きわプロジェクト
きわダイアローグ07 埋立地のビオトープを歩く〈北九州市響灘ビオトープ〉4/4
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きわダイアローグ07 埋立地のビオトープを歩く〈北九州市響灘ビオトープ〉4/4

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4. 生き物は希望を持って移動する

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三上:この響灘ビオトープは、NPOと一般企業2社の連合で共同事業体という形で、市から指定管理者として委託を受けています。NPO法人北九州ビオトープネットワーク研究会というところが、中心企業というか、代表となります。

山本:言うなれば、わたしたちは会社員なので、別に公務員とかではないんです。

向井:ここはどのくらいのスタッフで運営されているのですか。

山本:職員、パート含めて8名です。お客さんの対応や41ヘクタールある園内の維持管理もその8名で行なっています。

向井:山本さんはどうして響灘ビオトープで仕事をされようと思ったのですか。

山本:私は7、8年前の、ここがオープンした年と同じ時期に高校1年生になったのですが、そのとときから、部活動として毎月1回、ここの湿地の生物調査に来ていたんです。当時はゲンゴロウやタガメなどの仲間の昆虫の調査をしていました。高3くらいになったとき、北九州市内の緑地や川専門の環境施設、もちろんこの響灘ビオトープの指定管理者を、高卒で目指したのですが、当時はまだ難しかったんです。そこで、猶予期間として、動物園や水族館業界について学ぶ専門学校に入学しました。私には、環境教育をしたいという生涯の目標があったので、専門学校を卒業したあとは青少年教育施設で働きました。青少年教育は健全な青少年の育成に重きを置いており、環境教育がそれほど重要視されているわけではなかった。だから、環境教育を先進的にやっており、そこに着眼した施設に勤めたいと思い、ここに転職してきたんです。

コガタノゲンゴロウ(絶滅危惧Ⅱ類)
園内にはそのほか、シマケシゲンゴロウ、
ホソマルチビゲンゴロウなども生息している。
撮影:岩本光徳、提供:北九州市響灘ビオトープ

向井:お二人とも自分の今までの生き方や興味のなかで、ここに戻っていらしたのですね。先ほど三上さんが「折り合い」という言葉を使われましたよね。実は、きわプロジェクトのなかで「折り合いをつける」とか「折り合いとは何なのか」といったことも、キーワードとしているんです。今日ではインターネットで映像を見られたり、いろんなことができたりするので、物事を白黒で判断したり、いわゆる説明的に描写することって増えています。きちんと科学的な情報や根拠を持った上で、身体的に物事を理解することがすごく難しくなっているのかなと思うんです。文字や描写的説明で理解したつもりになったり、なんとなく言葉尻の雰囲気で感覚的に判断したり極端だなと感じます。目に見えないコロナウイルスについても、有識者の方たちに、白か黒かと迫っている姿を見ますけれど、それだとうまくいかないのかなと。お話を伺うと、「折り合い」とおっしゃっていることもあって、やはり肌で感じて、実際を理解することを、すごく大切にされているんだなと思いました。

三上:ありがとうございます。おっしゃるとおりです。

向井:これからの響灘ビオトープの課題として、考えられていることなどありますでしょうか。

三上:オープンした当初、「ここには貴重な生き物という前提でできているから、あまり触らない」という前提がありました。「余計なことをして、大切な生き物がいなくなったら元も子もないじゃないか」という意見が強かったんです。できる限り手はかけないというのが、非常に呪縛のようになっていました。ただ、草刈りをしないと草原は維持できませんし、かいぼりをしないと池は埋まってしまう。「これはしなきゃいけないですよ」と現場の声として伝えて、以前はできなかったことも、少しずつさせてもらえるようになってきています。ここからはわたし個人の意見になりますが、せっかく原生的な自然ではなく、海を埋め立てた場所なのですから、いろんな実験をするべきだと思うんです。ビオトープという名前で、枠で囲って、管理、監視する目がある場所ですから、よそで絶滅しかかって行き場がなくなっている生き物などを保護、増殖する場所にするべきなのではないでしょうか。ここ1、2年でようやく、ここにいる生き物だったら、別の場所がなくなってしまう際にはこのなかに持ってきてもよいということになってきました。うちの役目はそういうところにもあるのではないかと思っています。ベッコウトンボももともと市内に安定して発生していた池から、飛んできたのが最初じゃないかな。

