言われる。ちょっとほっこりしますね。

はっきり言って、寺院営業というのは住職より奥さん相手に営業しているようなもんです。

ここで必要になってくるのは「話を聴く力」です。

女性というのは話好きですから、話を一生懸命聴いてくれる人が良いのです。

仏壇屋で働くと、「女性の話をひたすら聴く力」がみるみる上がっていきます。

そう考えるとペラペラ話すだけの営業マンは『寺院営業』では成功できないかと思います。特に若い人は出しゃばって話すのは止しましょう。確実に嫌われます。


雑務をこなして、恩を着せる

簡単に言うと「住職のパシリになる」ということです。

住職の頼みごとをタダでやって、恩を着せます。「あのとき、これをしてくれたから……」という風に注文に繋がることを期待して。

大得意先の住職なんかは「ちょっと病院連れていってくれ」という電話を2週間に1回くらいしてきます。

店長はその度「ワシらは便利屋か!」と、ブチ切れているのですが、ヒマな私はよく行ってました。

帰りに居酒屋に行ってご飯をご馳走してくれたりと(その金でタクシー使えや)、いい思いをしたこともあります。

この「雑務」は恩を着せるのが目的ですから、ほとんどタダでします。昔は何の抵抗もなくやっていたそうですが、最近は売上が悪いため、お局さん(経理)が非常にうるさいです。これはウチに限らず、他の仏壇屋も同じような状況でしょう。

「タダでしてほしい住職」と「なんとしても金を取りたいお局(経理)」との板挟みに合うことがしょっちゅうでした。

「タダでしてくれへんねんやったら、もういいっ!」とゴネて、それ以降まったく話をしてくれなくなった住職もいます。子供か。

ちなみに雑務は「念珠の修理」「仏壇の掃除」「仏壇の移動」「仏具の掃除」など、数えきれないほどあります。

その都度、「金をもらうか」「もらわないか」みたいな論争が沸き起こります。お局さんや社長の機嫌で決まるので、面倒くさかったです。


何回も訪問し、おしゃべりする

お寺の新規開拓は難しいです。

仏壇屋はどこも基本同じで、「ここなら安い」とか「ここならサービスが良い」とかもないので、贔屓の仏壇屋を変えるメリットがないからです。

違いを出すには「とにかく気に入ってもらう」しかない。

私個人としては目立つためにデッカイ金の花立や、「こんなもん誰が使うねん」という位牌ケースを持って行ってました。「変なヤツが来た」から、きっかけを作り、話につなげようという魂胆です。「変なヤツ」で終わることが大半でしたが。

奥さんと仲良くなり、住職とも仲良くなると、話も長くなります。

住職は昼からはヒマな人がほとんどですから、話し出すと2時間とかザラです。こっちも負けず劣らずヒマなので、付き合います。

行く度にゴッドファーザーみたいな食卓に座らされ、ティラミスとコーヒーをよばれながら、3時間くらい「身延山(日蓮宗の本山)での修行」をボケ気味の住職が語ってくる寺もありました。正直、辛かったです。

楽しいおしゃべり(聴く一方だけど)を通して、「コイツと話していると面白いな。たまに注文してやるか」みたいなのを狙うワケです。


檀家さんを大切にする

これも寺院営業のひとつで、大切なことです。

住職にだけいい顔をして檀家さんを雑に扱うと、結局そのことが住職に知れ渡り信頼をなくします。

すべてのお客さんはどこかの寺の檀家さんなので、どのお客さんも大切にしないといけません。

良い評判は住職にも届きます。

★★★

寺院営業は「売りにいく」ではなく「仲良くなる」のが一応の目的です。

一度売れたところで、次につながらなければ意味がありません。


寺院営業に必要なスキルは

・オチのない話に延々と付き合う忍耐力

・箸にも棒にもかからない話を楽しそうに聴く力

・相手を思いやる力

・諦めの悪さ

・ほんの少しの根性

・阪神タイガースの知識(関西に限る)

話下手で営業に向いていないんじゃないか……とか思ってる人も大丈夫。

「相手を思いやることが仕事」くらいに思っていれば、必要なスキルは勝手に身に尽きます。

普通の営業とはちょっと違う、寺院営業なのでした。

次回は、「仏壇販売」です。

#エッセイ #仏壇 #営業 #奥さん

働きたくないんです。