見出し画像

米国D2Cブランドの神対応を体感した話

2年ほど前の話なるが、今でも自分の中で色あせていない体験があった。

知人の准教授にお声がけをいただいて、ある大学で特別講義をさせてもらったことがある。こういったアウトプットの機会をもらえることは、自分たちの考えや取り組みを改めて整理することができるので、とてもありがたい。
延べ150名ほどの学生に向けて、精いっぱい伝えた。少しでも、一人でも、次の行動のきっかけになれば幸甚だ。

さて、今回の感動体験というのはそこではなく、その際の、とあるアメリカの新興D2Cブランドとのやりとりの中で生まれた。

知人は授業で、SDGsを柱とした課題の設定、それに対するソリューションのアプローチなどを、まさにOJTで教鞭をとっている。ご存知のようにこのような取り組みは、日本は遅れ気味であり、世界に目を向ければ、モノづくりの現場において、当たり前のように活動が広げられている。

その中でも欧米で先進的な取り組みをしている、個人的にベンチマークしているメーカーをいくつか紹介しようと考えた。さらに、彼らがコンセプトやミッションを、サービスやプロダクトとして、どう表現しているかも比べてみたかった。

ありがたいことに講義の謝金をいただけるとのことだったので、有効活用しようと、海外の企業を中心に、いくつかの商品を買ってみることにした。中には生地サンプル=30€というところもあって、なかなか本気度が試される。冷やかし御免というわけだ。

画像8

米国発、新興D2Cブランドとは。

今回、紹介したいそのメーカーは、Fair Harbor(フェア・ハーバー)だ。

とある兄妹によって、14年、NYで立ち上げられ、ペットボトルを再生させて糸を紡ぎ、サーフィンショーツやスイムウェアを中心に製品化している。日本では、まだあまり知られていない。詳細は、ビジネスインサイダー、20年7月に翻訳された記事より。

2018年8月、NYを訪れた際、ワンワールド近くのBrookfield Placeでの期間限定のPop-up Shopをのぞいてみたが、大胆なディスプレーが目を引いた。写真は、すでに閉店時間後で、残念ながら、ヒアリングや購入などはできなかった。

画像1

画像2

きっかけはクレーム

できれば知られていないようなブランドがよいと思って、今回の機会に、学生にも手に取ってみてもらいたいと、適当な商品を選び、決済が完了した。海外発送だが、授業まで2週間ほどあったから間に合うだろう、と。しかしながら、数時間後に、急に注文はキャンセルされてしまったのだ。

画像3

一方的であり、特に理由が書かれていなかったので、やや憤慨して、そのメールに返信をしてみた。送信日時も合わせてお楽しみを。

On Mon, Oct 28 2019, at 08:21 PM,

Hello,
I would like to ask, why was my order cancelled? Please let me know.
Thank you.
Keisuke
こんにちは、
なぜ私の注文はキャンセルされたのでしょうか?お知らせください。
ありがとう
けいすけ

3日経ってもカスタマーサービスから返事がなかった。なぜリファンドされたのか納得できなかったから再度、問い合わせをした。

On Thu, Oct 31 2019, at 09:03 PM,

Hello,
I would like to ask again. I don’t know why my order was cancelled? Was Payment trouble? Or oversea delivery?
Best regards,
Keisuke
こんにちは、
もう一度伺います。なぜ私の注文はキャンセルされたのでしょうか。支払いトラブルですか?海外発送だからですか?
よろしくお願いします。
けいすけ

すると、日が空いて、返事が来た。

On Mon, Nov 04 2019, at 02:30 PM,

I am so sorry for the delay!
Unfortunately we just switched warehouses and they do not accept international orders. Really sorry about that and we will be sure to let you know when we start shipping internationally.
All the best,
Finn
#keepitclean
返事が遅くなって、申し訳ありません!
残念ながら実は、ちょうど倉庫を移転してて、彼らは今、国際オーダーを受けつけてないんです。本当にすみません。海外発送が始まったら、お知らせいたします。
ごめんくださいませ
フィンより
#きれいにしよう

シンプルなハッシュタグを添えた丁寧な返信をもらい、残念だが、そういうことなら仕方がないとあきらめた。ただ、なんだか、今回のこちらの趣旨は、どうしても伝えたかった。そこで、下記のように返信をした。

On Mon, Nov 04 2019, at 11:06 PM, 

Hello, Finn
Thank you for your reply. I understand what you say. It’s OK.

I am a CEO of a kind of maker in Japan. www.kitamura1923.com Actually next week I have a temporary class to teach college students about relationships between manufacturing and SDGs. Your company’s actions are cutting-edge and very interesting so I would think to introduce to my students. That’s why I tried to buy your product. I wanted them not only hear and read some journals on internet, but touch something that is an embodiment of your philosophy. Most students have no money, right?

Anyway please never mind about this. I have agreed with #keepitclean action too. Let’s save the earth.

