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コナン映画における毛利蘭の話

 明日、「100万ドルの五稜郭」を見て来るので、とりあえずコナン映画の振り返り記事はこれで最後にしようと思う。
 今日は毛利蘭の話だ。実は、予習がてらに「まじっく快斗1412」の見てその記事を書こうと思ったが上手くまとまらなかったので、もともとどこかで書こうと思っていた蘭ねーちゃんの記事になった。

 蘭の良いところは、その心身の強さと善性だ。キャッチーな魅力が少し薄いキャラなので、ヒロイン人気では灰原にどうしても水をあけられがちだが、蘭は蘭で素敵なシーンがいっぱいあるのだ。

 劇場版での蘭の好きなシーンに触れる前に、先に原作での好きなシーンをひとつだけ挙げておく。「満月の夜の二元ミステリー」で、蘭が灰原を庇うシーンだ。
 黒の組織のベルモットと対峙するコナンと灰原。コナンは麻酔銃でベルモットを眠らせようとするが、逆にコナンが眠らされてしまう。灰原は、自分の命と引き換えに、他の人には手出しをしないようにと取引を持ちかける。絶体絶命の場面だ。
 正直、「これどうなんの?」と思っていた場面で、灰原を庇うために飛び出してくるのが、ここにいるはずのない蘭ねーちゃんなのである。

 蘭は灰原に覆いかぶさって、震えながら「警察を呼んだから。もう少しの辛抱だから」と灰原に言い聞かせる。
 なんでこんなところに蘭がいたのかと言えば、灰原の周りを嗅ぎまわっている怪しい女を不審に思い、車のトランクに潜り込んでいたのである。すげぇ行動力だ。

 コナンが自らの正体を蘭に明かさないのは、彼女を危険から遠ざけるためだ。つまり、蘭はずっと「守られている」人間だったのである。もちろん、その空手で、犯人からコナンを救ったことは一度や二度ではないが、黒の組織からはずっと遠ざけられていた。

 その蘭が、自ら鉄火場に乗り込んできた。黒の組織のことも、コナンの正体も灰原の正体も何もしらないが、トランクの中で銃声を聞いて、誰かが撃たれているかもと思っただけで飛び出してきたのだ。
 僕はこのシーンで、脳を焼かれた。かつて新一と蘭に助けられ、彼らの強火オタクになってしまったベルモットと同じになった。

 僕は蘭のこういうところが好きだ。銃弾の雨に晒され、震えることしかできないが、それでも身を挺して顔見知りの少女を庇う。毛利蘭はそういう女なのである。





第4作『瞳の中の暗殺者』

 蘭は強い。基本的に、どんな犯人でも制圧できてしまうくらいには強い。
 そんな蘭にデバフをかけるのが、作品だ。

 佐藤刑事が銃撃され、その原因が、停電中に懐中電灯をとった自分にあると思った蘭が、ショックで記憶を閉ざす。だが、その蘭は銃撃犯の顔を見ている可能性があり、銃撃犯は蘭を狙うかもしれない――というのが『瞳の中の暗殺者』のストーリーだ。
 記憶喪失状態の蘭は、いつもの比べて儚げで弱々しい。少しずつ元気を取り戻してはいくが、犯人はその間も蘭の命を狙い、何度も危険な目に遭う。

 まぁでも、何のかんの言っても、この作品の一番気持ちがいいシーンは、クライマックスで記憶を取り戻す蘭だろう。遊園地でコナンと共に犯人から逃げ回り、新一との想い出の場所にやってきた蘭は、すべてを思い出す。
 犯人はコナンを押さえつけ、「まずはお前からだ!」とコンバットナイフを取り出すのだが、そのコンバットナイフが蹴り折られる

 「全部思い出しちゃったんだから。あなたが佐藤刑事を撃ったことも! 私が空手の都大会で優勝したこともね!」と叫ぶ蘭に、「空手……!? 優勝……!?」と謎の慄き方をする犯人。
 そのまま蘭ねーちゃんが犯人をボコボコにしてくれるので、たいへんスカッとする。

 蘭がピンチになる映画は当然多いが、やっぱり強い蘭が好きだな僕は。


第17作『絶海の探偵』

 何かと僕が話題にあげる絶海の探偵。以前、「カッコいい大人」の記事で、蘭が海に落ちてしまうという話をしたが、この海に落ちるキッカケの話をしよう。

 某国のスパイと甲板でやりあったせいだ

 イージス艦に乗り込むため、某国のスパイがとある少年の父親に成りすまして、体験航海に参加してくる。少年は、その男が自分の父親でないことは当然わかっているのだが、怖くて誰にも言えない。
 だが、コナンとの交流を通じて、勇気を出すことを学んだ少年は、甲板で蘭に助けを求める。少年がそれまで何度か怯えた様子を見せていたことを思い出した蘭は、スパイと対峙する。

 これだよこれ!(後方ベルモット面) これが毛利蘭だよ!
 この、少しだけ言葉を交わしただけの少年の言葉が嘘ではないと見抜き、そのSOSに応える。
 蘭はたまたま空手をやっていたのでその男とやり合うことになったが、たぶん、やっていなくても少年の言葉を信じ、一緒に逃げただろうとも思う。

 ちなみに、結果的に蘭は海に落とされてしまうが、スパイとはまぁまぁ互角にやりあえていたようだ


第23作『紺青の拳』

 園子と京極さんの映画である。怪盗キッドも出る。
 キッドが新一の振りをしてやってきて、蘭たちとしれっと合流してコナンをやきもきさせる。この時点で、新一は蘭に告白、蘭も保留にしていた返事を新一の返したあとであり、ナイトプールで「もう、私達もう恋人同士なんだよ?」と言う蘭の顔がめちゃくちゃ可愛い。そして、「えっ、そうなの!?」とびっくりした顔でコナンを見るキッドが面白い。たぶん、原作未履修で映画を見に来ていた観客も同じ顔になっただろう。

