データ分析の活用・推進に必要なのは本当に「上層部の理解」なのか?
結論
ニュアンスによります。必要なのは「協力体制」であって「理解させること」「納得させること」ではありません。
自己紹介
Twitter: @_Kit_Ok_
フリーランスで、主に中小企業や個人向けにデータ分析・活用周りのなんでも屋さん的なことをしています。具体的には下記のような内容です。
・データ前処理自動化のシステム開発
→主にAWS、S3・Lambda・Athena・EMR・Glueあたりを利用。今はDynamoDBを勉強中。
・データ活用全般に関する相談・実装
→分析の課題設定や評価指標の設定から入ったりとか。
→実装では、Jupyterでいろいろ分析・可視化してみたり、ExcelやDBのデータをTableauで可視化してみたり、そのあたり。
・機械学習の活用に関する相談
→産学連携の課題設定や進行とか。
→機械学習の活用に関する相談、課題設定、POC実装とか。(勉強しながら。修士が情報系だったのでそのあたりのベースはあります。が、網羅的に理解はしていないし、最新の論文もそんなに追えてない…時系列・ベイズモデリングあたりもっと学びたい)
・その他の相談
→最近は「会議の進め方」「仕事の進め方」みたいな相談も多いです。
→こういうのもあって、分析関連の知識を深めてデータサイエンティスト的に働くか、コンサルっぽい仕事に寄せていって手を動かすことを減らしていくか、キャリア迷い中。
今回の対象外
1:下記「大前提」を満たさない場合。(※上司が「データ見るより人間の経験と勘のほうが正しい!」と本気で信じて止まない場合はほぼ無理ゲーだと思います。やるとしたら、承認もらわないまま勝手に進めて結果で示すしか無いかも…私なら環境を変えることを選びます。)
2:大企業や、バリバリデータ活用ができている企業の皆様
→私の経験が「中小企業」で「データ活用をはじめたばかり/はじめようとしているところ」なので、当てはまらない内容があるかもです。その場合はどこが違うかは気になるのでコメントいただければ嬉しいです。
大前提
まず、以下のことが前提になります。
p「もしも、理想的に重要指標が設定でき、その指標に関するデータが理想的な形で得られるのなら…」⇒ q「データを活用した意思決定のほうが、人の経験と勘による意思決定よりも成功確率は高い」
これは大前提として概ね皆さん納得するところだと思います。(まあpの成立は難しいんですが…)
重要なのは、「この『p⇒q』が正しいこと自体は、まあ上層部も納得するはずだ」というところです。
ではなぜ、我々の「データ活用しようよ!」は理解されないのか & その対処法
いくつかのパターンがあり、それらが複合的なものになっている場合が多いです。
① pの成立ないしqの意思決定内容の実行が難しいと思っているから。
これはめっちゃまともで、現状の経営状況から、$p$の達成や$q$の意思決定内容の実行にかかるであろう時間やコストを危惧している場合です。
【対処法】
この場合は、「時間やコストを試算してあげること」「小さく始めること」あたりが対処法になります。
データ分析関連プロジェクトを任されているのであればここに時間を割けると思うので対処可能かと思います。
そうでない場合(普段はエンジニアだけどデータ活用したいとか)は、空き時間でやるか、「ちょっとコレに時間欲しい」という承認をゲットしに行く必要があります。そのときは以下の「②」「③」が参考になると思います。
② こちらで思い描いている「データを活用して事業に活かす」ということと、上層部の方向性が一致していないから。
このパターンはそれなりに多い気がしています。「データをAのように使えばBが良くなるはず」という場合に、「AやBが上層部の関心の外」という可能性は無いでしょうか?
【対処法】
「『データをAのように使えばBが良くなるはず』というのを上層部に納得させる」ことができればそれがいいです。(が、それが出来ている人は「分かってもらえない…」という悩みは無さそうです。)
大抵の場合は、「上層部が何に興味を持っているのか」を調査・ヒアリングし、我々の方が「A・B」を変更し、別方向でデータ活用を推進したほうが良いです。
「いや『A・B』で行かないと意味がない」という場合は、その論拠が十分で、かつ正しい必要があります。
「論拠も客観的に正しいはず」あるいは、「十分じゃないけどやるしかない」という場合は以下「③」が参考になると思います。
③ 人は論理ではなく感情で判断する生き物だから。
データ分析に限らずなんですが…現実、避けて通れない問題です。
「感情に振り回されて論理で判断できない上層部が悪い」というのも一理あります。が、それを言ってしまったらオシマイです。本気でそう思う場合は、このようなことが起きない環境に行くほか無いと思います。
「根拠が十分でなくても、信頼を得ていれば任せてもらえる」という捉え方のほうが、幸せになれそうです。
理想的には「データを活用する施策」自体も開始前にデータで有効性を示して実行していきたいですが…難しいことのほうが多いと思うので。
【対処法】
「自分は上層部の信頼を得ているはずだ」という場合は、伝えるタイミングが悪いか、伝え方が刺さっていない可能性があります。機嫌を伺ったり、伝える内容を絞ったりしてみるのが良いです。
信頼が得られていない可能性がある場合は、まずは信頼を得るためにも、上層部の関心事からはじめるのが良いです。自分のやりたいことをやるためにも、回り道をしたほうが良いかと思います。
「そんな政治的なことはしたくない」という場合や、「信頼されていないどころか嫌われている」という場合は、環境を変える(転職とか)ことをおすすめします。
え、じゃあ結局「上層部の理解」は必要なのでは?
