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クリスマスが近くなると死にたくなる理由【社会学的な話】


クリスマスの季節になると「憂鬱な気分になって、死にたくなる」

という人を毎年よく見かけます。

この動きは世の中全体から見ても珍しくなく、とてもありふれた光景ではあります。

それでは何故クリスマスになると死にたくなるのか、主に社会学的視点から、その仕組みを書いていくことにしましょう。

この記事ではクリスマスとクリスマスイブ、クリスマス前の休日などを特に細かく分けないこととします。


クリスマスと社会的圧力


クリスマスは企業努力によって、客が商品を買いたくなるような仕組みが作られている(マーケティングという)。

簡単に言えば、人々がお金を使うように盛り上げられているわけです。

例えばクリスマス以外の行事ですと

1 バレンタインにはチョコレートを送れ

2 土用の丑の日にはうなぎを食え

3 正月にはお年玉を配れ

などです。

クリスマスの過ごし方は人それぞれですが、最も推奨されるのは、次のような過ごし方でしょう。


テンプレートなクリスマス


1 恋人、もしくは友人と過ごす

2 クリスマスイブの夜は恋人とデートする

3 豪華な食事をする、ケーキを食べる

4 プレゼントを送る、もしくは送りあう

クリスマスのテンプレイメージですね。

イメージというより「恋人と過ごせ、ケーキを食え、プレゼントを買え」という社会的圧力しか感じません。

普通に「○○しろ!」と強制されている数が多いので、尻込みするのが一般的感覚でしょう。

こういった「クリスマスは異性と過ごせ!」的な社会的圧力を、クリスマス圧と呼ぶことにします。

クリスマス圧は先程言ったように、特別社交的ではない人にとってはかなり重たく、楽しさよりも消耗のほうが勝ります。

こういった消耗は人をすり減らすので、積み重なると死にたくなってくるのですが、まだまだ深刻なレベルではありませんね。

もちろんクリスマスが大好きという人は、テンプレ的クリスマスを楽しく過ごすのが良いでしょう。

むしろ是非そうするべきです。


クリスマスが好きな人にも大きな問題が1つ


A クリスマスが好きで恋人がいる人

B クリスマスが好きで恋人がいない人


1人部屋でケーキを食べて「クリスマス楽しい!!」っていう人、日本には存在しない可能性が高いです。

恋人がいない人にとってクリスマスは恐ろしいイベントです。

1人では決して成立しません。

学校の先生もそうでしたが、何故なんのためらいもなく、人に向かって「2人1組になれ」などと言うのか……。


クリスマスは人間の欲求を刺激する


楽しいクリスマスには、恋人が必要不可欠である。

「必要不可欠とは、言い過ぎではないだろうか?」と思う人は、次の思考実験を見てください。

1 あなたはクリスマスに同性しかいない友人の集まりに誘われた

2 その時にあなたが言うセリフは?

3 「行けたわ行くわ」(誘いを断る時に使う言い回し)

なぜ断るのかというと、クリスマスの季節はクリスマス圧のせいで普段よりも特別に性欲が強くなってしまうからです(もう少し繊細な表現をしたかった)。

欲求が強すぎれば、人間はその欲求に絶えず裏切られ続ける。しかし欲望を外部から抑制するものがない状態。

自殺論の著者 エミール・デュルケームはこの状態をアノミーと呼んで、欲求が解消されない苦痛が原因でする自殺を、アノミー的自殺と名付けました(大体お金と性欲)。

現代人にとってアノミー状態というのは慢性的なものですが、それが特に強くなるタイミングの1つが、クリスマスというわけです。

クリスマスは、恐ろしい行事ですね。

ところがクリスマスの恐ろしさ、まだまだ続きます。


最悪なクリスマス



最悪なクリスマスを三段論法風に表すと、次のようになります。

意識高い呼び方をすると、演繹法(えんえきほう)。


1 クリスマスは恋人同士で過ごす(前提)

2 自分は1人で過ごす(事実)

3 ゆえに自分の想い人は、誰かとクリスマスを過ごしているだろう(答え)


クリスマス演繹(今名前を付けた)をすると、人間は自殺したくなります。

このような答えを出して「全然、なんともないけど?」という片想いの人はいません。

大変惨めな気持ちを味わうことになるでしょう。


高校時代12月の始めに死にたいと言っていたM君も、こんな気持ちだったのだろうか。

高校以前の彼にとって、クリスマスは親にゲーム買ってもらうだけの日だったというのに……。


クリスマスは酷い行事だけど12月は最も自殺が少ない


クリスマスには死にたくなる人が多いというは、これまで書いてきた理由により間違いないでしょう。

そして、自殺は社会が活発になるほど高まります。

ならば12月の自殺者数は凄まじいものになりそうですが、意外にも12月というのは1年で最も自殺者が少ない月なのです(3~5月が多い)。

一見矛盾しているように思えますが、そんなことはなく、12月に自殺が最も少ないのはお正月があるからです。


20年前のヨーロッパの統計によると、次の通り。

・一週間のうち土曜日は最も自殺が少ない

・寒い時期6ヶ月のほうが温かい時期6ヶ月より自殺が少ない

・夜から明け方までの時間帯は自殺が少ない


デュルケームが、これらの事実から導き出した答えは、先程書いた、「自殺は社会が活発になるほど高まるのではないか?」というものです。


クリスマスに性欲が高まりすぎて死にたくなっても、「 正月終わってからで良いのではないか?」と考えたり。


そこまで行かなくとも、おおらかな気持ちになるのです。


もちろん正月明けというのは憂鬱ですが、正月中に新年の抱負すら忘れてしまう我々が、クリスマスのことを覚えているでしょうか?


要点のおさらい


1 世の中にはクリスマスは異性と過ごせという社会的圧力がある

2 その社会的圧力をクリスマス圧と呼ぶことにする

3 クリスマス圧に従ってクリスマスを過ごすには恋人が必要

4 クリスマス圧のせいで性欲が普段より高まる

5 クリスマス演繹をすると死にたくなる

6 しかし12月は正月が控えているので自殺が少ない


それにしても、カトリックとプロテスタントの違いもわからないのに、クリスマスに予定がないからと落ち込むというのは、よく考えると不思議な話です。

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