 すわNTRか、と観客もやきもきする展開なのだが、実はエンディング後に、「蘭はずっと新一が偽物だとわかっていた」ことが判明し、待ち伏せしていた警察と共にキッドを取り押さえようとする。ここは全国の新蘭ファンとベルモットが喝采をあげたシーンだ。
 実は、園子に「ダブルデートだね」とウキウキで言われた場面でも、「そうだね」とあまり気乗りしない笑顔を浮かべて居たり、ちらほらそれっぽい描写はあったりした。

 単なる園子&京極さんの映画では終わらず、きちんと蘭の「新一のカノジョ」としての格を保たせたのが、この映画の評価できるポイントのひとつだと思う。


第1作『時計じかけの摩天楼』

 この映画は、中盤以降すべて5月2日――工藤新一の誕生日の前日に起こった出来事である。蘭は、新一をオールナイトの映画に誘い、新一=コナンはとうとうそれを断れずに5月2日を迎えてしまう。
 蘭は、0時を過ぎて誕生日を迎えたタイミングで、プレゼントを渡すといういじらしい作戦を立てウキウキしているが、コナンは「どうすりゃいいんだ」と頭を抱える。この頃は灰原もいないので、元に戻る薬もないのだ。

 さて最終盤、連続爆破事件の犯人を追い詰めることには成功するコナンたちだが、その犯人は、蘭と新一が映画を見る予定だったビルにも爆弾を仕掛けていたことが判明する。

 爆弾は時間差で爆発するようになっており、最初の爆発で蘭たちは映画館の中に閉じ込められてしまう。その扉の前までコナンがやってきて、新一の声で蘭と話をする。
 これ、当時だからできたメチャクチャ良いシーンだ。携帯電話も普及していないし、灰原の薬もない。だからこそ、扉越しに「こんなに近いのに、すごく遠い」的な演出ができる。天才の所業ですよ。

 だがもちろん、話はここでは終わらない。
 犯人の目的は新一への復讐であるため、蘭からこのデートの計画を聞いていた犯人は、映画館に一番大きな爆弾を仕掛けていたのだ。コナンの手元には爆弾の設計図がある。コナンが新一の声で指示を出し、蘭が爆弾の解体を行うことになる。

 ここもなかなか肝がすわっている良いシーンだ。
 蘭の新一への信頼とか、新一の「吹き飛ぶときは一緒にいてやる」的なセリフとか、そういう諸々が良いのだが、やはり最高なのは、「犯人の姦計を打ち破るのが、蘭のいじらしい乙女心だった」という構図だろう。いわゆる「赤のコードか青のコードか」という最後のジレンマの話だ。犯人は「蘭と新一が好きな色」である赤を切らせようとしたが、蘭は「赤い線は、新一と繋がっているかもしれないから」という理由で切らなかった。
 犯人の「芸術に愛は必要ない。人生にもな」というセリフを考えれば、かなり意図的な演出だと思う。非常に痛快だった。


第26作『黒鉄の魚影』

 まだ見直すことができていないので、記憶だけで語ることになってしまうが、この映画でも蘭ねーちゃんはカッコよかった。
 この映画は、灰原の正体が黒の組織にバレてしまい(あとで間違いだったとうやむやになるが)、灰原が拉致されてしまうというメチャクチャスリリングな内容だ。

 灰原は旅行先のホテルから連れ出されるが、異変に真っ先に気づいた蘭が、ホテルの窓から飛び出して黒ずくめの男のひとりに襲い掛かる

 なんかもう、「蘭にここまでさせて良いんだ!?」という驚きもあったし、同時にここまでやってくれてありがとうという気持ちもあった。
 僕は、コナンを守るために戦ってくれる蘭ねーちゃんも好きだが、灰原や見ず知らずの子供の為に戦う蘭ねーちゃんの方がよりカッコよく見える。特に灰原を守るときは、相手が黒の組織の一員だから、というのはあるかもしれないが。

 ちなみにこの話は、コナンと灰原が海中で人工呼吸するという展開がある。灰原はそれを「キスしちゃった」とモノローグで語っているが、最終的には蘭に「返却」している。
 なんというか、『黒鉄』は間違いなくコ哀映画なんですが、「コ哀をやる上での蘭」という存在から逃げず、真っすぐに向き合って描いたのが素晴らしいと思いますね本当に。

 ちなみに、コナン(新一)と蘭のファーストキスも水中での人工呼吸である。そういう星の元に生まれついたのか、あるいは、これも意図的なものだったりするのかもしれない。



 蘭の善性は、蘭が「普通の女の子」として描写されているからこそ輝くと思う。確かに空手は強いし、犯人をボコせる力はあるが、彼女自身は常識的な人物だし、人並みには命の危険を覚える。
 だからこそ、誰かを助けるときに躊躇もしない蘭の姿が尊いのだ。
 蘭の強さには、「新一への信頼があるからこその強さ」と、「本人の善性から来る強さ」があって、映画ではもっぱら後者が描写されがちだ。前者は「時計じかけの摩天楼」や、「14番目の標的」のラストなどは、そんな感じがあったが、機会があったらもっと見たいなと思う。

 11日中に書き上げようと思ったが、ちょっとオーバーしちゃったね。今日はいよいよ「100万ドルの五稜郭」封切りである。さすがに蘭にそこまでウェイトは割かれないだろうが、それはそれとして、どんな話になるのか楽しみだ。

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