木内ゆか

詩の練習をしています。

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最近の記事

アレグロ/アンダンテ(詩)

バランバランの 粒々さ サランサランの バラバラなのさ 玄米さ 種だった 意味などない 煎られている フライパンで あいうえお かきくけこ a b c d e f g ・・・・・・ 意味などない 種なのさ バランバランの 粒々さ  サランサランの バラバラなのさ あいしている あっちへ行け あの日のあの人 アレグロ アンダンテ バランバランの 粒々さ 熱くてパチパチいうだけなのさ 意味などない あいしている あっちへ行け あの日のあの人 アレグロ アンダンテ

    • 西のソラから 金の炎が侵入ってきて 僕の部屋を物色し ミュージックをかけながら 僕の本を燃やしはじめた 11月の日曜日 金髪 そばかす スリップ一枚 僕の書物はおいしいみたいだ 千切って舐める 14歳の赤い舌 踊りながら 笑いながら 愈々彼女は僕に近づく 僕の頬に手を触れた… 耳に息を吹きかけた… 途端に階下で犬が吠え 炎は窓から立ち去った 写真提供:Takao Hisano

      • ソラにのぼる樹

        僕の彼女は あかるいソラ。 ファビュラスなソラ(蒼いソラ… 暗い森で彼女をまってる 僕は独りの【樹状】です。 また春がきて  ソラにのびる(僕の突起…) 指先だけがチリチリするんだ  あいたくて 懐かしすぎて フルエてる僕(点滅するんだ… 憧れの キラめく君に指をのばす どこまでだって吸い込まれたい ひとつになりたい (ソラの海溝…) 逢いたくて 木質化した下半身を もっと地中に挿し込むから キヨラカな 枝をのばすと指先だけがチリチリするんだ 神経系で(おもいだしてる…

        • 「みいちゃん」

          九月になってソラの蝉が全部落ちたら 猫を飼おう。 その頃空は もう澄んでいる。 どんな猫でも 年寄り猫でも 名前はみいちゃん。 「みいちゃん」「みいちゃん・・・」 アイドリングの喉を揉み 小さな鼻を私の口で覆ってしまおう。 ピンク色の匂いを嗅いだら 鋭い爪を鞘から出す。何度も出す・・・ ほそい脇を持ちあげて シッポの先まで一億年の銀河を解(ほど)いて  ヒザの上で巻き直そう。 何度でも 巻き直そう・・・ 「みいちゃん?」「みいちゃん?」 今日はお花になりまし

        アレグロ/アンダンテ(詩)

          屹リツ滿ツ森

          森の小径は 細くて長い  ミライへ続く 卵管なのに かの女の中の 腐葉土は 詩篇がほぐれて〈創世記〉の匂いがする ひと雨ごとに深くしずんで 祈りの形でまるまって (もう一度…) リリスの香水くゆらせて 鏡の中からあるいてきたのは  もう一人の(詩人の僕だ… なつに羽化する(二卵双生… サナギの記憶をたぐり寄せると 複眼系の脈が光った (あのとき君は しあわせでは なかったの? せりあがる かの女の水位! あぁ又なのか!)逃げおくれて 逆巻いて 押し流された 沼のほとりは

          屹リツ滿ツ森

          西瓜

          西瓜を食べると あの日に戻れる。 おじいちゃんちのモノクローム。 縁側で 甘いだけの夏をむさぼる 8月は いつまでたっても終わらない ( 野放図な 入道雲 ・・・ ) 幸福すぎて 不安になって 胸の奥から 種を飛ばした

          お盆の詩(金魚)

          夢のなかで 実家に戻ると 昔の金魚がはさまっていた 書架の隅で  手のひらサイズに熨されてしまった 赤い金魚は 埃にまみれて (まだ生きている) ガラスの扉をスライドさせて 注意深く手に取った(生きている…)  金盥(かなだらい)に水を張り 金魚をそぉっと中に放つ  しばらくすると元気になった 形もふつうの金魚にもどった  ふと気がつくと(きらめく残像…) 金魚が部屋を泳いている(身をくねらせて躍ってみせる…) ホオズキみたいな脱け殻だけが ペルシア絨毯の連続模

          お盆の詩(金魚)

          夏の詩(もどき)

          また恋をした(胸に溜まった)      白濁を  搾乳しては 棄てている  洗面台は   三面鏡だ       緑の硝子に       しらない女が          無限にいて             同じに動く・・・         【 三 面 鏡 】         *    *            *      野放図に  裂きみのる      庭のザクロの  草陰で     女神ふたり  しゃがんでいた        【 ザ

          夏の詩(もどき)

          初夏の詩(もどき)

          はつなつから  うすくほどけて    剥離してゆく ほらモンシロが  草の穂先 顔をかくして  交尾をしている    リ リリ・・・     リ リリ・・・ 小雨にぬれて  おもみにゆれて     「白無垢」    *     *     「夜間飛行」 ゼンマイ仕掛けの 時計の中を サテンシルクが ながれてゆきます     サラサラサラ・・・ 音楽は 今日はサファイア色でした 変更線を越えたので そろそろリボンにもどりましょう    リリ ク し

