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楠本奇蹄
2024年5月20日 23:08
副都心線の雑司が谷駅から階段を上がり、地上の光が見えたとたん、ひんやりとした空気に包まれた。リュックの中の上着を取り出そうかと逡巡するうちに、路上の気温はあたたかさを取り戻した。今の冷気はなんだったのだろうか。ともあれ、まずは鬼子母神から雑司が谷散歩を始めることにする。都電の踏切を渡り、欅の聳え立つ参道に足を踏み入れると、ひゅっと涼しい空気がぶつかる。さっきの冷気とは違う。周りの市街化に抗うよう