見出し画像

足の爪を真っ黒にそめた

ネイルサロンへ行って、お姉さんに足の爪を綺麗にしてもらう。いつもいつも、わたしは何色にしてもらうか見本を眺めながら迷うのだ。うんうん唸りながら悩む。しまいにはお姉さんに「何色がいいと思います?」なんて訊いて困らせながら、たっぷりと時間をかけて決めている。

今回は、なんと真っ黒にした。

いつも目につく手の爪だと冒険はしづらいけれど、足の爪なら目に触れる機会が限られているので大胆になれる。前も真っ赤にしたり、真っ青にしたりしていた。派手な原色はわたしには似合わないのだけれど、なぜか、足の爪ならしっくりと収まってくれる気がしている。

足の爪を真っ黒にそめた。わたしの足の爪はいま、真っ黒。真っ黒なんだ。珍しいからはやく誰かにみてほしい。この小さな冒険を。

心の中にあるちいさな暴虐性を、少しづつ形を変容させながら表出させる。

キラキラのアイシャドウをつけてみたり。似合わないスカートを身につけてみたり。普段は言わないようなセリフを口にしてみたり。爪を、真っ黒に、そめてみたり。

そんなこと?

人からはそう思われてしまうかもしれない。そう、そんな小さくて些細なことだ。アイシャドウの色を変えて、いつもとは違う服を着て、キャラじゃないことをほざいて、攻撃的な爪の色にして。他の誰かにとってはなんでもないことでも、わたしにとっては心の冒険だ。少しでもいいからレベルを上げたくて仕方がないのだ。

突然ですが、わたしの半分はウソです。

思ってもいないことを平気でいいます。喜んでくれるのだとしたら、笑顔になってくれるのだとしたら、わたしを必要としてくれるのだとしたら。本心ではないことを言ったりやったり、すぐにします。それが人としていけないことだとわかってはいても、破滅に向かう道なのだとしても。

それを象徴するわたしの黒い爪だとおもってください。もうわたしには、こうすることしかできないかもしれないので。


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。サポートいただけた分は、おうちで飲むココアかピルクルを買うのに使います。