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屋台飯ホラー映画に関する腹ペコな小論

常々ホラー映画はエレガントであるべきよなぁと考えてはいるものの、それはきっとレストランの料理と屋台の飯みたいな棲み分けであって、全てがエレガントであれば良いというものでもない。「9%の缶チューハイを片手に食べる屋台飯」みたいなホラー映画ももちろん大歓迎だ。

それは例えて言うならば、巨大人食いサメや無駄に露出するおっぱい、殺人鬼などがいろどり良く混ぜられた麺をジューッと鉄板で焼く焼きそば。これに女の悲鳴という甘辛いソースがかけられれば言うことなし。焼きそば、みんな好きでしょ? 私も好きなんですよねコレが。屋台飯には屋台飯の、レストランにはレストランの良さがある。

しかし、世の中にはレストランでワインを嗜んでいたら、テーブルの隣でもうもうと煙を出してイカ焼きが焼かれ始めるようなホラー映画もあることは確かなのだ。場所にそぐわないものを提供されると私たちは驚き、少しガッカリしてしまう時すらある。

逆の場合はもっと驚く。しかし、こちらは嬉しい驚きだ。屋台の前で500円玉を握りしめて待っていたら、突然真っ白なお皿に盛られたタンシチューが出てくる……そういうことも稀にだが「ある」。思いがけなく素晴らしい演出、演技、物語の運びは人をビビらせ、感動させる。そんな良作にブチ当たった時はもちろん感謝感激なのだが、こちらの準備ができておらず、まさに神社の境内で立ちながらタンシチューをかきこむようなことになる。心の準備ができていないというのもなかなか大変だ。(でも許される、それが思いがけない良作の力である)

「お腹すいてるの?」と心配されるようなややこしい例えを使ってしまったが、ホラー映画はそれぞれの良さがあり、ただしそれは混ぜると危険、でもシェフの技量によっては奇跡のコラボレーション良作が生まれるといった面白いジャンルだと思っている。

なので、今後もしお高めのレストランで焼きそばやイカ焼きが焼かれたとしても怒らない、サメを育む海のような広い心を持って生きていきたい。
だって焼きそばもイカ焼きも、おいしいですもんね。

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