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【月報2024年3月】元公僕が地域おこし始めてみた件

トップ写真は、能登半島地震チャリティの郷土芸能公演の時の臼澤鹿子踊です。

3月は、
【3.11の過ごし方】
【来年度に向けて】
【歯が痛い】
の内容でお送りします。


1.大切なものを探す旅

3月4日(月) 大槌町震災伝承講座 @おしゃっち

先日、大槌町主催の震災伝承講座を受講しました。

震災についての知識や事実を学ぶ場ではなく、そもそも誰に、なんとために震災伝承をしたいのかを自分の中で整理し、考える場でした。

タイトルこそ、震災伝承講座となっていますが、内容は自分自身への約束事として【相手】だれに、【目的】何のために、【内容】なにを、【方法】どうやってについて考える内容となっていました。

一応この講座内容を最初検討した側に人間でもあるので、なぜこういう内容になっているのかをお伝えしたいと思います。

特にこの4つの中で、①【相手】だれに、②【目的】何のために、について考える事が大切だと考えています。

こういう仕組みになった理由として、様々な災害などの伝承の関係者に関わる中で感じた点が元になっています。

自分は誰に何のために東日本大震災から学んだことを伝えたらいいのだろうか?と。

そこで自分が思ったことは、自分がイヤなことは津波そのもの以上に大切なものを失うことだと思いました。

ならそれを失わないようにするためには、どうすればいいのか?

まずは、自分にとって大切で守りたいものが無ければそういった気持ちにならないのではないかと感じました?

と言った経緯から、最初は恐ろしい震災そのもののことを考えるのではなく、その人にとって大切な人を具体的に頭の中に思い浮かべてもらうことが大切だと考えました。

社会の為、子どもの為、若い人の為と言った不特定多数の為の行動がとれる人はそういった人々に影響を及ぼせる立場や職業の人に限られてしまうと思います。

私自身は、教師でもなければ、多くの人に対して伝えることが出来る立場ではありません。

多くの人がそういう立場だと思います。

だからこそ、その人にとって一番大切な人を具体的に頭の中で思い浮かべてもらいたかったのです。

具体的な人が浮かび上がることで、実際に自分がその人のためにしたい行動についての動機付けにも繋がり、震災伝承に対する思いもより強くなるのではないかと考えたたからです。

そういう思いで、今回自分の内面と向き合おうために講座を受けました。

そうすると自分でも驚くような思いが出てきました。

大事な人を思い浮かべる際に、その中で本当に大事にできているのか?と思うことがありました。

そこでその人のために出来る事は、津波の怖さを教える事でも、逃げることの大切さを教える事でも、命の大切さでもなく、一言ごめんと謝ることだと思いました。

そうすることで、大切な人のままでいることが出来、その人のために震災から学んだ事を伝える意味と必要性が生まれてくると思いました。

大切なものを大切にできているからこそ、それを失いたくない、だからこそその人に対して大切な震災の経験を伝えることが出来る人になることが出来ると思います。

そしてその言葉は、どんな影響の強い人よりも、相手の心に伝わると思います。

震災の経験から伝えることを考える中で、自分にとって大切なものを今一度振り返る、そんな機会がこれからも続くことで、誰もが、災害から大切なものを失わないまちづくりに繋がればいいと思います。

2.他人の体験を通して堆積する体験

3月16日(土) 「大震災かまいしの伝承者」ステップアップ研修 @釜石市立中妻公民館

震災伝承の活動を通して、より多くの方々の経験や想い、考え、そして伝承活動の新たな可能性について学ぶために「大震災かまいしの伝承者」ステップアップ研修を受講しました。

最初に「原爆体験の伝承・継承の現場から」という講義がありました。

まず冒頭で、人為的、自然災害と異なるが、伝承・継承という意味では、被爆地の今の課題は60年後の釜石の課題になるかもしれないという話がありました。

例えば、ほとんどの人は「広島」「原爆」というワードがあれば「反核」「平和」という常套句が浮かび上がるようになってきており、それが メディアだけではく、行政でも唱えられ形骸化して行った結果、人を揺り動かす力を失っていくとのことでした。

