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書道のネアリカ

【キャベツシリーズネアリカ9枚目】

『篆書(てんしょ)のネアリカ』



まず、ネアリカ(Nierika)とは。

簡単に説明すると、ネアリカはメキシコの先住民「ウイチョル族」の伝統的なアートである。蜜蝋を塗った板に、毛糸を並べて貼り付けていく。

ウイチョル族のシャーマンは、巡礼に出て、幻覚剤であるサボテンを取りに行く。断食をして空っぽのおなかに、幻覚サボテンを摂り入れる。(ものすごく不味いらしい)


それによって見えたビジョン(幻覚)を毛糸で表現していく。だからこれは、宗教儀式であり、精霊や神からのメッセージのようなものだ。

本来のネアリカはこういうもので、「この世とあの世をむすぶトンネル」とも言われているらしい。だからネアリカを作るときは、できるだけ計画せずに、うまく作ろうとか、やり直そうとか、そういう自分の自我を捨てて、作ると良い。




『篆書のネアリカ』

ネアリカで書道をしよう!ふとそう思った。書道の字体もいろいろとあるようだ。楷書、行書、草書、隷書、篆書など。

篆書体は、秦の時代に公式書体となった。日本でも、判子やパスポートの表紙部分の「日本国旅券」の文字などに使われている。 篆書の本を図書館で借りた。とても古い本で、ワクワクした。四角くて、ちょっと絵っぽくてかわいい。篆書体で書くことに決めた。


このネアリカは、AKIRA(杉山明)作詞作曲の『Sailing on』の歌詞の一部だ。(写真右の人)

この船は走る棺桶 
魂を運ぶ肉体
手放すな 神にすがるな
己を信じろ
君が君の船の舵を取れ
君が世界を発見するんだ


それを漢字に直す……には、中国語を使わなければいけない。まずはGoogle 翻訳。でも、Google翻訳を100%信じることはできない。

中国人の友だちとは連絡が取れなかったので、台湾人の友だちと、中学留学経験のある母に聞いて、なんとか形にしてみた。中国人が読んで自然な中国語かどうかは、定かではないが(笑)

よし、ここでようやく篆書辞典を開く。が……これは日本語。次は中国の漢字を日本の漢字にしなければならない。

这艘船是一个正在运行的棺材
运灵魂的身体
不要放开 不要乞灵于神佛
相信你自己
你划你的船
你发现世界划船
(中国語なので日本にない漢字は省略)

こんな感じでできた。  

感嘆詞の選び方が難しい。



最初はもっとたくさんの漢字を書いたが、さすがに細かすぎて断念し、字数を減らした。まずは、漢字を白い毛糸で貼っていく。そのあと、黒で埋めていくという方法をとった。

ここで、問題があった!微妙な字のズレを、全体を見ながら、少しずつ修正していく。毛糸を貼ることで、細かすぎて潰れて読めなくなってまう字を剥がし、字を大きく直していく。


1つの字を直すと、なんとどんどん全体のバランスが崩れていく。あっち向いたり、こっち向いたり。大きさにもバラツキが生じてくる。

つまり、出来の悪いヤツを排除して、出来の良いヤツを入れても、全体としては良くならないということ。これは、人間界の組織とまったく一緒ではないか!!!


もう1枚最初から作れ、と脳から司令が下る…。いやいやいや、すでに20時間も費やしているのに…。

それに失敗作と認めてしまっていいのだろうか。

…良く見ると途中でストップしたネアリカ、なかなかかっこいいんでないの?この歌詞は、嵐に呑まれ、絶体絶命の壮絶な航海のうた。この荒々しさが、航海の途中とも見えないだろうか。

あるいは、何百年も経った、海の地図のような、古びた書のような。これはこれで1つの作品かもしれない。


ということで、もう1枚のキャンバスを取り出す。次は、マス目を書き、全体のバランスを見ながら白と黒の毛糸を交互に貼り付けていく。


細かいところは、ボンドで固めた毛糸を細く切る。細かい…。全集中で貼っていく。うぬぬ、これでどうだー!


書道なので、サインも入れないとな。サインは○で囲うので、字はさらに小さくなってしまう。私の名前の頭文字、「キ」を漢字で「紀」を書く。む〜り〜よ〜😟紀の右の部分の「己」は「キ」と読む。これなら○に収まる。「己」をヘビ🐍みたいにしちゃお〜。


ということで、完成!
Sailng onは、嵐の中を進む船の歌。雷に打たれた1枚目、無事に到着した2枚目。どちらのネアリカも、素晴らしい物語が詰まっている。


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