ティボー・クルトワという評価に困る男【プレーを気にいった選手の性格がクソ野郎だった…】
現役随一の名手
ティボー・クルトワ。
世界最大のビッグクラブであるレアル・マドリーに所属する、1992年生まれのベルギー人サッカー選手。
これまで所属した全てのチームでリーグ優勝を経験し、ロシアW杯でベルギー代表の3位入賞に大きく貢献したのも記憶に新しい、押しも押されぬ超一流のGKである。
自分が(というか恐らく多くのサッカーファンが)クルトワを知ったのは、アトレティコ・マドリーに移籍してきた(正確にはチェルシーと契約した上でアトレティコ・マドリーにレンタル移籍した)2011-2012シーズン。
まず目を引いたのは、199cmの長身。
更にはその体格からは信じられないほど俊敏な反応。
そして的確なポジショニングと基本に忠実なセービング技術。
当時、まだ20歳。
とんでもない選手が現れたと、本当に驚いた。
マニアックな話をするなら、その反応速度と身体能力は勿論凄いとして、ミドルレンジのシュートに備えている際のバランスのいい姿勢、細かいステップで適宜ポジション修正を怠らない意識、長身を目一杯広げたブロッキングの作り方、そして圧倒的なハイボール処理能力には、本当に驚いた。
足元の技術には少し不安を残すものの、その他すべてを高い水準で備えたその能力は既に世界トップクラスで、2013-2014シーズンのリーグ優勝を手繰り寄せる鬼神のようなセービングの連続を見て、自分は一気にクルトワのファンになった。
リーグ優勝を置き土産として、クルトワは2014-2015シーズンからプレミアリーグ(イングランド1部リーグ)のチェルシーに移籍(レンタルバック)。
当時最強のキーパーの1人であったペトル・チェフとのポジション争いに勝ってスタメンを確保し、移籍初年度からリーグ制覇に貢献する。
この時点で間違いなくトップ選手の1人と目されていたクルトワの評価がさらに高まったのは、2018年のロシアW杯。
その実力を遺憾なく発揮して、ベルギー代表の3位に大きく貢献する。
特に、準々決勝のブラジル戦ではビッグセーブを連発!
再びちょっとマニアックな話というか、クルトワの凄さを解説したい。
ちょっと以下の動画を見て欲しい。
ブラジル戦でのクルトワのセーブを様々なアングルから何度も映すという、とんでもなくマニアックな動画で、恐らく最も有名なセーブは何度もリプレイで流れた3:20過ぎのネイマールのシュートを止めたシーンだけど、個人的にクルトワらしさが一番出ているのはこのシーンではないと思う(いや、このセーブも相当凄いのは間違いないけど)。
注目して欲しいのは1:55過ぎからのドウグラス・コスタのシュートをストップしたシーン。
特に分かりやすいのは2:10からのアングルかな。
スッと腰を落とながら手を広げてセービング姿勢に入るタイミングとスムーズさ、そして長身ながら細かいステップでポジションを修正し、更にはその際に重心は左右どちらにも偏らず、腰の位置も上がらない。
この基礎を極めたような技術力こそ、クルトワの真骨頂だと思っている。
このブラジル戦でのハイパフォーマンスもあり、クルトワはゴールデングローブ賞(大会ベストキーパー賞)を受賞。
そしてこの活躍を引っ提げて、2018-2019シーズンからは世界で最も大きなクラブチームの一つ、「白い巨人」ことレアル・マドリーに移籍。
チェルシー移籍時と同様、名手ケイラー・ナバスとのポジション争いに競り勝ちスタメンを確保し、2019-2020シーズンにはリーグ優勝に貢献。
世界最高峰のチームの絶対的守護神として、現在も活躍を続けている。
問題は、プレー以外の面
そんなクルトワだけれども、一つ大きな欠点と言うか…目に余るような特大の問題点がある。
はっきり言って、人間性に問題があるのだ。
攻撃的で他者の怒りを買うような発言と行動を繰り返していて、ファンの自分でもちょっと擁護が出来ないレベル…。
古巣批判、チームメイトや対戦相手への暴言、そして海外サッカーファンにはある意味有名な「あの事件」など、正直言って挙げればきりがないけれども、代表的なものを少し列挙してみたい。
・移籍騒動と古巣批判
アトレティコ・マドリー→チェルシー→レアル・マドリーと移籍しているクルトワだけれども、移籍のたびに問題行動を起こしている。
前述の通り、レンタル移籍でアトレティコ・マドリー所属時、クルトワの保有元であるチェルシーには当時世界最高のキーパーの1人であるチェフがいた。
その状況に対してクルトワは「チェフのベンチに座るつもりはない。自分はここに残る。どこにも行かない」と、自身の出場機会のために保有元のチェルシーには戻らないという、割と珍しい意思表示をしていた。
しかし、チェフに年齢的な不安が見え始め、更にはクルトワ自身が成長した事でその評価を高めると、チェルシーは無条件でクルトワにポジションを与える意向を示すようになる。
その途端、クルトワは態度を急変。
メディアを通じてアトレティコ・マドリーへの批判を繰り返した挙句、なんと練習を無断欠席。
かなり強引なやり口を見せ、チェルシーへと移籍する事に。
いやいや、このシチュエーションなら、そんな事をしなくてもチェルシーにすんなり移籍できた気もするけど…?