はい、スミマセン、必要です…笑
ただ、今回書きたかったのは、「上が理解してくれない」「上を納得させなきゃ」という、ある種の敵対的な立場に立っている人が意外に多いのでは、というところです。
そういうニュアンスでの「上層部の理解が必要」、というのは、ちょっと違うかなと思います。
①のように「コストが…という危惧がある」場合は、コストのかからない実現方法やコストをかけるだけの価値を示す必要があります。
②のように「こちらが上層部の関心事を理解していない」場合は、こちらが上層部の意図を理解した上で一緒に考える必要があります。
③のように「正論を言えば伝わると信じてしまっていて、相手に響いていない」場合は、月並みですが、伝え方を工夫したり、信頼を得るためのアプローチが必要です。
私の過去の失敗を振り返っても、
・「コストをかけるだけの価値がある」と説得するのを怠って、上層部の命令に従ってプロジェクトを停止した結果、後からしわ寄せが来てしまった。
・自分の考えと上層部の考えの方向性をすり合わせよう、という発想に至らず、「なんであんな判断になるんだ…」と上層部の所為にして満足してしまった。
・「これは客観的で正しいことなのだから言えば伝わる」と思って「どのように伝えるか」を十分に練らなかったために、うまく伝わらないまま誰にボールがあるかわからない状態で仕事が流れていった。
という具合に、「一緒に進めていこう」「協力しよう/してもらおう」という意識が足りなかったときでした。
「データ」は客観的なものですが、それ故に、自分自身が「データは正しい」「データをうまく使えない上の人間は間違っている」「勘と経験ばかりの上層部に言ってもどうせ伝わらない」みたいな思考に陥っていたな、と、今では思います。
そんな、面倒な…データ利用していい感じに活躍したいだけなのに…
わかります。めっちゃ大変です。
しかも、今回は「上層部」という視点で書きましたが、ほぼ同じようなことが「エンジニアとの協力」「営業との協力」でも発生します。
その上、このコロナ禍でリモートワークだったりすると、特に②や③の問題の解消はかなり意識しないと難しいと思います。チャットコミュニケーションにおける言い回しやレスポンスの速さなどで信頼を得られるよう頑張ったり、対面のコミュニケーションの機会を貴重なものとして捉え、効果的に伝わるように伝え方を工夫したり…ものすごく地道な活動が…
「実装に集中」「分析に集中」できるまでの道のりは非常に長いですね。
でも、だからこそ、その土壌を作ってきた企業は人気なのだと思いますし、そういったところには人材も集まっていくのだと思います。
データ基盤まわりのMeetupや勉強会に参加していると、発表されている企業の方は「どうやったらそんないい感じに整ったのさ!?」と思えるような企業が多いですが、現在の華々しい部分だけでなく、過去の泥臭い経緯を公開してくれている企業もあります(企業名思い出せずリンク貼れない…スミマセン)。
そういうのを励みにして、イケてる「データドリブンな企業」を目指して、地道に頑張っていくしかないのかな、と思います。
まとめ
「理解させる」ではなく、「協力してやっていく体制を作るための動き」が必要。
「金と時間のコストが不安」なら、「試算してあげる」か「小さくはじめる」
「方向性が合ってないかも」なら、「ヒアリングし、必要ならこっちが歩み寄ったほうがいいかも」
「全部正しいことを言っているつもりなのに…」なら、「伝え方変えたり、信頼を得るための努力をしたり、感情面での配慮が要るかも」
書き終えて
初note、場違いじゃないかとか不安。間違ってないか不安。投稿ボタンを押したくない。不安でしか無い。笑
ただ、書いていると「え、俺こんなことほんとに考えてるか?」と自分で自分を疑えてよかった。
「それは違うでしょう」と言ってもらえるくらいに色んな人が見てくれたら嬉しい。勇気を出して投稿ボタンを押そう。
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