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私は節制ができない

なにごとも「適度」が良い。そんなふうに言われることが多くないだろうか。ほどほどが一番、結局のところ普通が一番良い、そんなふうに。私のまわりだけだろうか。

たとえばお酒。もちろん飲み過ぎは良くない。酔っ払って足元がフラフラするし、頭もフワフワして何も考えられなくなるし、口元も呂律がまわらなくなって何を言ってるか意味不明になる。陽気になる場合もあれば、ひたすら泣くパターンもあり、節操がない。お酒の失敗は20代のうちに済ませておけ、とよく聞くが、まさにそのとおりだと思う。

タバコやギャンブルなども、同じカテゴリに分けられるだろう。「適度」なら人の嗜みとして、ある程度は通っても良い道かもしれないが、度を過ぎると人にも迷惑をかけるし、健康を損なうおそれもある。自分はどれだけお酒が飲める身体なのか、タバコやギャンブルを嗜むなら、どれくらいの範囲におさめておくべきなのか。

20代は、勉強もしなければいけないし、会社に入って仕事もしなければいけない。それと並行して、「人としての尊厳が保たれる最低限ボーダー」みたいなものも見極めていかなければならないから、なかなか忙しい。

このテーマで私がピックアップしたいのは、そう、「お金」のことである。

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お金に関して、私は節制ができない。ほどよく、これくらいにしておこう、といったちょうど良いラインが読めない

こう書いてしまうと、常日頃からブランドバッグや靴を買い漁り、毎晩のように飲み歩き、“ない”金を“ある”風に見せて所構わず奢りまくり、すでに破産していてクレジットカードは使えず、日々もやしだけ食べて生きている……みたいな人間を想像するかもしれない。正直に言うと、決してそんなことはない。

確かにフリーライターを始めて今年で5年め(!)、月によって収入に幅はありまくり、文字通りのもやし生活をしなければならない時期も、たまにはある。しかし、思い立ったらスタバやルノアールに行って1000円近くするドリンクを飲んだり、スーパーに行ったら鶏肉よりも牛肉を買ったりするくらいの懐の余裕がある時期もある。

言ってしまえば、このメリハリ? 振り幅? みたいなものが良くないのだ。先月はもやし、今月は牛肉、みたいなわかりやすい差が生まれてしまうのはなぜなのか。そう! 牛肉を買えるくらいの余裕がある時期に、少し、ほんのちょ〜〜〜っとだけ節制しておけば、もやし生活からは脱出できる。グラフの高低を平らに均すイメージだ。

頭ではわかっている。「あ〜、ここで調子に乗って牛肉買っちゃったら、また来月、もやしかもな……」ってところまでは、私でも思い至る。普通なら、ここで鶏肉にしておくのが無難だ。それが、身の丈に合った生活というもの。そして、その理性を働かせる肝となるのが、身に染みついた節制の意識なのである。

その節制が、私にはできない。

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前述したように、スタバに行けばフラペチーノ+フードを頼むのは日常茶飯事で、ルノアールに行けば約900円するアイスココアにプリンやサンドイッチをつける。「お腹がいっぱいだからドリンクだけにしておこう」とか「入金日前だからちょっと控えておこう」のような考えには至らない。そもそも節制が身についていたら外食はしない。

スーパーに行って高い肉や野菜を買うのも、飲み会や友達との食事でやたらと奢るのも、何かにつけプレゼントを贈るのも、同じような思考回路と行動基準からなる。いまこの瞬間の懐事情を省みて、支払う金額を調整する、といったことが、壊滅的にできない

「それは北村がお金を持っているからでは?」と、読んでくださっている方は思うだろう。そんなことはない。あまりおおっぴらには書けないが、カードの引き落としが間に合わずに2回止められたことがある。服を買ったり友達に化粧品をプレゼントしすぎて、借金もした(現在も返済中である)。家族や友達にもジャンジャン使っているが、自分に対しても分け隔てなく使いまくっている。よく「お金は使うだけ巡り巡って戻ってくる」と聞くが、時と場合によると思う。

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普通に生きていたら、収支のバランスくらい自然と取れるようになるのだろう。借金してまで贈り物をしたり会食に行ったりするのは、決してマジョリティ側の行動ではないのだと、30歳を超えてから初めて知った。どうりで貯金がないわけだ。

私はこれまで、料理や掃除がまともにできない自分について書いてきた。

これらは、どちらかというと、「料理も掃除もできませんけど、でも、それでもいいじゃん!」と360度まわって自己を正当化してしまう文章だった。

しかし、節制に関してはそうはいかない。節制は、できたほうがいい。お金に糸目をつけず、人のために使う自分に対して悦に入る瞬間もある。けれど、お金に糸目をつけなくていいのは、それくらい稼いでいる人間だけだ。身の丈に合った金銭感覚を身につけなければ、いずれ懐も心身の健康も破壊する……。

この問題に対し、どのように向き合えばいいのか。「なぜ?」を繰り返していくと、根本には自分自身の「人に対して良い格好をしたい」浅はかで粗野な性質があることがわかる。これをどうにかしないことには、寒い懐事情をひた隠しにしながら、贈り物をしたり奢ったりする自分から抜け出せない。

かといって、節制を身につけるために節約術を学ぶよりも、いまより稼げる方法を習得したほうがいいのでは? と、元も子もないことを考えてしまう自分もいる。財布の紐を締めるよりも、入ってくる分を増やす道のほうが簡単では? ……なんて、そんなことを考えているから、いつまで経っても貯金がない。

ああ、1000万円でいいから、欲しい。


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