そしてクルトワはこの件に関して全く懲りていないのか、チェルシーからレアル・マドリーに移籍する際にも騒動を巻き起こす。
世界最高のクラブの1つであるレアル・マドリーがクルトワの獲得を本格的に目指していると知ると、またもや暴言を連発。
「絶対にチェルシーでキャリアを終えるつもりはない」というリスペクトに欠けた発言(チェルシーも世界有数のビッグクラブである)を繰り出しただけでなく、まだ移籍が決まっていないのに「自分の心はマドリーにある」というとんでもない発言まで飛び出す始末。
…あれ?
マドリーの街から、散々揉めた上で出て行かなかったか…?
アトレティコ・マドリーを揉めながら退団して、同じ街にあるライバルチームのレアル・マドリーに移籍するつもりでこの「心はマドリーにある」発言って、アトレティコ・マドリーのサポーターに喧嘩を売りすぎでしょ…。
そうやって無事に(?)レアル・マドリーへ移籍してからも、当然(?)古巣チェルシーへの批判をするし、アトレティコ・マドリーとのダービーマッチでは恩師であるディエゴ・シメオネ監督への批判も飛び出すなど、もうやりたい放題。
恩義とか感謝とか、そういった気持ちは無いんかコイツは…。
・他の選手への暴言
クルトワの暴言は、もちろん(?)選手個人にも向かう。
2014年のブラジルW杯、ベルギー代表のスタメンの座を掴んでいたクルトワ。
控えGKのシモン・ミニョレが「チャンスがあれば試合に出たい」と発言すると、クルトワはメディアを通じて「正GKである自分に対するリスペクトが足りない」と応酬。
4歳年上の先輩に対して、そしてチームメイトに対してこの発言である。
そんな、わざわざ波風を立てるような発言をしなくてもいいじゃない?
チームの和とか、そういうものを一切考えないんか、コイツは…。
2018年のロシアW杯では、1-0で勝利したグループリーグ最終節のイングランド戦終了後、相手GKジョーダン・ピックフォードの失点シーンに言及。
そもそも相手の失点シーンについてGKが触れるのもおかしな話なんだけど、なんとその内容は「背の高い自分なら届いていた」というとんでもないもの。
確かに、ピックフォードはGKとしては少し小柄な185cmと、クルトワと比べて14cmほど身長が低いけどさ…。
普通、対戦相手に対してわざわざこんな事を言うか?
ましてやこの試合、ベルギーもイングランドも既にグループリーグ突破を決めていたので、実質消化試合である。
一体何の意味がある発言なのか…。
・ケヴィン・デ・ブライネとの「あの事件」
クルトワの問題行動、その極めつけと言っていいのがこの一件だろう。
なんと、ベルギー代表のチームメイトであるデ・ブライネの彼女と不倫をするという、とんでもない行動をしたのだ。
いやいやいや!?
それはダメでしょ…!?
ベルギー代表として集まる際(2人とも不動のレギュラーである)、一体どんな顔をしてデ・ブライネと会うつもりなのさ…。
そもそも人としてNGな行動だし、ただのヤバい奴じゃん、コイツ…。
ちなみに、クルトワもデ・ブライネもベルギー代表の中心人物としてその後も招集され続けているのが、またなんとも言えないところではある。
でも、好きなんだよなぁ…
クルトワに限らず、そしてサッカーに限らず、スポーツ選手の中には「悪童」や「問題児」と言われながらも、そのプレーでファンを魅了してしまう困った選手が結構いる。
そんな選手のファンになってしまうと、そして自分のように「プレーを見て好きになってから、その問題のある人間性を知る」という時系列だと、非常に複雑な心境を抱える事になる。
その言動から伺えるクルトワの人間性は、はっきり言ってドン引きするレベルである。
ただ、それでもやっぱり自分はクルトワのプレーが好きだ。
クルトワがゴールをセービングする姿に、心底惚れてしまっているのだ。
そこだけは、揺らぎようがない。
クルトワが年齢(2021年9月現在、29歳)を重ねる事によって人間的に丸くなったり、言動が穏やかになるかどうかは正直言って分からない…と言うか、あまりそういうタイプではないような気もしている。
それでも、ファンとしてはこれ以上揉め事を起こさないように祈りながら、そのキャリアに大きな傷がつくような大問題を起こさない事を切に祈りながら、クルトワのプレーを応援していきたい。
その世界有数のセービング能力でチームを救う姿を、これからもずっと応援していきたい。
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