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忍者手拭いを作って考える、染色という物づくり

「忍手拭い(三尺手拭い)」とは

忍者が忍務に出かけるとき、必須とされる6つのアイテム「忍び六具」に三尺手拭いというものがあります。

これは長さ3尺(約90cm)の手拭いで、手を拭く・顔を隠す・包帯・ロープ・しごき・水を濾過するなど様々な用途に使う忍具です。

手拭いは蘇芳で染められており、色は赤茶。染めが新しいものなら殺菌作用があり水を濾過して飲むことが可能といわれています。

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「蘇芳染め」とは

蘇芳はインド・マレー原産のマメ科の植物です。蘇芳染めは、この植物の持つ赤色色素を利用した草木染めで、媒染剤(染めの定着を強くする薬液)の種類によって赤から紫まで色が変化します。

日本には飛鳥時代に伝来し、日本画の絵具としても用いられています。

漢方としても蘇芳は扱われ、蘇木(そぼく)という名前で止血・鎮痛・通経などの効果があります。

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染色は理科実験や料理に近い気持ち

染めの大まかな手順は、①ディスポンで布への染料定着をしやすくする下準備。②蘇芳を煮て染色液を作る。③染色液に布をつけて染める。④媒染液に布をつけて染料を定着させる。

工程の中の大きなポイントは2つで、1つはディスポン・蘇芳・媒染剤という3つの薬品を用いて、染める布の量に応じて薬品と水の量を調整し薬液(染色液)を作ること。もう1つは、この薬液に布をつける時間を決めることです。

染めをやってみた感覚は、理科の実験か料理を作るような感じに近いと思いました。調味料を上手く調合し、煮詰めて味を染み込ませるイメージです。ただ、薬品ってところが理科実験みたいで面白かったです。

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薬液用意に忍者の試行錯誤を感じる

染めは、各種薬品と水を混ぜる割合、布をつける時間、染めを行う季節によって色合いに変化が発生します。

狙った色を出すために何の薬品を使うか?どう調合するか?どれだけ布をつけておくかなどは染色に限らず、忍者が忍務に応じて行なっていた火器の製造や薬の調合にもつながるものがあると思います。

染色は火薬や薬の調合に比べれば簡単なものですが、忍者の薬品に対する試行錯誤を実感できます。

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準備が大事な染色という物作り

木材を削ってスプーンを作る。革を縫って小銭入れを作る。色んな物作りの技法がありますが、その中でも染色は独特な体験でした。

物作りにおいて、染色は単体で行うことは少なく、最後の仕上げの工程だと思います。布や革を利用して作った衣料や道具に、最後に化粧をしてあげるような工程です。

木工のように徐々に完成に近づき結果が分かるものではなく、準備をして取り掛かるとすぐ布に結果が現れる瞬間的な物づくり。事前準備をどれだけ念入りにやるかが大事な作業だと感じました。

今回の蘇芳染めは、赤茶に染まる予定が青紫になってしまったので、事前の準備と作業想定が甘かったなと思いつつ、初めてだったのでしょうがないという結果でした。次回は狙った色を出せるように計画を練って取り掛かろうと思います。

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