例えば。高校生は反核反戦平和の作文を書いたらいいんでしょというオチになり、語っているのに語られるとはみなされない状況は、広島だからこその形骸化であり当たり前で、なぜ何のために継承するのか顧みられず、とりあえず継承という思考停止状態は非被爆者が自分の問題として受け止めて行けるのか?とのことでした。

確かに、自分自身も広島での出来事に対して日ごろから深い思いが無いにもかかわらず、暗記問題のように「反核」「平和」と言った言葉を使用することが出来ます。

ならば、将来、東日本大震災を経験した多くの方々の想いを知らなくとも、復興、避難などの言葉だけが当たり前のようにでてくる時代が来る可能性があると感じました。

そうならないためには。単なる情報伝達ではなく、生きられる伝承継承になることが必要とのことでした。

そこで、広島の高校生の取組が紹介されました。

被爆者の実際の体験を聞いて対話しながら、その時の様子を高校生が絵に描くと言った内容でした。

絵を描く過程で、描き手がよりディティールを細かく描くために質問してみたり、その過程で被爆者も当時の記憶を振り返り、より具体的な様子が思い浮かんだり、そういったやり取りは「絵を描く」といった行為のみではなく、その過程での対話的相互行為の積み重ねを「能動的受動性」という言葉での説明がありました。

その中で高校生のインタビューの文章を呼んで一つ感じたことがあります。

「なんてわかりにくい表現なんだ」と感じました。

そう感じて、さらに思いました。

元々ある「平和」「反核」と言った表現ではなく、体験者との対話の中で感じた一つの言葉では簡単には言い表せないような経験を表現することは難しいと。

要するに、今まで知っているつもりでいたことが、全然違っていたゆえにうまく表現できる言葉が見あたらないの言った風に感じました。

自分自身も、関西に住んでいたころは、東日本大震災について知ることは、社会的に分かりやすく凡庸化された部分しか知ることが出来ず、その範囲内で知っていたつもりでした。

しかし、実際に多くの人の話を聞く中で、震災についての話も一言で安易にまとめられるようなものではなく、あれもこれもそれもあり、どう表現していいのか分からないものに自分の中に変わっていきました。

ただ、そう感じることが出来る対話を繰り返すことが、非体験者への伝承に繋がると感じました。

そして、この手法が少しは有効だと感じた点があります。

自分自身も、被爆体験者の経験を絵を描く行為を通じて対話で引き出そうとする高校生の経験と描かれた絵を見ることを通じて、今まで聞いた原爆の話以上の体験や想いを知ることが出来ました。

そのことから、非体験者は対話を通じて体験者の心の鍵を開ける存在になるのではないかと思いました。

東日本大震災を経験した人の中にも、言えないだけで、いつか言える時が来る人がいるのかもしれないです。

そういった人が話せるようになった時の為にも、自分が聞き役として受け止めるという関わり方もできるのではないかと思いました。

最後に、この取り組みで描かれた絵は事実とは異なる可能性があり、伝言ゲームではなく、自分の中で考えたことを描くことで重さが増すとのことでした。

そして、生き様を継承しているから体験者と非体験者の関係が大切ということでした。

継承は事実のコピーでも伝言でもなく、対話でありコミュニケーションであり、多少絵が違ったとしても、伝えたいことが絵だからこそ描かれていることがあり、被爆者―非被爆者―非被爆者と連なって堆積することで濃密になるとのことでした。

