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Twitter「男性向けラブコメ主人公が好意を持たれる理由を描かれない」について。意外なところにヒントがあった!【第1回 #きたりエッセイ】
はじめまして。
会社員の傍らWEB小説を執筆している「来 根来」と申します。
さて。
本記事を執筆している2021年9月22日より遡ること数日、Twitterの創作者界隈で話題に上ったトピックがあります。
それが
「男性向けラブコメ作品の主人公は様々な女性キャラクターから好意を持たれるが、その理由はほとんど描かれず、突然好きになったように見える」
といったような内容(意訳)。
さらには、作家自身の性別によっても違うとの論も盛り上がってるように見えました。
ちなみに、私自身ラブコメ作品をそこまで読まないので、この情報の真偽自体はわかりません。なので、そこはあえて言及しません。
では、これが仮に「正」としたときに、何故そんなことが起きるのでしょうか?
私も、Twitterで発言こそしませんでしたが「何故だろう?」と書き手目線で色々考えてました。
そして――その「ヒント」を意外なところで発見するに至りました!
今回は、この発見を是非皆さんに共有したいと思いますので、ぜひ最後までお付き合いいただければ幸いです。
【1】そもそもなぜトピックとして盛り上がったか?
まず、この話題が「なぜ」盛り上がったかを分解してみます。
(A)理由が描かれないことについて、共感性が高い=所謂「あるあるネタ」
(B)理由が描かれないことに違和感がある人が多い
(C)単純に多くの人が語りやすい話題だから
タイムラインを眺めて大雑把に捉えると、こんな感じでしょうか。
(A)のあるあるネタとはつまり、この現象が正しそうと多くの人に受け入れられているということ。
「男性は結果を重視し、女性は過程を重視する」
「恋愛において男性は見た目や要素を重視し、女性は感情を重視する」
このあたりが世間でもよく言われることだと思いますが、一部は正しく、そして一部は間違っている気もします。
特に後者は、性差というより個人差の方が大きいのではないかと思います。
次に、(B)の「違和感」をもう少し噛み砕くと――
言外に
「それは不自然である」
「作品として面白くない」
「小説として正しくない」
といったような内容を匂わせていそうです。
……後ろの2つは個人の感想が強そうなので、今回は無視しますね。
ではさらに掘り下げて「なぜ」不自然だと思うのでしょうか?
(1)理由がないとキャラクターに共感できないから。
(2)男性がラブコメに求めるのはシチュエーションや要素だから。
(3)好意を持つには理由があって当然だから。
(1)(2)は「作品づくりのテクニック」「ターゲット・読者への配慮」に関わるところ。
最後の項目は漠然としてますが、意外と多いのではないかと感じました。
――しかし、本当に「当然」なんでしょうか?
「恋は落ちるもの」「気が付いたら好きになっていた」
そんな言葉が絡む恋愛感情。当人でも良く分かっていないことって、よくあるんじゃないでしょうか?
……などと、男性である私は思ったりします。
それを読者に対して不親切と言ってしまえばそれまでですが、一方現実に即している部分もあるのではないか、とも感じます。
もしかしたら、このトピックへの受け止め方の時点でも男女差があるのかもしれませんね。
【2】「ヒント」との出逢い
ここからが、今回の本題になります。
世に出す小説とは、基本的に読者があって成り立つもの。
なので、対象読者を定めてそこに向けた表現をするのは、正しい努力だと思います。
しかし、書き手側も人間。
個人の考え方によって文章が構想され、編集され、最終的に一つの物語となる。
これはつまり――
作者が「不要と判断したこと」「思い至らなかったこと」は、文章に表現されない
ということでもあるのです。
……え? 何を当然なことを言ってるんだ、と思いましたか?
