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使っているカメラについて語ってしまおう(OLYMPUS XA)

 コレクターではないので、それ程貴重なカメラやレンズは持ち合わせているわけではないが、30年以上も写真をやっていると、それなりにいろいろなカメラを使ってきた。多機能な今のデジタルカメラなら1台とレンズが数本あれば何でも撮れるだろう。だが、フィルムの場合はカラーとモノクロ、高感度と低感度など、何台かのカメラを使い分けたい時がある。旅スナップが多い僕の場合、全部一眼レフだと荷物が重いので、コンパクトカメラを加えることが多かった。

XA2みたいなカメラが欲しかった

 大学写真部の友人はXA2というカメラを使っていて、その小ささとケース不要の仕組みに「こんなカメラがあるといいな」と思った。ただピントが目測というのはちょっと頼りないなと思った。昔我が家にはゾーンフォーカスのフラッシュフジカとレンジファインダーのキヤノンデートルクスがあり、デートルクスは動作が不安定だったものの、写り自体は良かったという印象があった。調べてみるとシリーズにXAという機種があり、そちらはレンジファインダーだと分かりこれしかないなと思った。時代的にはビッグミニやエスピオといったオートフォーカスコンパクトが普通に売っていて、同じような値段で新品が買えるというのに、わざわざ東京の中古屋を回り手に入れた。使い込まれた安いやつだったので、毛糸を買ってきてモルトを直したが、動作に問題はなかった。

XAはスナップ最強カメラ

 スナップを撮る僕がカメラに求めるものは、小さいこと、静かなこと、すぐ撮れること、操作が気持ちいいこと、それが一番大事である。さらに欲を言えば、絞りが選べること、写りに味わいがあること、壊れにくいこと。デジタル時代になってカメラは小さくなると期待していたが、どんどん太っていってるし、タッチパネルなんて絶対嫌だ。結局このカメラは僕にとってすべてが理想的で、これを超えるカメラは今になっても出てこない。

OLYMPUS XA ZUIKO35mmF2.8

 絞りをぐっと絞って流し撮り。こんな芸当ができるコンパクトカメラはなかなか無い。

米谷さんありがとう

 このカメラが登場したのは1979年。すでにオートフォーカスの技術はあったので、開発段階でAF搭載は当然検討されたと思う。ここからは想像の範囲だが、多少大きくなってもオートフォーカスを載せた方が売れるんじゃないかとか、目測にして安くした方が売れるんじゃないかとかの意見を押しのけて、伝説の開発者米谷さんは自分が欲しいカメラを作ったのではないだろうか。そして、これがそれほど売れなくても、次のカメラで稼げればいいやという計算があったと思えてならないのである。

 撮像レンズとファインダーがきちんと中央にあるというのも、かなりのこだわりを感じる。構えた時に想像したイメージとのズレがほとんどない。レンジファインダーは左にずれているのが当たり前だし、その方が基線長を稼げる。ライカでさえそれを許しているというのに。そして、レンズバリアを閉じた時に、距離計側の小さな窓も連動して閉じる芸の細かさを見ると、感心を通り越して呆れるほどである。

OLYMPUS XA ZUIKO35mmF2.8

 昭和感あふれる写真であるが、平成6年頃の中野駅前ではまだこんな風景が広がっていたんだなぁ。

XAのレンズに対する評価

 まず35mmという画角が丁度いい。50mmだと入らないことがあるし、28mmだとパースが強過ぎることがある。F2.8というのもカメラのサイズを考えると驚きの明るさだし、人を撮る時のボケが丁度いい。トロトロにボケたりはしないが、人を撮った時にどんな所で撮ったかがわかる程度の程よいボケが気に入っている。ボケ味も自然で嫌なボケは出ない。

OLYMPUS XA ZUIKO35mmF2.8

 ただ、このレンズは巷の評価がちょっと低くてXA2の方がよく写ると言われたりしている。でもそれはこのカメラの使いこなしが結構難しい事が原因だと思っている。せっかく開放F2.8のレンズを積んでいるのだからと、ついつい開放を使いがちだが、XAはレンジファインダーではあるものの、基線長が短く二重像も薄いのでピント合わせは結構難しい。だから微妙にピントを外してしまう事が多いのだと思う。そしてストロークがほぼ無いシャッター。他のカメラに慣れている人はシャッターを切る前に写るような感覚があるだろう。これと本体の小ささによっていい加減に撮ると手振れを誘発する。だからカメラを数回使ってレビューなんかを書いてしまう人はそういう印象を持つのだろう。確かに色のりはあっさり目で周辺光量が大きく落ちるので中心の被写体が白っぽく締まらない感じの写真になってしまう事があるが、多少周りが暗くなっても、中央部に明るさを合わせれば印象的な写りになるだろう。そしてこの周辺光量落ちは絞ってもあまり改善されないので、それを楽しめない方はこのカメラは向いてない。

 もう一つの特徴として、このレンズは逆光にめっぽう強い。画面内に太陽を入れてもゴーストが出ない。オールドレンズはフレアやゴーストも味の一つだが、その方面はあまり期待できない。

OLYMPUS XA ZUIKO35mmF2.8

 日本海の夕陽をコダクロームで撮るなんていう、信じられないくらいのゼイタクが許された時代の写真。

フィルムが高ければ入れなければいい

 よくありがちな安易な質問で、「無人島に一つだけ持っていくとすれば・・・」なんていうものがあるが、僕はXAを持っていきたいな(バックパッカーというギターと迷うところだが)。無人島に現像所は無いぞと言われそうだが、それでいいのである。
 このカメラの一番の魅力はいじる所がたくさんある事である。絞りレバー、フォーカスレバー、露出補正レバー、感度ダイヤル。だいたい男子はこういうものをチマチマと操作するのが好きなのである。そして、フラッシュは合体式という、昔ロボットアニメに夢中になった方々にはたまらない仕様となっている。完全にオトナのおもちゃだ。電源と音量のボタンしかないスマホなんて、全然愛せないもんなぁ(きれいに写るけど)。月夜の浜でお湯割りを飲みながら、ダイヤルをチリチリと回しつつ通りがかる船を待とうじゃないか。え?ウイスキーもない?そうかぁ・・・。

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