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北崎朱音
2022年7月21日 21:29
高校生の頃、放課後。家に帰りたくなくて、近所の自動販売機のベンチで時間を潰したことがある。日が沈みそうな薄暗の中、私は一冊の本を開いて目を凝らして文章を追った。肌を撫でる涼風が気持ちいい、夏の日だった。 19歳をテーマにした5人の作家による短編作品集『19―ナインティーン―』を、読む。紅玉いづき先生の短編『2Bの黒髪』が載っているこの小説は、私の宝物のひとつだ。生きるのに疲れたときには、この