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微睡。


微睡みが好きだ。夢と現のあわいで脳みそふかふかな気分はご褒美のような至福の時間。日中はいろいろなことがあっていろいろな感情が疼いて納得できないことも多々あるけれど。その日の終いに微睡んでいると疼きは疼きのまま消えはしないが、遠くへ行ってくれる。疼きは「じゃ、またな。」とサラッと手を挙げていなくなり、その代わりに安寧が「ども、ども、安寧です。」とサラッとやって来る。そんな感じがするから私はなるだけ微睡みたい。

休みの日は特に微睡みたい。寝たいとも起きたいとも違う、微睡みたいでいっぱいになる。布団の中で一時間くらい微睡んでふかふかになった脳みそでゆったりと起き上がり、コーヒーを淹れて呑むとたまらなく至福だ。

ああ、生きている。

と、その瞬間はこんな薄情な私でさえ生を感じることができる。

昔、同僚から

「最近ハマっていることある?」

と訊かれたので、私は

「微睡むことかな。微睡むとごちゃごちゃがリセットされるような気がするんだよね。」

と伝えたら、その人は

「えー、つまんない。微睡むって怠け者がすることだよ。そんなことより恋しないと。」

と、言われたのでムムムとなった。

(心の声)
え?え?微睡むだけで怠け者?え?正気ですか?それより恋しないとって。恋はするものじゃなくて堕ちるものだから。知らんけど。

口には出さないが胸の奥で強くそう思った。私は、恋に恋焦がれ恋に泣く悲劇のヒロインになるよりも、ぼけーっと、ほげーっと、微睡んで脳みそふかふかになりたいのだ。私はそのとき、実際に見たことはないけれど、微笑んだようなとてもいい顔をしていると思う。もしも、人生の最期にこうして微睡み、微笑みながら逝けたならサイコーだな、と思う。

こうして、微睡みは毎日小さな小さな幸せとなりこの体内へ降り積もっている。

いつのまにか立冬を過ぎて急に冬っぽくなったから、これからもっと布団の中で微睡みたいと思う。





シャリシャリと冷えたこころはシャーベットまどろみ揺らすやさしい呪い

短歌










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