向井:自然災害によって、自然がリセットされる機会があったとおっしゃっていましたが、実際に台風のあと、急に生息地が変わったりするものなんですか。

山本:自然災害でリセットして、別の良い環境ができる場合もありますが、逆に、開発が進んで、棲める場所が狭い範囲しか残っていない生き物の場合、台風や津波など自然災害によってなくなってしまうという事例もあります。

向井:人間にとっては自然災害は困ることが多いものですけれど、バランスをとりながら開発しないと、生き物の環境を良くするはずの自然災害が、もっと生き物を追い詰めてしまう。ほどほどのバランスで自然災害を受け入れることに、やっぱり意味があるんですね。

山本:意味はあると思いますね。

三上:僕は、自然災害が起きただけで全滅してしまうような1箇所に閉じ込めてしまったことが良くないんだと思います。それは、ほとんど人間の活動によることで、昔はいろんな場所に棲めたわけです。こっちがダメになっても、こっちで生きられる。ベッコウトンボなんて、まさにそういう生活をしていた生き物なんですね。そうやっていろんな場所で暮らしていたのに、棲める場所が孤立してしまっている。そうなると逆にね、たった一つのその場所を守らなきゃいけないわけです。

山本:例えば、ヤゴだったら水中でしか生きられないので、災害で埋まってしまった場合、人が救ってあげないかぎりは死んでいってしまう。孤立化してしまったものに対しては、必ず人の手をかけないと守れないと思いますね。

向井:生き物にとって、飛んでいったりして移動できることも重要なことなんですか。

山本:重要なことです。生き物も、ある程度のところまでは飛んでいけるんですね。トンボだったら数~数十キロ、ゲンゴロウも2キロくらい飛んでいけるのですが、それ以上1回で飛ぶのは難しいんです。飛んでみたところで、自分たちが今棲んでいるところと同じような家が、必ずしもあるわけではない。結構な体力を消耗しながら、希望を持って移動をしていますので、もしそういう場所がなければ、帰ってこれません。片道切符みたいなものです。いろいろなところにビオトープをつくるのは、中継ルートが全くないからという理由もありますね。

向井:定期的にいらっしゃる方たちの写真を展示されるなど、PRもいろいろとされていますが、今後、どういうふうに外と活動をされるご予定ですか。

三上:特に自然環境関連はそうなのですが、ボランティアで手伝ってくださる方も高齢化しています。若い方でボランティアをしようという方が、昔に比べるとずっと少なくなったように感じます。なんとかして、若い方にもつながるようなPRもできたらいいなと思っています。広く発信して、自然に特別詳しかったり、特別好きじゃなかったりしても関わっていけるんだというのは示せていけたらいいなと。

向井:日本の場合、専門が違うとつながりが断絶していることが多いですよね。

三上:先ほども言いましたように、この響灘ビオトープでは、次世代エネルギーとエコタウン、リサイクル、工業と自然環境、絶滅危惧種が共存しています。共存、共生はもう実現していますよ、ここに来たらわかりますっていうのをアピールして行きたいですね。

向井:実験をしたいとおっしゃっていましたけれど、ここは考えさせられる場所だとすごく思いますね。実際、この地域自体がおそらく、いいことも悪いことも含め社会実験をしている場所なんですね。

響灘ビオトープと周辺の
バイオマス施設や風力発電施設

撮影:向井知子


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きわプロジェクトでは、「都市像と自然」の関係を思索・知覚する方策を模索しています。 公開トークで登壇予定のゲスト、プロジェクトメンバーとの対話を継続的に進めており、この「ダイアローグ」では、その内容を公開していきます。 HP: http://kiwa-project.org/