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O、HO、N、Zってなんだろう?

中央学術研究所
学術研究室 渋谷 隆市

 O、HO、N、Zという文字を見て、血液型、鉛筆の硬さ、ネットワーク、Z世代と思い浮かべる人が多いと思います。ですが、O、HO、N、Zと聞いてまず鉄道模型を思い浮かべた人は、かなり鉄分(鉄道好き)多めの人といえるでしょう。

 鉄道模型には世界中にたくさんの大きさの規格がありますが、O、HO、N、Zの4つは、日本で浸透している鉄道模型の規格のことでレール幅から名づけられています。
 Oゲージは、レール幅が32ミリの模型で、日本では昭和30年代中頃まで主流でした。ただ、このレール幅で実車両をスケールダウンするとかなりの大きさになってしまい、博物館の展示用にはふさわしかったのですが、日本の狭い住宅事情にあわず、長さを短くしたり、工作を簡略化したりしたため、その分、逆におもちゃ感を強めてしまったのが難点でした。
 HOゲージは、Oゲージの半分の幅という意味でレール幅が約16ミリの模型です。工作が細部まで実車両に近く再現できるので、鉄道系、交通系の博物館のジオラマ展示や、よりリアルさを求めるマニアたちに愛好されています。
 NゲージはNine Gageのことで9ミリ幅のレールを基準にした鉄道模型です。リアルなプラ加工、手頃な価格、日本の住宅事情でも大きなレイアウトが組めることで人気です。そしてZゲージ。「これより小さなスケールの模型は将来でないだろう」ということで名づけられました。レール幅の6.5ミリから「ロクハン」とも呼ばれています。

左:HOゲージ/右:Nゲージ
1960年代後半のHOゲージ。 まだまだしっかり動きます。

  その楽しみ方は人それぞれです。好きな車両や機関車や貨車を、家族に見つからないように自分の机の引き出しにそっとコレクションする人。大きなジオラマをつくりそこにレールを敷き、さながら博物館のようにして運転を楽しむ人、キットを買ってきて自分で組み立て塗装する人。実車両の写真から寸法を割り出して設計し自作する人まで実にさまざまです。要は身の丈にあった楽しみ方を見つけて、いっとき少年の頃に戻ってみたり、叶えられなかった電車の運転士になってみたり、自分が走らせている列車や電車の乗客になって旅行気分を味わったりすることだと思います。

 さて円であろうが楕円であろうが、エンドレスでレールをつなげるのは鉄道模型の基本形といわれています。つい模型の能力を試したくなって最速フルパワーで走らせたくなるものです。そんな野暮な楽しみ方はちょっと押さえて、のんびりゆるゆるした速度で走らせてみてください。けなげに走る姿をボーッと眺めているのは格別です。始めもなければ終わりもない。般若心経みたいな境地です。法華経も円経といわれています。大聖堂も円形です。鉄道模型もクルクルとけなげに走る姿を見ていると、いつしかとがった心もま~るくなって、心が落ち着いていることに気づかされます。そんな楽しみ方があってもよいのではないでしょうか。

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