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産後のケアに必要なこと

産後は「白線」と「仙腸関節」のケアがとても大事

妊娠により身体の中で著しく変化する部分は腹部と骨盤です。
胎児が成長するにつれ子宮は増大し、妊娠前と比べ大きさは約5倍、容量においては約500〜1000倍になると言われています。その子宮をおさめているのが腹部と骨盤だからです。
 まず、なぜ子宮が大きくなるとおなかも膨らんでいくのでしょうか?
筋肉や皮膚が伸びるから?それも間違いではありません。正確には、おなかの真ん中の奥に走る「白線」が広がるからです。白線は線維状で伸びやすい組織なので、子宮が大きくなってくるとたやすく広がり、おなかの真ん中が突き出してくるのです。その白線には腹筋群が停止していて、左右対にある腹横筋、内・外腹斜筋、腹直筋は全て白線で繋がりあっています。白線が広がれば、それら腹筋群はともに中心から離れ、傍に流れていってしまいます(「腹直筋離開」と表現されることもあります)。
そして出産後、おなかから赤ちゃんはいなくなり、それまでパンパンに張りつめたように広がった白線は、一気に伸びきったゴムのようにゆるゆるになります。特にいちばん深層にある天然のコルセットとも呼ばれる腹横筋が作用しにくくなり、おなかを凹ませられないので、産後もおなかが膨らんでいるように、むくんでいるように感じるのです。
白線のゆるみは放っておいても回復すると言われていますが、その期間は約2年。その間、腹筋群がうまく使えないとなると、体型も姿勢も大きく崩れ、症状も改善しにくいままです。また、白線がゆるんだままむやみに筋トレをしてもその努力は報われにくいのです。

そのゆるんだ白線をなるべく早く引き締めることが必要になります。半年以内には腹圧がしっかりと下げられる(お腹を凹ませられる)レベルまで回復できると、乳児が動き始めて、さらに大きくなってゆく、その後も身体的負担がかかりにくくなります。

次に骨盤です。支持骨格であり保護骨格である骨盤は、仙骨と寛骨で「仙腸関節」をつくり、それは靭帯によって強く固定されています。ただ、出産という一大事業は、筋肉や関節、靭帯などの組織をゆるませないことには成し遂げられません。そこでリラキシンというホルモンが作用し、体を出産に耐えうるようゆるませていくのです。そして分娩時、仙腸関節のゆるみはピークに達し、出産に至ります。
産後1か月ほど安静に過ごせると骨盤全体はある程度までは回復しますが、仙腸関節の固定強度は妊娠前と同じくらいには戻っていません。そのせいでしばらく骨盤のぐらつきや、恥骨の痛みを感じることもあります。

仙骨から離れようとする寛骨を正しい位置に近づけ、ゆるんだ仙腸関節を引き締め直す矯正が必要です。仙腸関節を正しい位置で引き締め直すことで、妊娠でゆるみ、出産で損傷した骨盤底筋群(尿や便をぎゅっと止める、膣に力を入れる筋肉です)の回復が促され、作用しやすくなります。

そして先述の白線に停止する最深層の腹横筋は、実は骨盤底筋とほぼ一体化しているので、白線が閉じ始めれば腹圧を凹ませるように高められるよになり、相乗して骨盤底筋の作用が強まり、産後だけでなく将来的な尿もれや性器脱の予防もできるのです。

もちろん、骨盤下口部、特に骨盤部でいちばん広がりやすい坐骨や、坐骨が広がることで横に張り出し前方へ変位する大転子の位置も矯正も大切です。しかし、巷の整体院のように目に見えて変位したその部分だけの矯正をいくらおこなっても、白線や仙腸関節のゆるみがそのままであれば、その効果は安定しないばかりか、不安定な部分に過度な刺激が加わり、症状を悪化させてしまうこともあるので、産後のデリケートな骨盤には、産後に特化した施術を受けることが大事です。

姿勢が悪い、呼吸が浅い、疲れやすい、
体重が落ちない、イライラしてしまう・・・
そんな産後にしないためには

妊娠中、大きいお腹を突き出すような姿勢をとっていたことにより、背骨のカーブが崩れ、スウェイバックと呼ばれる不良姿勢、いわゆる「猫背」になります。また、子宮底長が高くなることで横隔膜が押し上げられ、胸郭も横に広がり本来の形状が崩れます。そして産後は、抱っこや授乳などこれまでとは違う姿勢を取ることで、スウェイバックはますます進行し、広がった胸郭は、一気に下垂します。すると、背部や胸部の正常な動きが出にくくなり、呼吸の浅さや、疲れやすさ、代謝の悪さを引き起こしてしまいます。

加えて産後は、妊娠を維持するために多く分泌されていたエストロゲンなどの女性ホルモンが一気に減少し、セロトニン(いわゆる幸せホルモンです)の生成に影響を及ぼします。また、育児によって睡眠のリズムが乱れ、日内変動のあるホルモン(コルチゾルや成長ホルモンなど)や、自律神経のバランスも崩れやすくなります。よってイライラしたり、ストレスに弱く、ダメージが回復しにくく疲労しやすい身体になってしまうのです。

産後ケアには、背骨にある本来のS字カーブを矯正と、COPD(慢性閉塞性肺炎)のリハビリでおこなう呼吸法を取り入れ、胸郭の正常な動きを思い出させ、呼吸のしやすさを出していくことが必要です。さらに肩甲骨の位置や動きを整えると、肩こりなどの症状緩和や、白い血液と呼ばれる母乳の出やすさにもプラスに働きかけます。
また背骨や仙骨は自律神経と密接に関わっていますので、背面のこわばりを取り除き、仙骨の位置を整えることで、交感神経が優位になやすい産後の自律神経のバランスを整えていきます。

重心を戻し、
正しい歩行ができるようになると、
長きに渡る育児を元気に乗り切れます

妊娠、出産で骨盤全体が広がることで、重心が外側に変位します。さらに約20倍の重さになった子宮が下腹におさまることで、重心が下がります。産後、子宮の大きさは急速に戻りますが、重心の位置はなかなか元には戻りません。
そして身体を支えている、一番下にある関節は足首と足裏のアーチです。重心が外へいくことで足首が内返しになると、足裏のアーチをつぶして重心を戻そうとします。重心が下がることで骨盤は前傾し、前モモが張りやすくなり、歩き方が変わっていきます。さらに妊娠後期に入り坐骨が広がってくることで、股関節は横に追いやられ、やがて膝の向きが内側に向き、足首が外返しになり、膝下O脚やX脚が進行します。
そして産後は、骨盤下口部の広がりや仙腸関節の不安定さがあるので、歩行のたびに股関節周りの特に殿部の筋肉がうまく使えず、こわばりが強まっていきます。また、最近は陣痛促進剤を使用する分娩が増え、急激に骨盤を広げさせるため、産後1ヶ月経っても、歩行時の激痛が続く方もいます。

そこで、可動域を適正に戻す股関節矯正と、膝関節と脛腓関節、足関節を矯正し、足裏のアーチを持ち上げ、足指を動かしやすくすることが大切です。すると正しい位置に重心が戻り、歩行のたびに筋肉が正しく使えるようになります。特別なトレーニングをしなくても自然に筋力がつき始め、子どもが動き回るようになる頃には、それに対応できる体力や脚力がよみがえっています。嬉しいことに、正しく歩行できることで筋ポンプがしっかり働くため、下半身はむくみにくく張りにくくなり、脚全体が引き締まった印象になるというおまけもついてきます。

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