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Vol.9 絵本が教えてくれること

八方美人

 11年前に長子が生まれて以来、少しずつ増え続けた我が家の絵本たちは、5歳になる娘に読んでもらうことを待ちながら、おもちゃなどが置かれている棚に鎮座している。そういう意味で、我が家はたしかに“絵本のある毎日”を送っている。

 とはいえ、現実は共働きを言い訳に、子どものために落ち着いて絵本を読む時間はなかなか取れていないのが正直なところ。それよりも、仕事から帰れば夫婦で夕飯やお風呂の準備に後片付け、さらには学校の宿題を催促することに追われ、隙あらばテレビやYouTube、プライムビデオを見ようとする子どもたちに対し、時計と睨めっこをしながら「もう寝なさい」と追い立てるのが日常の風景である。親としては恥ずかしい限り。

 そんな日々のなか、時折「これ読んでー」と、本棚から引っ張り出してきた絵本や、保育園で借りてきた絵本を持って、娘がお願いしてくることがある。ゆっくりしたい私は、「今日はやめとこうよ」などと押し問答をしながら、「1回だけね」などと条件をだし、胡坐をかいたうえに娘を座らせ、渋々読み始める。
 そんな私の様子はおかまいなしに、「絵本を読む」という約束を取り付けた娘は、嬉しそうに私のもとへ座り込んでくる。パートナーに言わせると“娘に甘い”私は、簡単にその笑顔に感化され、いつの間にか娘を楽しませるためにあの手この手と一工夫。登場人物になりきって声色を変えてみたり、大げさな動作を入れてみたり、娘と交互に読んでみたり、次の展開を質問してみたり、時間にしてみれば10分程度のこと。

 日常から絞りだされた隙間時間で、絵本は私に色んなことを与え、教えてくれる。子どもが何に興味を持っているのか、どんな言葉をおぼえたのか、何が出来るようになったのか。本来であれば、子どもに何かを伝えるための絵本が、私にとっては、子どもの成長過程を教えてくれる大切な相棒である。


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