そして、継承とは単なる伝達ではなく「承」の部分が大切とのことでした。

この話を聞いて、今までの伝承の取組と大きく違うと感じたことがあります。

基本的に伝える側の人を育てる取組は数多く行われていますが、受ける側の育成といったものはあまり見かけたことが無いような気がします。

この広島の取組でも、最初は、資料さえあれば絵を描けると考えていた高校生も被爆者との対話を通じて、様々な葛藤を乗り越えて、絵を描くという方法で表現することが出来ました。

そこに求められていたのは絵を描く技術ではなく、能動的にアクティブに探りながら感受し、表現すするという受け身で聞くだけではない能動的受動性というものが必要なのだと感じました。

自分自身もこの講義を聞いて感じたことを一方通行の媒体では、うまく言葉で表現することが出来ません。

そういう意味では、いつでも対話ができる場所、大槌に自分が住み続けることの意味もあるのかもしれません。

3.情報発信

3月4日(月) 地域おこし協力隊 テーマ別研修(戦略的情報発信) @オンライン

地域おこし協力隊 テーマ別研修(戦略的情報発信)にオンラインで参加しました。

主な内容が、「行動を促すための戦略的情報発信のポイント」ということで、今の仕事に関わらず、今後大槌で生きていく中で多様なメディアを通して、伝えたいことを伝えたり、行動に繋げてもらうために必要になってくる内容だと思って参加しました。

メディアと一言で言っても、公式サイトなどの自社メディア、新聞やテレビなどのマスメディア、口コミなどの共感メディア、マスメディアやSNSでの広告などの購入メディアなど用途や規模に応じて多様に分かれています。

そういったメディアの特徴(例:プッシュ型かプル型か)に応じて、前の傾聴、認知獲得、関心惹起、探索誘導、着地点整備と手順を踏んで、信頼の場で理解、共感の場で納得してもらうことで行動の準備に繋げてもらうまでの考え方について学ぶことがが出来ました。

そして、そこから行動促進に繋げるための要素としてのインセンティブと、ハードルを下げる仕組みに加えて弱みを見せることが重要ということでした。

その後に、参加者でグループワークを行いました。

遠く離れた他地域の地域おこし協力隊の方と、各々の課題と情報発信を活用した取り組みのアイデアを通した意見交換を行うことで、各隊員が各地域で感じている空気感を少し知ることが出来ました。

普段は、あまり接点のない他の地域の地域おこし協力隊の人たちの話を聞く事で、似たような立場の人が感じていること、考えていることを知る貴重な機会になりました。

今後も、自分の住む大槌の町についてもっとよく学びながらも、様々な地域で外部から移住してきた人たちから学ぶことで、自分がもっと大槌の人々の役に立てるようになるのではないかと思います。

4.デジタル化の前に

3月8日(金) デジタル技術普及セミナー @釜石・大槌地域産業育成センター

釜石・大槌地域産業育成センター主催の「第2回中小企業の現実的なデジタル化の進め方」セミナーに参加しました。

今後、大槌町内でもさらにデジタル化が進められていくと想定されますが、その際に、いかに事業者の従業院の方々の負担にならないようにできるかを学ぶために参加しました。

講座の中では、まず最初にデジタルは目的では無く手段であり、DXのうちXが大事であること、中小企業はデジタルに触れていないのことが多いので、まず触れる方が先であること、本質的にデジタルが必要なわけではないが、デジタルが無いと発想・実現できないこと、デジタルは最新ではなくてもいいことなどの話がありました。

要するに、最新の技術ではなくても、今まで行われてなかった新しやり方としてデジタルを導入することは効果的だが、業績に効果があるところから始めると、デジタルに抵抗があるので、変えても抵抗感が無いところから始める方がいいとのことでした。

そして、今こそIT活用を始めないといけない理由として、コロナ禍の影響でテレワークをきっかけにこれまでITに否定的だった人がITを使うことで良さを感じたり、クラウドのツールが数多くリリースされたことで、初期投資が必要なく、すぐ使い始められる一方で今度はいつでも止められることで、
コロナ前のように元に戻ろうとしているとのことでした。

