ウマメシ放浪記 あの権藤博も来た店 古民家で絶品串焼き「串丸二丁目の角」(山梨県甲府市)

8月某日、取材で山梨へ出張した。1泊2日で、夜はフリー。行ったことのない街。大人しくホテルにこもっているのはあり得ない。そうしてふらっと入った店がとっても良かったので筆者指定「ウマメシ」店と認定して、本記事を書く。

なお、非常に惜しいが大将との話が弾み、かつ酒も進んで写真を撮るという発想が欠落していたので、本記事は食レポにあるまじき「写真なし」であることを深くお詫び申し上げます。


●路地を隔てるだけで雰囲気一変

山梨県甲府市。同県の県庁所在地である。首都圏の一角を担う県の中心地ながら、意外にも人口は全県庁所在地中2番目に少ないらしい。

この日、夕方にホテルへ着いた筆者は着替えを済ませ、雨降る街へ繰り出した。まずは妻に依頼された土産を確保しようと駅まで歩くものの、その店はすでに閉店。いったん駅直結の商業施設を練り歩きながら、この後の予定を検討する。

一応、店は事前にいくつか当たりをつけている。ただ、あてもなくホテホテ歩いて良さげな店に入る楽しみ、というのもある。知り合いが軒並みおすすめする小作、奥藤に行く手もあったが、結構混んでるし、待ちそう。悩んだ結果、雨で歩き回るのも難儀なので、当たりを付けていた店へ行くことに。

まずは、現在地から最も近い「雨三屋」という店へ。甲府駅から徒歩5分ほど。駅に続く大通りから1本隔てるだけで、道がかなり細く、暗い。その路地につく灯りを見つけると、どうも同じ目的地と思しき人間が一人。店が近付くと、やはりそいつも同じ店目当てのようで、タッチの差で筆者は2着。すると、店の人が「2人?」と聞いてきた。首を振ると「もう、入んない」とのこと。タッチの差で逃しちまった。

まあいい、まだ候補はある。雨三屋からすぐ近く、1本向こうの「串丸二丁目の角」を目指す。しかしながら、目的地付近にそれっぽい灯りなし。運悪く休みか? 2店連続で入れない事態は避けたい。士気にかかわる。と思って近づくと、やってるやってる。

●居心地の良い古民家調 大将の気風も良い

網戸を開いて入ると、先客なし。時刻は18時過ぎ。まあまだ早いか。店は古民家を改装したたたずまい。入り口右手から奥へ垂直にカウンターが伸びており、最も入り口側が焼き場。奥には座敷席、あとは2階席もある。

ファーストインプレッションは文句なし。靴を脱いで上がると「こっちは暑いから」と、焼き場から最も離れたカウンターへ案内してくだすった。続けて何か大将が言っている。カウンターを隔てているので聞き取りにくく、2~3回聞き返してしまう。どうやら「雨の中よく来たね~」と言っていたらしい。そんなことをなんべんも聞き返すとは、無粋極まれりである。

それにしても大将の気風が良い。筆者は別に社交的な性格ではなく、むしろ真逆な方だが、ついついしゃべってしまう。良いことである。

メニューは店名の通り、串焼きを中心に一品もの、ご飯ものと充実。飲み物はビール、焼酎、ジャパン(日本酒)、あとウイスキー。県内にサントリー・白州蒸溜所があることから、白州がいの一番に書いてある。

●とりかわポン酢は「伝説」 てか何食ってもうまい

まあまずはビールでしょう。あとは、串をお任せで5本ほど頼むと、気持ちの良い返事が返ってくる。もうここで神ヅモを確信した。

生ビールはお通しの枝豆とともにタンブラーで提供され、冷えも泡の塩梅もよし。夏の風物詩が早々にそろった。串を待っている間につまみが欲しく、とりかわポン酢を注文。

大将いわく「伝説のとりかわポン酢」らしく、当然にうまい。かなり丁寧に皮が裂いてあり、グニグニとした食感ではなく、歯切れが小気味よく感じられる。ネギ・もみじおろしもよく合う。この伝説を、筆者も語り継いでいく決心を固めた。

そうこうしていると、串が続々と到着。この日、だらだらと3時間超いた中でほとんどの串を食べたので、何がどんな順番が覚えていないが、最初はオーソドックス系だったはず。いろいろ食った中で、特にうまかったのは・・・忘れた。レバーだかつくねだかが確か、黄身と食パンと一緒に提供されて、余った黄身に食パンをつける「フレンチトースト」はうまかったなあ。変わり種の、野菜巻きなども当然にうまい。ポーションはそう大きくないが、それがゆえに美しい。何か串も普通のより細いスタイリッシュなもののように感じる。

●あの「権藤」も来ていた

その後も注文をじゃんじゃん重ねる。自席から焼き台で焼く姿は見えないが、時折大将が手を叩いている。その音も心地良い。

他にも目当ての店はあったので、そこまで長っ尻になるつもりはなかったが、他に客も来ないし、とにかく居心地がよく、さらに焼き鳥なんてものは無限に食えるので、結局3時間超も居座った。その中で、いろいろ話した。

大将は食べ歩きが趣味らしく、中でも和食が好きだとか。食べ歩きって、クレープとかそういうもんのイメージが強いので、和食ハシゴってのは意外な食べ歩き方である。

あとは野球のこと。大将のスマホが赤のiPhoneで、よっぽどこだわりがないとわざわざ赤なんか選ぶまい。それこそ、筆者のようなカープファンとかでない限り。一縷の望みをかけて野球の話を振ったところ、意外にも近鉄ファンだという。中日でもなく巨人でもなく、近鉄。珍しい。

入り口のところに権藤のテレホンカードがあったのでそれを聞くと、何と本人が店に来たことがあるらしい。何でもそのときに置いていったもので「ファンが来たらあげて」と言い残したそうな。というかわざわざ自分のテレホンカード持ち歩いてるのか、権藤よ。

●雨串権藤雨ホテル

結句、食べ物は串ほぼ全メニューにとりかわポン酢、むねたたき。酒は生ビールに白州ハイボール、赤兎馬ロックに菊正宗としこたま飲み食いした。焼酎を飲むつもりはなかったが、大将が芋焼酎好きだというのでそれにあやかって2杯ほど。

最後の締めは、おにぎりをお任せで。選ばれたのは、明太子。菊正宗をちびちび合わせて、お会計。一つたりとも無駄ヅモがない神ヅモの連続で、最終的には無事にトリプル役満完成。雨三屋に弾かれて、むしろ良かった。

次、甲府にいつ来るかはわからんが、必ずの再訪を誓って退店。権藤に見送られ、雨の甲府をホテルまで歩いた。

余談:串丸二丁目の角周辺の寄ったスポット

葡萄屋kofu(甲府駅北口)

甲府駅北口の「甲州夢小路」という施設にある店。バターサンドを売っており、ラムレーズンや紅茶サンドが絶品

清月(セレオ甲府)

イタリアンロールなるロールケーキがうまい

グルメマルシェ(セレオ甲府)

信玄餅の桔梗屋が展開しているらしい惣菜店。おにぎりが1個200円で、具の質を考えると安い。特急道中のおともにどうぞ。

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