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だいすきで、だいきらいな、家族のこと


くりこさん(@kuritamaki)の文章はいつ読んでも読みやすい。エッセイでいて、小説のようでいて、すっと心に入り込む会話文がここちいい。読むたびに、こんな文章を書けるようになりたいなと思う。

家族との関係性。

お盆やお正月など、行事を通して繋がり、みえてくる糸のようなもの。私は、家族が大好きだ。定期的に札幌の実家へ帰ってくることを楽しみに生きている。

けれど、家族と過ごすしあわせや大切さが身に沁みたのは、一人暮らしをはじめてからだった。

中学~高校と、自分でいうのもなんだが、完璧な優等生だった。

成績もいい、親や先生のいうことは何でも聞く、先回りして動く、友達もそこそこいて上手くやっている。

そんな子どものことが、親にとっては、自慢だったのだと思う。

地元でそこそこ優秀な学校に入学した、自慢の娘。それが、大して有名ではない私立大学にしか引っかからないくらいの成績にまで落ち込んだ瞬間に、何かが変わってしまった。

私が変えて、私が壊したのだ。

逃げるように実家を出て、一人暮らしを始めた。

今では笑い話にできるけれど、当時の心中は決して穏やかではなかった。落ちこぼれた私、まともなところに就職できるかもわからない私。自慢の娘になりきれなかった私。

家族と離れるのは寂しかったけれど、反面、心地よくもあった。

もう、無理して自分を良く見せなくてもいいと思ったからだ。

良い高校や大学に入るために、毎日死にものぐるいで勉強して、学校が終わった後はまっすぐ塾に向かい、四六時中机に向かっていた。

そんな生活が苦痛でしかなくなって、ある日、勇気をもって伝えた。

「塾を辞めたいんだけど」

反対はされなかった。それでも、影でそっとつぶやかれた「ちくしょう」という言葉が忘れられなかった。「もう今月分払っちゃったのに」という声も聞こえてしまった。

私という存在そのものを愛してくれているとは思う。信じている。昔から、いままで、そしてこれからも。

それでも、一度刺さったものはなかなか、抜けない。

だいすきで、だいきらいな、家族のこと。

近づいたり、離れたりしながらこれからも、ともに生きていく。


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