見出し画像

大晦日108句チャレンジ2022-2023

パンツ穿く数え日の窓しんしんと

鰐の歯に隙間があつて山眠る

雪うさぎ翳なき肉を愛しけり

指で描く絵の泣きやすく冬の窓

マインクラフト寒し愚行権重たし

賀状書くスポンジ状の国ぢゆうへ

風呂桶の音抜けてゆき冬の山

鳥鳴いて家より墓のあたたかさ

フェチズムが脱色されてゐるティッシュ

着膨れてハンドル軽き真昼かな

和菓子屋のあかるく閉ぢぬ木守柿

注連飾る始め終はりに太き指

寒晴に呼ばれブロック遊び果つ

地球儀はひなた洟さらさらと

落葉踏む無数の黒き妣をまたぎ

いづれほどく寒紅みぎは歩きつつ

文机に眼鏡の休む雪曇

しもばしら枕の言ひ分を思ひ

枯草に日の傾ける匂ひかな

茶柱の名残の空を浮くごとく

古日記踏まれた靴を見るやうに

冬山は陽の色 日没が近い

ポインセチア足に深爪なかりけり

歓声を逃げてトイレの息白し

ぜんぶ黒わたしと冬のお父さん

座布団のへこみが冬のお父さん

冬のお父さん生肉は喰ふなよ

絵を描いてとせがまれ冬のお父さん

冬のお父さん髪に触れるのすら拒まれ

冬のお父さん人狼の始まつて去る

シャッターチャンス逃して冬のお父さん

冬のお父さん時にはむづかつて

雪だるま作らう冬のお父さん

詰られて泣かれて冬のお父さん

冬のお父さん三つ編みはできない

鉛筆はひさびさ冬のお父さん

独白はゆるされ冬のお父さん

壜開ける音なら冬のお父さん

冬のお父さんまさかアダムだつたとは

年越の祓耳からさみしくなる

同称十念つめたき音程より

台布巾慌てて絞る寒の卓

冬夜道とほくにクリスタルキング

油揚の沁みて饂飩は絵のごとく

あゝ地獄指紋のやうに根深汁

晴れてゐて水谷豊悴みぬ

冬銀河ラヂヲは砂を零すやに

温水で手を洗ふてふ罪がある

悴むや尻のやうなるメロンパン

碁笥撫でて寒さを嗤ふ長野かな

正直なハム噛み終へて冬眠す

蛇口まで乾いて蜜柑欲しくなる

餅配る信濃の山のしろさかな

飾売る川飛び越へて飛び超へて

ちり紙は無彩の鈍器年惜しむ

年の湯にひとりの喧嘩浮かべをり

ひとり去るスリッパ苦し年の宿

歯ブラシがごめんと言つてゐる霜夜

セーターの伸びたら海ぢやなくけむり

年の夜うちの児ぢやない笑ひ声

年の夜うつらうつらと我儘す

パジャマめく衣裳紅白歌合戦

室咲を抜け郷ひろみ疾走す

芽キャベツを刺して汚い言葉呑む

木菟や汚い歌を喰つてきて

むささびは濁つた歌に知らんぷり

枯蔦のあらゆる投棄見てきたる

木守柿捥ぐ筋肉のわだかまり

くだらない髪で寒菊つつみをり

金属の衰へ匂ふ狐罠

君だけのくしやみを待ちて星あまた

冬木立こいつらの脚より確か

歌ひ手の死と見間違ふ枯芙蓉

命じれば裸木のことごとく濡れ

冬珊瑚昼より夜の醒めてゐて

白菜の尻に眠れる生殖期

湯冷めして透けた紙めく両の脚

湯気立てて忘れた肺の在りどころ

冬帽の舌はやさしい音を好み

約束を忘れて煮凝でゐます

ポインセチア午後眩しくて爛れてゐる

凍星やしんしんと人おもふなり

冬の鳶ゆつくり枯れてゆく町を

遠火事にシャンプーしばし交錯す

虎落笛お伽話の裏を取り

退廃や花枇杷抱いてほの甘く

釦取れて悴むときは心臓より

あめつちの補助線として雪吊は

甘噛みのほとり山茶花傷みをり

家族みたいに本を積み重ねて霜夜

煮凝を震はせルート246

寝返りや草津にやはらかき冬灯

棘抜けてをり凍鶴のまばたきに

遠吠えに傾いてをり冬夜空

年忘ぬくき掌には平和

かるがるしく好きとは言へず寒の月

毛布の森いつぱい笑ふけだものたち

花八手ながい真昼を瞑るなり

ながい昼の迷子あかるく蜜柑暮る

年の火の指から指へおめでたう

雪に疵ピアスみたいなイヤリング

山眠る外階段のあどけなく

焼き蜜柑灰になるまで笑つてゐる

年の火を眺む誰にも愛されず

手袋の裡に湖あるしづけさよ 

夜の奥へ熾ひらかれて除夜詣

熱燗や火に照らされた横貌と

去年今年椀の澱まで飲み干せり 

✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎

#大晦日108句チャレンジ 、こんな楽しげなハッシュタグをTwitterで見つけたのは、大晦日の朝9時半頃。
衝動的に参加したけど、結局100句を少し過ぎたあたりで年が変わってしまった。
大晦日、やっぱりやることが多い…(言い訳)。
まるっきり去年今年になってしまったわけだが、これも万事ドタバタの私らしいのかもしれない。

皆さまの2023年に、幸多からんことを。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?