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フィルムカメラで歩いたミラレ金屋町

 金屋町は高岡銅器の鋳物の街として栄えた、石畳が残る古い町並みで、毎年9月にここでミラレ金屋町というイベントが開催される。大学生が中心となって企画をしているようで、自治体がやるイベントのような押しの強さがあまり無くて雰囲気が良いので、ついつい通ってしまう。金屋町のあたりは古い町中で駐車場があまりないが、高岡駅前は駐車料金がべらぼうに安いので、こちらに停めて無料のシャトルバスで行くのが正解。去年はフィルムとデジタル両方を持っていったが、今年は面倒になりデジカメを置いてきてしまったので、フィルム写真多めでいきますよ。

MIRAREこれくしょんを撮ろう

 このイベントのメインは、着物のファッションショー。これに出る予定の女性を撮影させていただく。世界中の国をテーマにしていて、この方はオランダ(違ったかな)。ちょっと他では見られない個性的な着こなしが見られるのが面白い。

OLYMPUS XA ZUIKO35mmF2.8

 ファッションショーは屋内の部と屋外の部があり、どちらにしてもフィルムカメラにとっては難易度が高い。屋内は古民家の戸を外してお座敷を歩くのだが、今日は外での撮影を想定して、アクロスを減感してセットしてきてしまったのでシャッタースピードが遅い。着物とはいえモデルさんは結構動きがあるので、止まった瞬間を狙うか、動きを出すか。そしてお座敷の奥と手前では結構明暗差がある。AEを使えばいいのだが、画面内に照明が入ると露出が引っ張られるだろう。デジタルなら顔認識で明るさもピントも面倒見てくれるのにな。昔の俺たちはずいぶん難しいカメラで写真を撮っていたんだなぁ。

OLYMPUS OM-4Ti ZUIKO90mmF2 MACRO

一仕事終えたところで

 イベントも一段落といった感じのお二人に声をかけてみた。キッチンカーのラッシーを飲みながら歩いていたので、それを手にしたまま撮影するのもいいと思ったが、ご本人達は無い方がいいと思ったようなので、かばんの上にスマホとラッシーを置いてから撮影。確かに僕らはついつい遊びを入れたくなってしまうが、撮られる方はオーソドックスに撮ってほしいよね。

OLYMPUS OM-4Ti ZUIKO90mmF2 MACRO


OLYMPUS OM-4Ti ZUIKO90mmF2 MACRO

お揃いで入った涙のメイクがかわいらしいお二人。かなり怪しいおっちゃんの申し出にも笑顔で応じてくれてありがとう。

忙しいのにすみません

 別のお二人にも撮影をお願いしてみたが、こちらも快く応じていただいた。日なたで作業をしておられたので、日陰のベンチに座ってもらい落ち着いた雰囲気を撮影。自然な笑顔がとても良いね。

OLYMPUS OM-4Ti ZUIKO90mmF2 MACRO


OLYMPUS OM-4Ti ZUIKO90mmF2 MACRO

 数枚シャッターを切ると、「スマホ、スマホ!」とおじさんが叫ぶ。落とし物でもしたかと思って振り向くと、「あんたのソレ、フィルムのヤツやろ。あんたは写真撮れてそれでいいけど、この子達は写真残らんやろ。この子達のスマホで撮ってやらにゃ。ジョーシキ、ジョーシキ!」まぁこの方なりの親切なんだろうけど、ちょっと戸惑った笑顔のお二人。荷物の中にあるであろうスマホをわざわざ取りに行って、見ず知らずのおっさんにシャッターを押してもらわなくても、撮ってくれる友達がいるだろうし、セルフィーもお手のもんだと思うけどな。それを常識とか言われても・・・。お忙しいお二人に迷惑を掛けそうな気配だったので(自分の事は棚に上げるが)、「おじさん、カメラは何をお使いですか?あ、それ一番画質がいいヤツですよね・・・。」と、こちらに注意を向けさせている間に、お二人は持ち場の方へ。やれやれ。

 最後は石畳のランウェイを歩く屋外のファッションショー。午後の強い日差しで明暗差は大きく、屋内よりも歩くスピードが速いのでこれはこれで撮影が難しい。対面では件の常識おじさんがカメラを構えている。さて、ショーのフィナーレで、モデル全員が石畳に並び、観客に向かってご挨拶。しかし、おじさんの側は背中側になっている。すると、おじさんはロープをくぐりモデルさんの間を抜けてこっちに来るではないか。まずは自分の常識から見直してもらいたいものである。結局おじさんがこっちに来たとたん、モデルさんは回れ右をして反対側のお客さんへご挨拶となったのだが。

祭りのあと

 ショーが終わって人通りが減ってくると、徐々に普段通りの金屋町に戻ってくる。さまのこと呼ばれる伝統的な格子と石畳の表通りはとても美しく、車なんかも裏に停めてあったりして、住民の方も景観にかなり気を使っていることが伺える。でも町工場が点在する裏の通りも個人的には好きなんだな。今日の富山も9月下旬とは思えない強烈な日差しが降り注いていたが、それでもちょっと日陰に入ると風の心地よさを辛うじて感じられそうなそんな日だった。この裏通りを歩くと多くの家で風鈴を下げてあり、その音で気温が0.6℃くらい下がる。この地の風鈴は真鍮製で、倍音の多いウォームトーンが夏の終わりによく似合う。

OLYMPUS XA ZUIKO35mmF2.8

 このカットでXAのケントメアは終了。もう帰ろう、もう帰ってしまおう。現像しながら今宵の酒に酔いしれよう。

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