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でもやっぱり価値って難しい


伝統工芸の存在意義や価値について書いてきましたが、正直やっぱり難しい…

だって、現代人だもん!!




博物館で見ることができる、江戸時代の素晴らしい漆工作品の数々…

とてもすごいと思います。(語彙力w)
技術のことは詳しく分からないけれど、無条件に圧倒されてしまいます。

漆の作家さんや職人さんは、きっともっとすごいなぁと感じるのでしょう。
しかも、ただすごいという感想だけでなく、技術面的な面だとか、素材の選び方や扱い方だとか、たくさんの刺激を受け取ることができるのだと思います。

それはきっと、受け取るための知識を持っているからです。


英語を知らなければ英語の本は読めなくて、挿絵の部分しか楽しめないのと同じことで、漆の技法の知識がなければ、本当の意味でその作品の凄さに驚いたり、作品から何かを得たりすることはできません。

でも江戸時代の一般の人は、漆の技法の細かいことなんて知らなくったって、漆の細工品を見て大そう感激したに違いありません。
だって、漆でなんでも表現できちゃうわけですから!当時の人々にとって漆芸は魔法の技術だったろうと思います。そして、機械がない時代に精密なものを作り上げる職人がどれだけひっぱりだこだったことか…。


しかし今は、合成樹脂だとかで簡単に整形ができるし、プレス機で高蒔絵っぽいエンボス表現も、新素材で金や螺鈿っぽく見せることなんかも可能な時代です。
漆の技術がなくても、必要な生活用品を作れるし、やりたい造形や表現をどんどんできる時代です。しかも、安く簡単に。


こんな時代に生きている私たちは、ちょっとやそっとでは動じません。
むしろ、安く似たようなものが簡単にできるのに、なんでこんなに高いものもあるんだろうと頭の片隅で疑問に感じながら、現代の漆工品を見てる一面もあるかと思います。
あ、あんな感じの100均で見たとか、クッキーの缶でこういうのあったよねとか、むしろそっちのほうが小さい頃から馴染みがあります。無意識に、現代の工芸品を、現代の工業製品を通した既視感の目で見ている場合が多いと思います。

実際、私もその一人なので…

だって、現代人だもん!


漆刷毛を作るばかりで、私も実はあまり漆芸の技術については詳しくありません。もちろん漆刷毛も、見た目とは裏腹にかなり手間暇がかかるものです。だから漆を全く知らない人よりは、漆を扱うことの難しさや、漆という素材のもつ素晴らしさを感じられているとは思います。けれど、刷毛と漆工品は必要な技術も違いますから、実際に作っている作家さんや職人さんほどはその作品の奥深さが分かっていなくて、やはり一歩引いたところで見ている自分もいます。
宙ぶらりんでどちらの気持ちもわかるからこそ書けることもあるかなと思って、こうしていろいろ思い切って書いてはいますが(汗)


話を戻します。

博物館では、現代の機械技術がない江戸時代の人が作ったものだという前提で見るから、現代の人でも素直に驚けるのだと思います。
けれど、現代の人が今作ったものは、たとえ昔ながらの方法だけを用いて作っていたとしても、たぶん少し冷ややかな気持ちで見てしまうと思うんです。
作り手は真剣なんですけどね。どうしてもそこに温度差が生まれる。


漆への理解が広がらない要因には、敷居が高いとか、技術的なことがあまりにも複雑すぎるとか、現代の生活に添わないといったことが言われますが、そもそも時間軸の違うことを今やっているという意図が分かりにくいからではないでしょうか。



ーーーーつづく


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