Best regards,
Keisuke
こんにちは、フィンさん
返信ありがとうございます。理解できました。OKです。

私は、日本でメーカーの代表をしています。実は来週、とある大学生たちに向けた、SDGsと製造業の関係性について特別教室があります。あなた方の会社の活動はイケていて興味があるので、そこで彼らに紹介したいと考えています。インターネット上での記事を見聞きするだけでなく、彼らには、あなた方の哲学を体現したものに実際に触れてほしいと思い、商品を買ってみようと思いました。多くの学生は、あまりお金を持っていないでしょう?

いずれにしても今回の件は気にしないでください。私も、#きれいにしように 賛成です。共に地球を守りましょう。

よろしくお願いします。
けいすけ

若干、太鼓を叩いているし、ちょっといやらしいが期待を込めた。ウソではない本当の気持ちだ。その後、それに対する回答はなかった。特に気にはしてなかったが、それから1週間がたった11月11日、驚くことが起こった。

画像7

なんと、手元に航空便で、その商品が届いたのだ!
これには「ウソだろ!?」と心底、驚愕した。でも、ひょっとして倉庫側の手配ミスじゃないかと思って、念のため、彼にメール。

On Mon, Nov 11 2019, at 01:32 AM, 

Hi, Finn
Right now I got a pant what I would be supposed to purchase from you. Does it mistake of delivery? What could I do? Should I return it? Or do you give it for me?

Thank you
Keisuke
やあ、フィンさん
ちょうど今、そちらで買う予定だった商品(パンツ)が届いたんだけど、これって発送間違い?どうしたらいい?それとも、くれるの??

ありがとうございます
けいすけ

イカした返事が返ってきた。

On 2019/11/11 23:19, Fair Harbor Support wrote:

Keisuke,
No worries at all! Enjoy them!
Best,
Finn
けいすけ
全然、気にしないで!!楽しんで!
よろしく
フィン

その後、12月1日に配信された「It's the Small Things in Life」というタイトルのメールマガジンによると、本当に、つい秋ごろに、これまで両親のガレージを使っていたが、手狭になったので、ドイツのミュンヘンに新しく倉庫を借りたとあった。

画像4

子どものころ、夏になると、ファイヤーアイランドのファイハーバーという小さな海辺の町で過ごした私たちは、つながりのあるコミュニティを大切にしていました。釣り糸やサーフワックスが必要なときは、いつもご近所に頼ることができたのです。私たちは、この価値観をビジネスの中核に据えています。

私たちと私たちの使命を信じてくださって、ありがとうございます。今年はいろいろなことがありましたが、皆さんの継続的なご支援がなければ実現できませんでした。例えるなら、2019年9月、出荷施設を両親のガレージからついに移転をしました。

画像5

(上)ガレージが手狭になり、自宅の他の部屋も占領してしまっていた2019年夏の写真。

(下)Uホールの収納にサヨナラを告げ、ベルリンにある新しい倉庫へ。ちょっとデカすぎ。。。

画像6

今年(2019年)はとても素晴らしい年でしたが、2020年にはどんなことが待ち受けているのか期待しています。
ジェイクとキャロライン

追伸
何度か辞めてたかもしれない出荷担当(つまり、僕らのママ)に感謝します。

大量の注文に嬉しい悲鳴をあげて中指を笑顔で立ててるのは、おそらくファウンダーである兄妹の、理解ある実母だろう。妹さんとそっくりだ。彼らはブラックなユーモアもいとわないスタンスだ。

今回、メール対応してくれた彼の、どういった判断で、商品が送られてきたか分からないが、なんとなく心が通じ合った気がして嬉しくなった。授業を無事に終え、学生たちがあなた方に興味を持ってくれました、と改めて謝辞を伝えたところ、「Great! All the best, Finn」とだけ返事がきた。

会社の規模は詳しく分からない。いちカスタマーサービスのメールに対応している彼のポジションは定かではない。いずれにしても、高尚なフィロソフィーを提言するのは結構だが、こういった現場レベルでそれらが表現できているか否かはとても大切だ。心から見習いたい。

余談だが、日本でも、あるアパレルメーカーがコンポストで商品開発をしていたから、それも取り寄せることにしたのだが、商品が届いて愕然とした。それは、スマートフォンのカバーだったが、そのパッケージには、ふんだんに?プラスチックのケースが使われていた。まったく本末転倒であり、理解に苦しむ。

そもそもこの問題は、購入後、廃棄されるだけの過剰なパッケージなどを排除しようというものではないのだろうか。それをご丁寧にも、これまで通りの梱包形態でプロジェクトが進んでいる。「ありき」で進められているから、「SDGs ウォッシュ」と揶揄されるのだろう。つまり、本質的ではないのだ。

「企業は人なり」とよく言ったものだが、とても考えさせられた。(結果的に!)タダでもらったこととなってしまったスラックスは、自分で裾上げをして、自宅で大切に履かせてもらっている。サンキュー、サンキュー

> Do you ship internationally?
Yes! You can ship almost anywhere worldwide.

現在は、海外発送対応とのこと。夏に向けて、水着を買おうか。

まくらのキタムラ
北村圭介


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?