読了:サイコパス・インサイドーある脳科学者の脳の謎への ジェームス・ファロン 2016 金剛出版
概要
神経科学者である著者が自身の脳を調べると、サイコパスとされる人々と同じ特徴を持っていることがわかった。
著者は連続殺人犯と自分との共通点・相違点を探求し、凶悪犯罪を犯すに至るには脳の特定の部位の機能低下、遺伝子の変異、幼児期の虐待の有無という3つの要因が相互に作用するという仮説に辿り着く。
しかし内省と近しい親族からの訴えにより、自身の「共感性の低さ」という性質にも気づく。それは勝つため、自分が満足する結果を得るためには他人の気持ちへ感情的斟酌をしないこと、そして家族から求められている情緒的共感性に応えてこなかったということであった。
感想
著者は多くの紙幅を割いて半生を振り返っている。自分はいたずら好きな少年であり、周囲の人に迷惑をかけることはあっても、壊滅的なダメージを与えるには至らなかったと考えている。
とはいえ、紹介されていたいたずらには、私には度がすぎると感じるものもあったし、また著者による妻や娘、妹たちへの言動は彼女らに同情したくなるものであった。
著者の原家族は優しい理解者であり、適切な養育をしてくれたから、自分のサイコパスとしての才能は花開かなかったのだろうと予想している。
確かに著者は家族や周囲の人たちに恵まれて育ったため、自分の良い側面を使って社会に参加することができたのだろう。
しかし、その裏でごく近い関係性の人たちには負担が行っていることもわかる。家族が著者に「わかってもらいたい」ことをわかってもらえない辛さを、意図的にではないが強いていたし、自身の行動で彼女らを振り回してもいただろう。
「自分の満足のために他人を利用する」行動の結果がそこにある場合、そこにいわゆる「普通の人」と「サイコパス」の差はあるのだろうか。結果の違いしかそこにないように思う。
※本の要旨と感想を、1000文字以下でまとめることを目標にしています。
※あくまでの私のメガネを通した見解に過ぎないので、ぜひ実際に本を読んでみてください。
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