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きっと自分の「夢」はまだこの先にあると信じて。

自分の好きな店 vol.1

都内から新潟に引っ越してきて、ちょっとさみしいなぁと思う。
と言うのは、よく行っていた飲食店にふらりとは行けなくなった事が大きかった。

「年に何回も行く店ってあります?」と色々な人に聞くと、地方にいたらまぁまぁ同じ店になることが多いが、都内の時には結構絞られる or あんまりない人が多かった気がしている。(もちろん、逆のパターンもそれぞれの場所である。)

個人的に、特に25〜28歳くらいに住んでいた吉祥寺は思い入れ深い。

懐かしくも新しい街 ~吉祥寺~

今でも続く新潟の何人かの人達と有難く、料理の経験や人との繋がりもできたのが吉祥寺で働いていた時だった。
働いていたのは新潟の魚と酒をメインにしたお店で、料理をしていたがお酒も好きだったので休みには新潟に来て色々な蔵や生産者さんの所にお邪魔することが出来た。そんな話をよく聞いてくれたり、良くお世話になっていた…
と言うよりは、お互いにお酒が好きで仕事終わりによく飲みに連れて行ってくれた先輩がいた。小笑

その先輩は吉祥寺周辺が地元だったこともあり、本当に色々なお店を知っていた。
昔からの横丁には、「ちょっと狭過ぎるのでは…?」と感じるような所にわいわいと賑やかな店がぎゅっと集まっていたり、ちょっと駅から離れた所にも知る人ぞ知るような店がぽつんとあったり。昔から地元の人達が通う老舗や同世代のオーナーが新しくオープンする店。大手のビールチェーン店なんかも出店していたし、ホテルのビュッフェなんかもあった。カレーもたい焼きも、あぁそうだパン屋さんも珈琲屋さんも…。

※調べてみると、2014年のデータだが駅から2km圏内に9,332軒もの飲食店がある。。
「出店戦略情報局」
https://storestrategy.jp/?category=1&pref=13&id=6522
(今更ながら驚いたが、吉祥寺には多種多様な飲食店が集まっていると思う。)

そんな中でも何度もお邪魔していたのが「オクワ酒屋」さんだった。

きっと「思いやりのある優しさ」を感じていたからだと思う。

「仕事終わりに行ける店」
しかも、同じ飲食業で自分たちの仕事が終わってからとなるとより難しい。。
普段から行ってみたいと思っている店でもタイミングによっては難しいし、なんだかんだ「仕事終わりでも行ける店」になってしまう。とは言え、そうなるとチェーンだったり、昔から「飲食業者需要御用達!」とでも言うべきか。
「やっている」もしくは「とりあえず開いている」お店になってしまう。

そんな駅の繁華街から少し離れた、とは言え駅からなら5分程で行ける。しかもちょっと早く終わった時に、先輩が「前から行っているから大丈夫!笑」とダッシュでお邪魔していたのが「オクワさん」だった。

ご夫婦お二人で営業されていて、奥さんが調理を旦那さんがサービスをされている。
カウンターもテーブル席もしっかりと20席ちょい。満席になったらめちゃくちゃ忙しいと思うのだが、2人の息がピッタリとは言えどもびっくりするくらい綺麗なオペレーションとキッチンのコンパクトさ。

「なんで好きなんだろう?」と改めて考えたのだが、サービスにも料理にもしっかりと「優しさ」(手間?目線?気遣い?気配?)を感じられるからだと思ったのだ。

自分の好きなワインと美味しい料理はもちろん。ホッとする音楽と可愛いお皿。
ふとした瞬間に感じる「良さ」を一緒に享受することができる空間がある事、「飲食店はただ食べるだけ・飲むだけの場所では無いんでしたよね。。」って気持ちを勝手に持ちつつ、帰る時にはフラリとするくらい気持ちよい満足感がある。

「お疲れ様、またね!頑張ろう!」
なんて帰る頃にはとうに閉店時間を過ぎ、日付も変わっている。
それにも関わらずこんな言葉を同業者にかけてくれる。

休みに行けば、満席の中でも「ちょっと待っててね、今行くから。今日は何から飲む?」なんてちゃんと声を掛けてくださる。一人で行っても「前菜ちょっとづつ乗っける?笑」なんて色々食べたい気持ちを察して手間を惜しまない。

前提として、個人的にはお客さん側には「馴染みになる」みたいな行為は必要だと思っている節もある。(「店員からそれを求めるのか?」と言う話は別にして。)
じゃぁ、「何をすれば馴染みなのか?」と言うことなのだが、それはきっと大きく幾つ科に分類できて…なんて話もあるだろう。

今回の場合は「お店の雰囲気の一部になれるかどうか」ではないかと思う。

「サービス」が当たり前ではなくなっている。

そう言うお店がある事が「当たり前」ではなくなっていると思うが故に、最近尚更感じていたのかもしれない。

前々からある議論なのかもしれないが、サービスを受ける事が当たり前になってしまっているものも多いと思う。
実際に飲食店で働いていると、料理人でもサービスマンでも事前の準備やその場での瞬発力が必要なもの。「こんなところまで…!」と本当に様々思考を巡らせながら日々営業されている方々を見る。
また、その努力に追いつかなければと日々自ら様々なところへ食べ歩きや研修まで行っている人も見る。

当然、逆も然りである。
だが、それに対しても寛容であるべきである。合わなければ「何が自分にとって良い事、良い店なのか」を改めて考えれば良いし、きっといつかで会えると思うのだ。

個人的に何度もお邪魔していたから当たり前になっていたのかもしれないが、そう言うお店が好きだったのに今の今まで「なんで好きだったんだろう?」と考える事も無いくらいに僕にとっても当たり前になっていた。

これからは自分もそうなれるようにして行こうと改めて思う。
また、「こう言うお店をいつか自分でも…」と思い、自分にもまだこの先にきっとたどり着ける場所があると思えるのがただただ嬉しい。

おまけ

店の常連さんたちと一緒になったり、トイレのちょっとしたポスターやハガキがちょっとこちらの心をくすぐってくれたり、店の扉を開ける瞬間すら楽しい。
通りからガラス張りの店内を上から見下ろしつつ階段を降りていって、「満席じゃん…!」と思ってコソコソ帰ろうとするのすらお二人に見つかってしまう。笑

「オクワ酒屋」ってなんなんだろう?
と調べたことがあって、久しぶりにちゃんと調べてみた。

『アタゴオル』 は、ますむらひろしの漫画作品シリーズ。ますむらひろしのライフワークとも言えるシリーズで、猫と人間が同じ言葉を喋る空想世界を舞台としている。傍若無人な主人公ヒデヨシが巻き起こす数々の騒動を描く。

 ゆっくり時間がある今だからこそ、本を読んでみようと思う。
次に伺う時には自分も物語の中のまた一人になれるように。


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