でも、今回のトピックとも大きく関連していそうなんです。
さて、上記のことを今回のトピックに置き換えてみると
男性向けラブコメでは、好意を持つ「理由が不要と判断された」
男性向けラブコメでは、好意を持つ「理由を書くことに思い至らなかった」
といった感じでしょうか。
前者は、対象読者層を考えて意識的に排除した感じ。
作家側は「こうすればウケるだろう」と物語を作ることも多いので、結構理解できます。
しかし後者は、そもそも書くつもりが無かったという感じになりますよね。
一見すると作者の配慮不足、あるいは能力不足とも見えてしまいそうな表現ですが、実はそうでもなさそうなのです。
その「ヒント」を見つけたのは、意外なところ。
それは――小学校2年生の作文集でした。
【3】小学生の作文で見つけた男女差
この話題とは全く関係なく、本当にたまたま機会があって、妻の小学2年生時の作文集を読むことになりました。
八歳ってこんなにしっかり作文書けるんだなぁ……などと感心しながら、20編ほどの作文に目を通していきます。
小学二年生ならではの着眼点で書かれた名作もちらほらあり、これが読み物として普通に興味深い。
しかし、読んでるうちに気が付きました。
「男児と女児で書き方が全然違うな」と。
ここで、実際に文章例を見比べてみましょう。
※なお、原文を載せることは流石に憚られるので、概要と特徴だけ抜き出して書きます。
<男児の作文例>
①おとうさんは、○○で■■するしごとをしている。
②「おとうさんはかちょうになったよ。」「へー。」
あるひ、かえってきたおとうさんが、ぼくにいった。
かちょうは、すこしだけえらいらしい。
③かちょうになったおとうさんは、よなかにかえってくる。
④まいにちいそがしそうで、いつもたいへんだといっている。
⑤でも、やすみはいつもあそんでくれて、うれしい。
<女児の作文例>
①わたしには、いもうとと、おとうとがいて、いつもケンカをする。
②そしていつも、おかあさんにおこられている。
「こら!やめなさい!」
おとうとは、ちいさいから、いもうとがおこられます。
③おかあさんは、よくおこるけど、でもすごくやさしい。
④こどもが3にんもいるのは、すごくたいへんそうだ。
⑤でも、りょうりから「だいすき」がつたわってくるから
わたしも、おかあさんがだいすき!
どうでしょう? パッと見でも結構違うのが、分かりますでしょうか。
それぞれの特徴を、抜き出して書いてみましょう。
男児の文章
・状況や事実を、順番に列挙する。
・聞いた会話はただの「情報」。背景は考えない。
・会話や他人の行動に対するリアクションを書かない。
・相手の考えや心情は考察せず、実際に言われたことのみを書く。
・感情は受け手である自分目線で述べる。
女児の文章
・状況を観察して、関係性も含めて書く。
・会話の理由を自分なりに考えて加える。
・会話や行動へのリアクションを、その描写の次に書く。
・他人の行動の理由を推察し、感想を述べる。
・感情は双方の関連性も含めて書く。
こうしてみると男児の作文は箇条書きのようで、確かに「情報」については分かりやすいですが、お父さんの会話や行動の理由は書かれていません。
ある意味、ビジネス向けのような文章にも見えます。
一方で女児の作文では、家族同士の関係性や行動・会話の理由を描写していることが良く分かります。
他者の行動をよく観察し慮る、社会性を重視した内容ですね。
――小学二年生ですよ?
もうこの時点から、伝える上で大事にするポイントがこんなにも違うのです。
なお、男児が作文から省いた理由については、「描写の必要がないと判断した」なのか「元々考え至っていなかった」のどちらかはわかりません。
私個人としては、両方少しずつあるのではないかと考えています。
「三つ子の魂百まで」との諺があるくらいですから、そりゃ作家が描写で大事にするポイントに性差がでるのも、当たり前のことなのかもしれません。
ちなみに、今回のトピックに関するツイートで
性差がでるのは、生物学的に正しい。
と言う方も、何人かいらっしゃいました。
私も一定正しい論だと思っていますが、このように「生きた情報」として実感したは初めてです。
ですから私としては、ものすごい発見だと感じた出来事となりました。
【4】さいごに
少々長くなりましたが、今回の発見。
皆さんはどう感じましたか?
以上をまとめます。
「男性向けラブコメ作品の主人公は様々な女性キャラクターから好意を持たれるが、その理由はほとんど描かれず、突然好きになったように見える」
これを正しいとしたときに、その原因には
描写上大事にするポイントが、男女間で違う傾向がある。
ということが根底にあるのだと、分かったかと思います。
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もちろん、全ての人が当てはまるわけではありません。
また、どちらの感じ方が正しいというわけでもありません。
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しかし、書き手として傾向に差があることを知っていれば。
自分の作品が「男女どちらに刺さるように伝えたいのか」を設定して書くときに、描写方法の心がけの参考になるのではないでしょうか?
ぜひ、皆様の創作活動の一助となれば、幸いです。
ちなみに私は、「たいあっぷ」というWEB小説サイトで
「ペンギンと人間のSF青春ラブ(?)コメ」を書いています。
読んでいただけたら嬉しいです。
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