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うちのちっちゃな物語

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これは、立正佼成会の女性教会長たちの「うち」で起こった物語。 どこのうちにもあるような事件。あるいは見逃してしまいそうな些細なできごと。 夫婦のこと。子育てのこと。嫁、姑のこと…
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#kitai

見つかった糸口

紅しょうが  その日は「夕飯は焼きそばね!」と主人に宣言して出勤しました。一日を終え、さあ帰ったらおいしい焼きそばを作ろう~と車を走らせました。朝からの強風が夕方になって更に強まり、並走する高速道路が閉鎖され一般道が混み始めました。  ナビで混み具合を見ていて初めは余裕がありましたが、進まなさ加減に念のため主人に「お肉だけ解凍お願いします」とLINEをしたところ快諾…それでも中々進まない車に、最後は「焼きそば焼いて!」と伝えると全力で「ムリムリ!」の返事。カレーや麻婆豆腐

ハシビロコウ

すずらん  3月の終わり、小学3年生の孫娘と二人で上野に出かけた。共働きの娘夫婦に代わって春休みの一日を共に過ごすことになったとき、「したいことを思う存分させてあげよう」と決めた。孫娘には2歳の妹がいて、日頃はどうしたって妹が優先。お姉ちゃんとして我慢を強いられることも多く、パパやママに何かとダメ出しをくらっている姿を目の当りにするたびに、私の胸は痛んでいた。  この日最初に向かったのは私の従弟が出展している東京都美術館での絵画展。絵や工作が大好きな孫は、終始興味津々の様

家族は生きもの

風になびく柳 家族は生きものかも知れない。 「☆♯$※!★¥%になる?」 「えっ、なに?」 「だから、☆♯$※!★年になる?」 テレビを見ている夫のそばで趣味の本を読んでいた私は、せっかくの楽しみを中断されたようで、少しムッとし「何言ってるか分からない」と返した。いつの間にか夫婦共に高齢者の仲間入りをし、活舌が悪くなり、おまけに聞き取る力も衰え、老眼鏡が手放せない。 「だからさ、俺たち結婚して何年になる?」 どうして急にそんなこと聞くのかと思いながら、夫の見ているテレビ

古稀のお祝い

エモちゃん  私の都合で延期になっていた古稀のお祝いが開催された。豪華な食事と楽しい会話。あっと言う間に時が過ぎ、そろそろ記念写真の時間になった。写真を撮る前にと、小学一年生の孫が感謝状を読み上げてくれた。堂々と背筋を伸ばして、一生懸命に私を称えてくれた。私はニコニコ、ほっこりした気持ちで幸せを感じながら聞いていたが、主人は目にハンカチをあてていた。孫が一生懸命読んでいるその姿に感動したのか、読んでいる内容に共感したのか・・定かではない。  次にプレゼントをくれた。重い箱

【うちのちっちゃな物語】わが家の親ばなれ子ばなれ

ラピード  「お母さん、おれ大学辞めてきたから」3月になり、次の年に大学3年になる長男の授業料振り込みの準備をしていた私に、彼はボソッと言いました。「え~っ!…」いったい何が起こったのか理解できず、私は返す言葉もありませんでした。私に湧き上がってきたのは、「せっかく入学した大学なのに、なんで親に相談もせずに黙って辞めるの」という、怒りと絶望感でした。  私自身、高校、大学、企業に就職、やりがいのある仕事、結婚退社…と苦労もなく歩むことができました。だからこのコースが一番楽に

たいせつな時間

うすゆきそう  フルタイムで働いているような生活をしている私にとっては、久しぶりに行ける授業参観日。娘のエミも、出がけに「お母さん、今日、何着てくるの?かわいい恰好で来てね。」と、よほど楽しみな様子だった。同じ女の子でも、2歳上の姉からは、そんな言葉を聞いたことがない。3人兄姉の末っ子の娘は、ご近所のお母さん方にも、優しくて面倒見がよいとかわいがられ、どうやったらエミちゃんのような子が育つのですかとお手紙をいただいたこともあった。  いそいそと私も小学校に向かった。学年合