乾燥きくらげの伸びしろ、ナメとったらあきまへんで
きくらげ入りの肉ピーマン丼を作ろうと思って、人生で初めてきくらげというヤツを買ってみた。
きくらげ、が何なのか皆目見当つかんのだが、普段から新聞と本を読んでいるだけあって「クラゲの一種ではない」ということだけはわかっている。これが教養ってやつだ。
乾燥しているから、水で戻さないといけない。
袋に入っているのはちょっとだけだ。「なんでえ。こんなちょっとしか入ってないのか」と思い、一袋すべてボールの中の水に放り込んだ。
20分くらい放置しないといけないので、その間に肉とかピーマンとか用意。きくらげ達を見てみるとまだまだ萎んだままだ。
「やっぱり少ないよ、これじゃあ」
私はがっかりしながら風呂に入った。
40分後、再び台所に立つと、腰が抜けた。
「な、な、なにこれ?」
きくらげ達がバケモン並みに膨らんでいる。
萎んでいたころとは別人だ。ボールの中身はきくらげ達でいっぱい。気色が悪い。
「こんな大きくなるなんて……」
ずっと売れなかったバンドがスターダムにのし上がっていったときに言うセリフみたいなのを呟きながら、とりあえず、水からひとつだけ出してみる。
「デカい。デカすぎる。コイツがまだ10個くらいおる……地獄や」
細かく切っていく。ひとつだけで結構な量が取れる。というか丼に乗せる量としてはひとつだけで十分だった。きくらげはあくまでわき役、メインは肉とピーマンなんだから。
こんな出しゃばられても困る。わき役はわき役に徹してもらわないと。
かといって戻したきくらげを置いていても、次いつ使うねん、という話である。出しゃばる割には出番が少ない。なんとも使い勝手の悪いヤツだ。
すべて切り終わるとそこそこ大きな皿、山盛りになった。きくらげだけで。立派なきくらげ富豪である。
豪快にフライパンに放り込んだ。肉とピーマンが見えない。出演するや度々主役を食ってしまう香川照之並みの存在感。
暴れるきくらげ達をなだめつつ、しょうゆと塩コショウで味を調える。そして、ごはんに盛りつけて完成。肉ピーマン丼、いや、『山盛りきくらげ丼』だ。
写真は撮ってない。こんなくだらん記事を書くつもりは毛頭なかったからだ。
最初のきくらげをおそるおそる口に運んでみる。
「うん……」
きくらげのプリプリ感だけはイヤと言うほど感じられる、なんとも情けない丼だった。
皆さん、きくらげを使う時は伸びしろに注意して。予想以上にデカくなるから。アイツら。
働きたくないんです。