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好きな司馬遼太郎の小説 トップ3

私は司馬遼太郎が好きです。

「読んでみたいけど、作品が多くてなにから読んだらいいかわからない」という人も多いと思います。

そんな人に私の好きな司馬遼太郎の小説 トップ3を紹介します。

3位 坂の上の雲

日露戦争を描いた作品です。

この小説は司馬作品の代表作で有名ですが、めちゃくちゃ読みにくいです。

主人公は秋山好古、秋山真之、正岡子規、となっていますが、3巻ぐらいで(確か)正岡子規は死に、その後の日露戦争に突入してからは誰が主人公というワケでもなく、戦争の模様がずっと描かれています。

途中までは青春物語、みたいな感じなんですが、日露戦争突入からは「日露戦争説明書」みたいになり、セリフも少なく、描写と説明ばっかりになります。

ほのぼのヒューマンドラマからどぎつい戦争ドラマになります。司馬さんはこの作品をただの「青春小説」として終わらせたくなかったのでしょう。日露戦争前と戦争突入後はまったく別の作品といってもいいぐらいです。

だから戦争突入後はとっても読みにくいんです。お年寄りの家なんかに行くと、よく『坂の上の雲』が全巻並べてありますが、本当に全部読んだのでしょうか? と、疑いたくなるほど読みにくい。

それでも私が3位にしたのは、この「日露戦争」というのが、日本史、アジア史にとってどれだけ大きな意味のあった出来事なのか、ということがわかるからです。

初めて超大国を相手にした戦争。帝国主義国家を相手にした戦争です。旅順攻略戦、奉天会戦、日本海海戦、すべての戦いが紙一重の勝利でした。どれかひとつでも負けていれば、今頃北海道あたりはロシア領になっていたかもわかりません。

日本海海戦などは「東郷元帥により、バルチック艦隊をボッコボコにした」みたいな認識がありますが、この小説を読む限りそんなこともなく、やっぱり色々あって危ない戦いだったみたいです。

このような帝国主義国家に勝つため、坂本龍馬や勝海舟は海軍を強化しようとしたのです。幕末はすごく人気ですが、それ以降がまったく見向きもされないのが不思議で仕方ありません。ペリー来航から、太平洋戦争終結まですべて繋がっています。

日本を守るため、何十万人の日本人が死にました。今の日本があるのは彼らのおかげです。

この小説を読んだあとは日本の見方がガラっと変わること間違いありません。「日本死ね」とか口が裂けても言えなくなります。

そんな意味でも司馬作品としてではなく、日本の名著として読みにくくても、我慢して読むべき本であります。

2位 国盗り物語

司馬作品は戦国、幕末、その他、で時代別では大きく三部類されますが、戦国期では一番読みやすく、面白いです。

主人公は齋藤道三、織田信長、明智光秀、です。

「齋藤って誰やねん?」という話ですが、齋藤道三は信長の舅(しゅうと)です。信長の嫁、濃姫のオトンです。

この作品は元坊さんの齋藤道三が権謀術を発揮し、美濃の国を取るまでの話。
信長が天下統一あと一歩まで行く話。
光秀が信長を本能寺で殺すまでの話。

3パートに分かれています。個人的には齋藤、信長パートがスカッとしてて面白いです。

光秀パートはひたすら信長に「キンカン頭」と呼ばれ、いじめられ、「なんやねん信長、アイツいつかドツキ回したる」みたいな感じで結構ジメジメしているので、スカッとしたところが少なく地味です。でも面白いです。

ベストシーンは齋藤道三が「方便品自我偈(日蓮系の宗徒が読む)」を読みながら、ヤリで相手を突き刺していくシーンです。私は実家が創価学会で、子供のときは「自我偈」を毎日読んでましたから、ある意味衝撃的でした。

信長は沢山の国を取りますが、齋藤は美濃だけです。でも、成り上がっていく様子がとっても気持ちいいです。人間としてはクズですが、このような人でないと下剋上は達成できないのでしょう。

