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文章読解問題を作ってみた。

私にはちょっとした夢がある。

いつか自分のエッセイが、文章読解問題として出題されることである。でももし仮にその夢がかなってしまった場合、問題を全く解けなかった受験生から「このキッチンタイマーとかいうやつは後世一生許すことはない」と呪われ、noteやTwitterが大荒れに荒れてしまうかもしれない。そんな嵐のようなコメントを受けてしまったら私は夜な夜な布団をかぶり「もう二度と文章なんか書くもんか」と震えて寝込んでしまう。あのセンター試験とかいうやつでもムーミンやリカちゃんが受験生を震え上がらせたといわれる昨今、運命を左右する課題の作者が無名なエッセイストであろうものなら、即座に受験生から石を投げつけられる対象になりかねないわけである。

なので、自分で作ってみることにした。これなら、少なくとも運命を左右される受験生はいないので恨みを買うことはないだろう。早速自分のエッセイの中から、一つエッセイを選び出して問題文を作ってみた。

第一作目がこれだ。

実際やってみると、見た目だけは結構それっぽいものができた。

恋人の話を読解問題にしている。作ってみて思ったのは、「作者が感じていることを抜き出しなさい」みたいな問題を作りたかったが、私は全然感じていることを書いていないんだなということであった。例えば「実況をしていた。とありますが、作者は何について実況をしていたのですか」というような状況を説明するような文章もあまりない。そもそもこのエッセイを通して「登場人物が今どこにいるのか」がさっぱりわからない。自分を俯瞰してみているような気持ちで書いていたのだが、そのせいか心の中にあるぼんやりした四次元空間の中で、突如現れる餅や野菜をむさぼっている自分と、その動作だけが保存された動画ライブラリーから切り抜かれて引き出されたような具合で書かれている。なので、問題として成立させにくい。もうちょっと説明を足してほしい。客観的に「場所」「いつの話か」を書いてもらったうえで、説明があって初めてようやく問題として出せるようになる。

振り返っている今でこそそんなことを思うが、この時は見た目が意外と文章問題っぽくなったことに対して感動していたたので、そんなことを気にしていなかった。素人としては「文章を枠で囲むとそれっぽい」「次の文章を読んで、後の問に答えよ。がゴシック体だとそれっぽい」「問一って書くと途端に問題っぽくなる」とか、そういうことばかり考えていた。実際解いてみると手間のわりに、達成感がないのである。

しかし、できてみるとなんだか嬉しい。そんな嬉しさだけを原動力にして作った第二回がこれだ。

今回も説明文が少ないため読解問題にしにくかった。第一問の回答は「グレーのベレー帽」であるが、客観的に「これ」と示すことができる場所が大変少ない。特に惜しかったのは

最近恋人がおしゃれになっている気がする。半年に一回くらい、季節が変わる時を一瞬逃すともう服を買わなくなる私とは対照的に、恋人はいろんな服を着こなしている。
「それを伝えたいとき」、どう言えばいいのかよく分からず、とりあえず口から出た言葉がカビである。

今引用部分においてカッコで括った「それを伝えたいとき」である。この文章では「それ」とは何ですか? という問題が作れそうだったがこの文章には「それ」に当たる言葉が曖昧である。くそぉ! 頑張れ私! もう一声! 一応「最近恋人がおしゃれになっている気がする」を答えとしてもよさそうだがそのあとに「いろんな服を着こなしている」という言葉も出てくるため、伝えたいことが「おしゃれになっていること」なのか「いろんな服を着こなしていること」なのかわからない。

せめて後の文章にその点に対する補足があれば問題になったかもしれない。例えば「新しい服を着ていることに気が付く」とか「とても似合っている」とか、「着こなし」や「おしゃれ」の関わる文章を添えてくれれば『「それ」とは何ですか?』という問題が作れたのに……頼むよ私! 文章はわかりやすくしてくれ! 特に指示語は何を指すのか明確にしてくれ!

などと思いながら、問題を作った。そこまで注意していたにもかかわらず、二問目の問題は、回答が複数存在する。なので、正解かどうかの判別が極めて困難だろう。ここは、「私」が悪いから、というようなことが書ければ大体正解という非常に甘い判定となっている。これなら仮に人生を左右するテストに出題されたとしても私のTwitterに並ぶ言葉は「楽勝でした!」とか「現国は絶対いけた」とかそういう文言になる可能性は高まったことだろう。

以上が、現在作成した文章読解問題である。文章読解問題になりたいという夢はひとまず叶ったが、私の文章は問題が作りにくいということが分かった。このままでは受験生は問題の不備によって頭を悩ませることになるので、正統派な問題で受験生を適度に崖っぷちに立たせることができるように頑張りたい。

今回、自分の文章を文章読解問題を作成するにあたって、制作方法はさっぱりわからなかったのでGoogle先生に頼りながらいろいろと文献を参考にした。その割には「とりあえず作りました」というような状態のものが出来上がったので、堂々と「この文献を参考にしました」と胸を張るのはちょっとおこがましくも感じる。しかし、自分の文章を文章読解問題にしてみたい方はぜひ、ご一読いただけると文章読解問題を作る人のこだわりや気配りが分かるであろう。

というわけで今回参考にした文献をリストアップする。

一応ちゃんとテキストも読んでいる。自分で作るという視点で問題文を読んでみると「この問題エッセイで使うのすげぇ大変だな」などと思いながらひとまず「これならいける」という問題の形式で作った。

次の夢は、問題数を6問ぶんくらいしっかり作ったものを完成させたうえで、受験生がうんと悩んでちゃんと解ける問題を作ることである。

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