また、人口減少による労働者人口減、働き方改革・働き方の変化などを乗り越えるためのマンパワーの確保が必要で、そのために採用を増やす、退職者絵を減らす工夫が必要となってきているとのことでした。

また、IT化するということは、その事業所が日々の従業員の不満に対してデジタルというツールを使って対応するという意識を持っているということにも繋がるとのことでした。

そしてITを導入するにあたって、まずは業務について従業員との合意形成の場を作り、ITについてではなく、業務に関しての疑問や改善点を広く聞く事が大切とのことでした。

この先は具体的な導入の手順になるので、詳細は省きますが、導入にあたるまでの関係者間での意志疎通が必要で、ただ単にデジタルツールを導入すればいいというわけではないということが理解できました。

この研修だけでは、デジタル化の入り口に触れただけに過ぎませんが、今後、自分自身が仕事で大槌の方々のためにお役に立てるためにも今後もっと学んでいきたい領域の一つだと感じました。

5.3月11日の過ごし方

大槌に来てから、3回目の3月11日でした。

自分として、出来る事は少ない日ですが、大槌に住む人が少しで、大切なことに思いを馳せることが出来るようなお手伝いを今後も続けて行けたらと考えています。

当日は、安渡公民館で開催された311槌音メモリアルコンサートの写真撮影をしました。

朗読劇や、子どもオーケストラ、ジャズ等の音楽を聴きに、たくさんの人達が集まっていました。

昨年と同様の場を過ごすことで、3月11日は追悼だけではなく、今大槌にいる人達が落ち着いた時間を過ごす、そういう日だと感じました。

6.郷土芸能と大槌

3月は、郷土芸能を踊る、見る以外で関わる機会が多くありました。

臼澤鹿子踊に卒業研究のヒアリングや大槌まつりに参加していた岩手県立大学の大学生の卒業論文の発表を聞いたり、大槌高校生がマイプロジェクトで取り組んでいる大槌の郷土芸能を語る会に参加するなど、大槌の郷土芸能に関わる人たちの考えや想いに触れることが機会がありました。

かつては存続について考える必要もなかった大槌の郷土芸能ですが、存続が危ぶまれる状況になりつつあります。

そんな状況下に大槌にいる若い世代にとっても、そこに偶然居合わせた自分にとっても、これから考えて存続に向けて出来る事をやっていきたいと思いました。

7.今月の大槌の郷土芸能

3月は、臼澤鹿子踊での演舞はありませんでしたが、ホテルはまぎくでの郷土芸能冬の舞や、おおつちアニメフェスタなどで、郷土芸能を見る機会がありました。

大槌虎舞協議会(城山虎舞と陸中弁天虎舞)

大槌の町では、定期的に郷土芸能を見る機会がある。

上亰鹿子踊

それがずっと続いて行けば良いと思いました。

松の下大神楽

8.親知らず抜きました!!!

人生で初めて親知らずを抜きました。

抜く前は痛くてたまらなかったですが、抜くのは一瞬でした。

9.おわりに

あっとという間に大槌に来て3年が経ちました。

コロナ禍の最中に大槌に来たので、最初の一年は、仕事以外で大槌の方々と接する機会もなかなかありませんでした。

しかし、2年目からは仕事以外でも郷土芸能で大槌まつりに参加したり、飲みに行ったり、イベントに参加したり様々な場面で大槌の皆さんと共に過ごす時間が増えていきました。

今思えば、地域おこし協力隊って、スポーツの外国人選手枠のような存在に似ていると感じるようになりました。

そう考えると、元プロ野球選手のラミレスのようなそのまま残り続ける存在は希少だという気もします。

一方でラミレスの日本での姿勢はとても参考になると思うので、その姿勢を忘れずにこれからも大槌で頑張っていきたいと思います。

4月からもよろしくお願いします。

大槌町地域おこし協力隊

北浦 知幸(きたうら ともゆき)

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