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蘇我の娘の古事記 感想

いやはやすごい本を読んでしまった。
こんなに俺の好みの小説があったとは。
それが読み始めの率直な感想。

●ストーリー
舞台は7世紀の日本。
蘇我入鹿に仕えていた史の一族(史というのは文字を書く文官)、船恵尺が、乙巳の変(大化の改新として習った人もいるかも)の最中、入鹿の娘を守るために連れ出す。
その娘のコダマは盲目の代わりに大変な聡耳で、歴史や物語を聞かせるとすぐさま覚えてしまう。そこで恵尺は、自分の仕事であった国史の編纂をコダマの記憶力を使って手伝わせる。
それとともに、もうひとりの恵尺の子供であり、コダマの兄であるヤマドリは恵尺を継いで官吏として都務めをするが、当時の歴史的事件に巻き込まれていく……

感想
僕は元々日本史は好きではないが日本古代史が好きで、よくわかる日本古代史、みたいな本はたくさん読んだし、胡散臭いような新書も、網野善彦の日本史の解説も読んだ。
その中で、本書に示されるような解釈はかなり根拠があるものというか、自分の中の仮設や古代史の解釈と矛盾することなく、歴史小説としての完成度がまず高いと思った。
そしてその上で、登場人物の性格や心理描写に同意できる点も良かった。
元々の血縁や政治的な立場、一族の長としての立場などが分かっているため、感情移入がしやすかった。
加えて、伏線の回収が素晴らしかった。
過去の出来事が話の展開にどんどん介入していく6章から先は、思わず一気に読み進めてしまった。歴史の描写もしっかりしつつ、エンタメとしての盛り上がりも欠けることがなかった。

今年読んだ作品の中で間違いなく1位の作品。
古代史好きにはたまらないと思うし間違いなくオススメできる。ただ一般の時代劇より昔を描いた作品なので、慣れないと言葉遣いや固有名詞に読みづらさがあるかもしれない。

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