          初夏の詩(もどき)

          リトルロックはあっちです。

          「リトルロックはあっちです」そう云って 僕はここに立っている 乾いた荒野の道路標識 いつまでも・・・ 「リトルロックはあっちです」そう云うと 人々の疲れた顔に小さな笑みがチカリと瞬く 心に安堵の泉が広がる 「ホッホッホ~、このままアラスカまでドライブしたい気分じゃよ~?」 「ダーリン、あともう少しよ」 人々は希望を胸にアクセルを踏む そしてみるみる彼方に消える 夜になると満天の星々と僕だけの世界 甘い静寂・・・ やがて星が溶けはじめる ひたひた ひたひた・・・ 胸を満たす

          リトルロックはあっちです。

          雪割りの邑(むら)

          その邑(むら)は秋田県の山奥にあった。なんでも ひと冬 雪の中に埋まっていると、女は美しく蘇るのだとか…。紅茶キノコやツチノコ、映画「八つ墓村」が流行った頃に、この「雪割り美容法」も静かなブームを呼んだものだ。朝の八時に東京駅八重洲口に集まる女たちは口数が少なかった。荷物も少なかった。ほとんどの女が一人で来ていた。マイクロバスの窓辺に一人ずつまばらに座り、流れゆく景色を他人事のように眺めていた。 「雪割り荘」に到着すると 作務衣に着替えさせられた。まずは二十一日間の断食だっ

          雪割りの邑(むら)

          あぽんの庭

          あぽんは一人で住んでいた。古い家だった。庭には草が生い茂っていたけど草刈りは嫌いだった。八月に入ってようやく夏らしくなり蝉が鳴いている。 「ゲノムが死んだよ」 古い友人から連絡があった。ゲノム・・・。ゲノムは酒が好きな男だった。山男みたいにガッチリしていた。郷里の海で 昔 皆でキャンプをした。翌朝防波堤の上で 芋虫みたいに蠢くゲノム・・・。二日酔いの頬には無精ひげが生えていて 触るとチクチクしそうだと 思った。      Once upon a time       

          あぽんの庭

          【ストロー体。】はソラに墜ちる

          あぁ樹は イチョウは そこに立って 千年先まで ソラに墜ちる 「瀧だ! 瀧だ!」(無音爆音・・・) 私たちは移動をする 時空をつかって移送をしている 一本の 棒かもしれない瀧かもしれない 立ったまま ソラに墜ちる! 転がり果てた今いるどこかで 小さく花がさくだろうか  〈タンポポの種〉を移送する(無音爆音…) 【気密の宇宙ストロー体。】 縦横無尽に気密をおよぐ 双極螺旋のアカとアオは すれちがいざま (目と目があうから)分かれたことも 今はうれしい

          【ストロー体。】はソラに墜ちる

          母さんにはもう僕が見えない

          母さんにはもう僕が見えない でも僕には母さんが見えるよ 兄弟たちはよく食べる ドングリを運ぶ母さんを 今日僕は何度も見たよ あの日の朝を僕は忘れない  母さんが僕を見つけた朝 春の陽ざしに照らされて 毛むくじゃらの寝ぼけた顔を持ちあげると リスの母さんが立っていたんだ  ツヤツヤの黒い瞳で 不思議そうに僕を見ていた  僕の産毛の匂いを嗅いだり くるりと巻いたシッポをたしかめると  母さんは 僕を抱っこして 巣に持ち帰ろうとした! ・・・でも できなかった 

          母さんにはもう僕が見えない

          俺の小樽

          どんどこザブンだ どんザブン 寄せては返す ブルースで どんどこザブンだ どんザブン 小樽は詩人の街だった 粉雪舞う夜 真っ白い 羊の皮のコート着て 胸元から 白い子猫の顔のぞかせて 父さんは 店のみんなと 家族を引き連れ 焼肉屋 いつものパーティー 子どもはジュース どんどこザブン どん座布団 どんどこザブン どんぶり勘定 洋服売ってた 蝶々のドレス 夜の蝶々がひらひら来て 月賦で買った その取り立ては 時に包丁沙汰だったけど 誰しも生きていか

          俺の小樽

          気密の蚯蚓(ミミズ)

          どうして目は  左右に仲良く埋まっているの? 父と母の古墳のようだ。草木の 丸い瞼の(寄せては返す…)むつごとは 【気密の家庭】のざれごとで(拮抗作用のシステムなのに) にょっきり突き出た社会の中では真逆の正義を吠えている。 拮抗ドームの 右の眼窩で 父の夜が 母の夜を 照らして吠えて裁いている。 ふたつの螺旋で力を生みだす 一本の 【拮抗ライト】は古代の【機密のシステム】で 遥かな宇宙トンネルだ(半分だけじゃ気密になれない)ビニール製の 【ストロー結束組織体】 垂直に立つ

          気密の蚯蚓(ミミズ)