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一生叶わない夢に絶望するのをやめた



ちびっこを真正面から泣かしてまわるようなことを言うけれど、だいたいの夢は叶わない。「夢は信じれば叶う」「口にし続けていれば叶う」とフィクションの世界では毎日のように、たまに現実でも聞くけれど、それには大抵、裏がある。


「宇宙飛行士になる夢は(小さい頃からそのことだけを考えて、なるためにはどうしたらいいかを具体的に考えて、堅実で小さな努力を日々積み重ね、運よく宇宙飛行士になるための学力や体力も備わっていたら)叶う」

「ベストセラー作家になる夢は(24時間365日、物語のことだけを考えて一日も欠かさず書き続け、賞に応募し、相性の良い編集者と出会い……、もしくはSNSにアップしていた小説が運よくバズって出版→何十万部も売れるという僥倖にみまわれたら)叶う」

裏に隠れている事情は、おおよそ、こんな感じじゃないだろうか。

私の夢は、いつか大好きな役者さんに直接インタビューをすること。そして、自分の単著を出すこと。

この夢も、生きているうちに叶うかどうか、わからない。叶えられない可能性のほうが高い。「一生叶わないかもしれない夢」を抱えて、日々仕事をするのが、生きていくのが、イヤになってしまうときがあった。

でも、いちいち絶望するのをやめた。

「一生叶わない夢を抱えている」状態は、見ようによっては不幸だ。かわいそうだ。不憫すぎて涙が出てくる。

でも、もしかしたら「一生叶わない夢を抱えている」状態は、見る角度によっては幸せなのかもしれない。

いつか叶うそのときを夢みて、目の前の仕事をがんばろうと思うから。もしかしたら、この仕事が大きな仕事につながるかもしれない。今日知り合った人が、見たことのない世界へ連れていってくれるかもしれない。そんなふうに、ワクワクし続けていられるから。

少なくとも、続けてさえいれば、途中で辞めさえしなければ、会いたい人に会える可能性があるライターの仕事は、世界一夢にあふれた仕事である。

私は、自分の仕事にどこか引け目を感じていた。

ミーハーな下心で飛び込んだ世界だし、書いた記事に自信がないわけではないけれど。

ときおり「いったい誰が読んでくれているんだろう」と思いながら文章を書くのは、かくれんぼをしていたらいつの間にか自分以外の全員が帰ってしまっていたときの、ポッカリした寂しさに似ている。

いつか、見つけてくれると信じて隠れていたのに。

みんな、私を探してくれていると思っていたから、待っていたのに。

でも、夢にすがっている。青臭く、甘ったれた、子どもよりも子どもみたいな夢のおかげで仕事ができている。それでいいじゃないか、と思いながら、今日も、一行、一文字を書く。

一生叶わない夢に絶望するのを、もうやめたから。


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