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真夜中に大豆田とわ子と三人の元夫


真夜中に目をつぶっても、なかなか眠れなかったので、カラダに従って寝るという行為をあきらめた。カラダの手首にスイッチがあって、OFFにすれば眠くなって、 ONにすれば目が覚めるように操作できれば、便利だなと思いながら起き上がった。透明な夜の底に、テレビの前にストンと座り、こうなれば、映画かドラマを観ようと思う。レコーダーの中を彷徨っていたら、なかなか決められなくて、それで、目を瞑ってみる。リモコンの↓ボタンを押しながら、ひとりで安定のドラムロールを口にする。「ドゥルルルルルルル。(結構リアル)」そして「ジャンッ」と言いながら、リモコンの決定ボタンを押すと、『大豆田とわ子と三人の元夫』だった。


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恋がしたい、恋がしたい。と、わたしは口癖のように呟いていたら、親戚のおばちゃんにこう言われた。


恋はするもんじゃなくて、落ちるもん。


それを聞いたらときに、頭にガツンと雷を食らったような感じがした。その言葉に脳みそのシナプス回路がビビビと反応して、あたふたしている感覚だった。この恋に落ちるという感覚は人に対してだけではない。たとえば、好きなテレビドラマに出会う瞬間は恋に落ちる瞬間に似ている。「あ、ズルい。」と、思っているときはすでに恋に落ちてしまった後だ、フォーリンラブ後だ。そして、どうやらわたしは今期のドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』に対して、恋に落ちてしまったようだ。


好きな人ができたら、友人に、どこが好きなの?とか、よく聞かれる。このドラマでたとえるならば、キャスティングが最高だし、コミカルなストーリー展開が最高だし、ナレーションが絶妙だし、映像がいい(エフェクトがなんとも言えない色味)。そしてこのドラマを擬人化すると、スポーツ万能で秀才で、背が高くてイケメンなのに、ちょっと翳りがある、という非の打ちどころの無い人物像だろう。わたしはどツボにハマっている、すでに二回観た。これからわたしの、どツボの中身を取り出して、七輪の網の上へ乗せて、それを炙っていきたいとおもう。


まず登場人物は、建設会社の社長を務める主人公、大豆田とわ子(松たか子さん)。彼女はバツ3で、一人目の元夫(松田龍平さん)との間には中学生の娘がいて、現在彼はレストランのオーナーをしている。二人目の元夫(角田晃弘さん)は、カメラマンで、三人目の元夫(岡田将生さん)は、弁護士で、とわ子の会社の顧問弁護士を務めている。


題名からしてドロドロした男女の愛憎劇がはじまりそうだなあと、思っていたわたしは拍子抜けした。そしてわたしの中にあるこころのヒダを擽ったものは、意外にも冒頭シーンだった。ジャージ姿で歩く大豆田とわ子の靴に小石が入って、靴を脱がずに足を振ってそれを取り出そうとする大豆田とわ子。この時点で、「あ、ズルい。」となり、わたしはこのドラマにフォーリンラブした。ありますよね、小石タイプなんだけど、足の横に挟まって「ワシはここにおるで。」とじんわり主張してくるやつ。面倒だからベンチへ腰掛けて靴を脱ぐまでの行為はしたくなくて、とりあえず、自然とどっかに行かないかなあと、足を小刻みに振る。それがドラマ第一回目の冒頭ですよ。ドラマや映画の冒頭ってとても大事だと思うのは、その一瞬で登場人物のキャラクターが決まってしまうから。それを主人公の靴へ入った小石を取るために、足を振らすという演出が、大豆田とわ子の性格をハッキリと伝えている。そして、サクサクと流れるように進むストーリーに加えて、ナレーションがいい。女優の伊藤沙莉さんのハスキーで独特な声色は、淡々と大豆田とわ子の心情を吐露していく。その少し無骨なナレーションが、ストーリーを邪魔することなく、非常に居心地が良いのだ。それに加えて、大豆田とわ子と三人の元夫たちの会話のテンポが凄まじくコミカルで、観ているこちらは自然と微笑んでしまう。その会話劇の最中に、さらりと溶け込むセットのインテリアもおしゃれだし、大豆田とわ子の衣装がMame Kurogouchiでステキだし、途中で東京事変の浮雲さん登場するし、湯船で【ロマンティックあげるよ】を熱唱するし、エンディング曲最高だし、わたしは軽いランナーズハイ&パニック状態になった。


そんな中でも大変驚いたのが、大豆田とわ子が、幸せを諦めていなくて、四度目の結婚もありかなと思っていること。三度で充分じゃない?とおもうけれど、恋はするものじゃなくて、落ちるものだから誰にも止められないわけで。さて、大豆田とわ子は誰と恋に落ちるのか、これから先の展開がすごく楽しみなドラマとなり、わたしは毎週火曜日のよる9時から1時間を大豆田とわ子に捧げようとおもう。













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