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おわりにーー未来を諦めてるというけれど

それなりに大人となり現実を知った私は、共感と賞賛と炎上が目まぐるしく変化していくタイムラインを見ては、少々余計なことが頭をよぎるようになっていました。女性差別反対と言ってるわりに自分の彼女のことはさんざん困らせてんだよなこの人とか、あのバズライターは原稿の締切もろくに守らないくせに態度もひどいから編集者のことは普通に泣かせてんじゃんとか、Twitterトレンドに真っ先に意見することに夢中で仕事は全然進めないから同僚に責任を押し付けてたけどあんたはそれでいいのか?とか。

そりゃ人間は裏表あるもんだから多少ダメなところがあってもしょうがないんだけど、とはいえやはりそういう人が生んだバズはどうも空虚で、その上すぐ隣にいる小さな声にはみな無関心なんだから、もうなんだかすべてを鼻で笑うぐらいじゃないとやっていけない気分になるのです。大きな声の隣で誰かが泣いてたとしてもそんなことはどうでもいいんじゃんって。

現実世界に馴染めず彷徨った果てでインターネットにたどり着いても、ここもそんなに変わらない。毎日洪水みたいに言葉が溢れて、でもどれも信用してはいけない気がして、結局自分が落ち着ける居場所なんてないのかもしれないと思う。鉛のような心を引きずる毎日のなかで、いつの間にかいろんなことを諦めかけていたような気がします。

でもなんだかんだ諦めが悪い私は、今このnoteをやっています。小さな声を拾うことで見えてくる光があるのではないかと思えてならないから。

「会社員のホンネ」では大企業や役所で働く皆さんのお話を聞かせていただきました。彼らの声はアルゴリズムだらけで視野が狭くなりがちな私たちに知らない世界を教えてくれます。

大きな問題は実はほんの些細なことから始まっているということ、ある場所ではダメだとされてきた人たちは実際は全然ダメなんかじゃなかったということ、“必要とされていない”という小さな孤独が本来持っていた能力すらも奪ってしまうこと、そして憧れが近くにいればなんだかんだ頑張れてしまうぐらいには単純でもいられるということ。

大企業の早期離職率は上がっているといわれています。職場環境は良くなっている一方で、若手社員のストレス実感は高まっているとのこと。その理由について、『ゆるい職場-若者の不安の知られざる理由』(古屋星斗)では“職場がゆるいためにキャリアへの不安を感じている若手が増えているから”と書かれています。

いつ何が起きるかわからない世の中で生きてるんだから、若いうちに何かしら経験を積んでおかなければと焦燥するのは当たり前だし、30歳になった途端に選択肢が減ることだけはなぜか知ってるから、何もできていないと漠とした不安を抱えてしまう気持ちもわかる。でも一方で、私は思ってしまいます。彼らは会社で自分の存在意義を実感できていたのだろうか、楽しい未来が待ってると思わせてくれる大人が周りにいたのだろうか。

本音というものはアンケートや専門家の話だけでは見えてこないことばかりです。本当は本や記事を読むよりも先に、固く閉ざされた彼らの心に目を配る必要があるのかもしれません。言葉の表面ではなくその奥にあるものを。

沈みかけてるこの国に不安を抱いても、目の前の幸せで無理やり蓋ができるならまだいい。でも、そんな刹那的な幸せすら掴めず必死で何十年後の将来なんて考えてる余裕もないという人がどれだけいることでしょう。仕事は目の前の幸せにも私たちの未来にも直結しています。誰かの一挙手一投足が何かを変えるかもしれない。

若い人は未来を諦めてるという。大人はこんな世の中なんだから若者がそうなってもしょうがないという。でも私は諦めずにいられる方法がまだあると思いたい。そのために私はこれからも若い人たちの小さな声を届けていくことでしょう。取材にご協力いただいた4名のみなさんありがとうございました。


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