現代でも同じようなことは言えそうですね。

たったの三巻で三人の生涯を描いているため、スピード感があり、面白さは他の歴史小説をはるかにしのぎます。戦国時代を描いた小説でこれ以上、面白いものを私は読んだことがありません。

1位 竜馬がゆく

「やっぱりね……」という声が聞こえてきそうです。

私の人生を変えてくれた本です。司馬作品の中、どころか全小説で一番好きです。これ読んでから、読書が好きでたまらなくなりました。

この作品を語り出すとキリがないのですが、一番の見どころはやっぱり「龍馬の行動力」でしょう。

とにかく動き回ります。そしてなにがあってもへこたれません。まわりの眼を気にしません。皆が剣術を鍛えて、「攘夷だ!」とか言ってる間も、船に夢中になり、学校に通ったりします。わからんことを「わからん」と言います。プライドとかありません。日本の将来のために死ぬまで突っ走ります。

そんな男の中の男、と言っていいのか、男らしくないところもあるんですが、それがまた人間らしくて良いのです。

「理想のパーソナリティを挙げてください」と社会人にアンケートを取り、結果を総合して、ひとりの人物を作り上げたとしたら、まさにこの『竜馬がゆく』の龍馬が出来上がりそうです。それくらいこの小説の龍馬はすごいです。

これが発売されて、龍馬は有名になったそうです。それまでは無名の存在でした。

戦中あたりに発売された子母澤寛の『勝海舟』でも、龍馬はまったく特別視されていません。「勝海舟のところに集まってくる若い奴のひとり」くらいの認識です。

『竜馬がゆく』が発売される前は世間の龍馬に対する評価もこのようなものだったのでしょう。その証拠にマジメな日本史の本など見ていると、「坂本龍馬」なんか2行くらいしか出てきません。

そのため、最近は歴史の教科書から消されそうになってましたが、そんなことをしてはあきません。

たしかに歴史に残るようなことはしていない。でも、司馬遼太郎という人が出した『竜馬がゆく』での龍馬は日本中を元気にした。

そういう点では歴史に残るべき人です。理想とすべき人物です。

小説自体もとっても読みやすい。特に一巻は江戸に修行に行き、たしか桂小五郎と一騎打ちするところで終わったと思いますが、このスピード感、よみやすさは格別です。

「幕末の知識がまったくないけど大丈夫?」

大丈夫です。私は読む前歴史にまったく興味がなく「幕末? 卑弥呼とか出てくる時代?」レベルだったので、問題ありません。

というか、知らないまま読むことをオススメします。

というのも日本史におけるビッグネームが次々出てくるからです。

西郷隆盛、桂小五郎、勝海舟、新撰組、近藤勇、土方歳三、沖田総司、徳川慶喜、人斬り以蔵、高杉晋作……まだまだ出てきます。

「あっこの人、聞いたことある!」の連続です。

しかも全員が「この人たち創作じゃないの?」と思うくらいキャラが濃いです。誰を主役にしてもそれなりの作品が出来てしまう、まさに主役級の人物が次から次へと出てきます。

幕末というのはサッカーで言うとレアル・マドリードです。登場人物すべてがビッグネーム。まさに銀河系軍団。すごい時代です。

『竜馬がゆく』では、そんな人たちが「日本人の理想像」である龍馬を中心に大暴れするんですから、面白くないワケがありません。

この小説を読んでから、フリーターだった私は「あかん! 就活しよ!」となりました。そのあと無事、仏壇屋に就職し、大いに苦しむことになるのですが。

とにかく、自分の考え、行動、日本の見方、すべてを根本から変えてくれるものすごい本です。読まないと損です。これは間違いなく言えます。


ということで、好きな司馬遼太郎の小説 トップ3は”断トツ”で『竜馬がゆく』でした。

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働きたくないんです。