見出し画像

ChatGPTに「ヤホー漫才」の台本は書けるのか

初めに断っておかなきゃいけない気がする。この記事に「ChatGPTの使い方について役立つ情報」はないです。もしそれを期待してこのページを開いた方はすみません。

この記事は、クスッと笑っていただけたら――ただそれだけの思いで書くものです。とかくギスギスしがちな世の中、そういうのも大事やん? それではお楽しみください。

ほぼ日の學校「お笑い文体論」でひらめく

きっかけは、ほぼ日の學校で「お笑いを学問してみたら? お笑い文体論・入門編」という授業を視聴したことでした。

講師はサンキュータツオさん。「学者芸人」という変わった肩書きです。漫才コンビ「米粒写経」でツッコミを担当しつつ、「笑い」を学術的に研究していて、大学で授業も持っているそうです。

で、授業のタイトルにある「お笑い文体論」とは何か。

私なりに要約しますと――

  • 「○○っぽさ」を研究するのが文体論。例えば川端康成の小説における「川端康成っぽさ」はどこから生まれるのか、といった具合に。

  • そうした研究に、お笑いを対象として取り組むのが「お笑い文体論」

ということです――。

すみません、これだけではよく分からないですよね。でも今回書く記事でそこは重要なポイントではないのでこれぐらいにしておきます。よかったら授業を視聴してみてください。桃太郎の冒頭をアレンジして漫才を作るワークショップなどもあり、とても楽しい授業でした。

脳内再生余裕! 架空のナイツ漫才

そう、この記事を書くきっかけの話でした。

授業の中でサンキュータツオさん作の「もしナイツが阪神タイガースでネタを作ったら」の朗読がありました。これがよくできていたんですよ。「ナイツっぽさ」の分析結果を生かし、実際にはないネタをつくったわけです。

少しだけ引用します。

塙:未だに語り継がれているのは85年、優勝した年のクレラップですよね。
土屋:クリーンナップだよ。
塙:順番に、ソース・かける・岡田。
土屋:順番に、バース・掛布・岡田ね! ソース・かける・岡田って、ただ岡田さんがトンカツ食ってるだけだから。

ね、すごい。脳内再生余裕です。架空のネタですよ、これ。

で、私も脳の訓練のために「もしナイツが中日ドラゴンズでネタを作ったら」を書いてみようと思い立ちました。中日ファンなので。

ふと思い出したChatGPTの存在

よし! 「もしナイツが中日ドラゴンズでネタを作ったら」を書くぞ、とWordを開いた私。しかしすぐに「いや、まてよ」とキーボードから手を離しました。

「もしかしたらChatGPTは、こんなネタも一瞬で書いてしまうのか? 書けてしまうのか?」と気になり始めたのです。

書く仕事を生業にしているので、最近は「ChatGPTに何ができるのか」「どう付き合っていくのか」「書く仕事はこれからどうなってしまうのか」といったことを考えてばかりです。

というわけでお待たせしました、ようやく本題です。ChatGPTに「もしナイツが中日ドラゴンズでネタを作ったら」を試しに書いてもらうことにしました。

なぜ片岡Kさん?

まずはChatGPTにナイツを知っているかどうかを聞いてみました。

〈私〉
ナイツという漫才師を知っていますか

〈ChatGPT〉
はい、ナイツは日本のお笑いコンビで、土屋伸之と片岡Kをメンバーとしています。彼らは、1996年に結成され、主に漫才を中心に活動しています。ナイツは、その斬新なネタと、独特のリズム感やアクセントで知られています。また、テレビ番組などでも活躍しており、数々の賞を受賞しています。

んん? いきなりおかしい。なぜ片岡Kさん? なぜに? 「斬新なネタと、独特のリズム感やアクセント」というのも、ちょっとナイツの説明としては違和感があります。まあそれは置いといて、メンバー名を訂正しなくては。

〈私〉
メンバー名塙宣之と土屋伸之

おっと、ミスタイプ。こんな変な文章、というか単語の羅列を送信してしまいました。それに対してChatGPTは……。

〈ChatGPT〉
申し訳ありませんが、先に伝えた通り、ナイツのメンバーは土屋伸之と片岡K(本名:片岡健太郎)の2名で、塙宣之さんは別のお笑い芸人さんです。ご了承ください。

は? カチンときちゃったモカ奉行。

おいおい、片岡Kさんの箇所に「本名:片岡健太郎」と足されているぞ。メンバーではない人の情報がさっきより詳細になっているではないか。しかもこの情報もどうやら間違いだ。ウィキペディアによると片岡Kさんの本名は「片岡啓」らしい。もう無茶苦茶だ。

そして何より「塙宣之さんは別のお笑い芸人」と言い切っておる! きっぱりと! 自信満々に!

さらにいわせてもらえば、文章全体を通じてなんかちょっとイヤミっぽい! 「さっきも言ったでしょ」感がえげつない! なんじゃおりゃああ!

"ヤホー!"という掛け声

冷静にになりましょう。ここでケンカ別れしてしまっては「もしナイツが中日ドラゴンズでネタを作ったら」を書いてもらえません。

〈私〉
メンバー名が間違っています。ナイツは塙宣之と土屋伸之のコンビです。片岡K(本名:片岡健太郎)はナイツのメンバーではありません。

〈ChatGPT〉
申し訳ありません。確認不足で誤った情報をお伝えしてしまい、ご迷惑をおかけしました。ご指摘ありがとうございます。おっしゃる通り、ナイツのメンバーは塙宣之さんと土屋伸之さんです。再度お詫び申し上げます。

分かってくれました。すごく丁寧に謝ってくれました。いいやつだな、ChatGPT。本来の目的に近づいていきましょう。

〈私〉
いえいえ。ナイツの代表的なネタを知っていますか。「ヤホー漫才」と呼ばれているネタです。

〈ChatGPT〉
はい、ナイツの「ヤホー漫才」は彼らの代表的なネタの1つで、非常に有名です。このネタは、"ヤホー!"という掛け声を繰り返しながら、2人のやり取りを行うという形式で構成されています。ナイツ独特のテンポと、オリジナリティあふれるボケと突っ込みのやり取りが、多くの人々を笑わせています。

ん? おかしいおかしい。"ヤホー!"という掛け声を繰り返す?


ココリコ遠藤が2人になったみたい

こういうことですか? んなわきゃない。これも認識を変えてもらわなくてはなりません。

〈私〉
いやいや、ちがいますよ。"ヤホー!"という掛け声を繰り返したりしはません。塙の言い間違いに土屋がつっこむ、というのが基本的な形です。

塙:ちょっと昨日インターネットのヤホーってサイトで検索してまして~。
土屋:ヤフーね。うん。あれね、ヤフーって読むんですけども。

こんな感じで。

分かってもらえるかな? カチッ(ドキドキしながら紙飛行機マークをクリック)

〈ChatGPT〉
申し訳ありません。私の回答が間違っていたようです。ご指摘ありがとうございます。おっしゃる通り、「ヤホー漫才」というネタは、塙宣之さんが言い間違いをして、土屋伸之さんがそのツッコミを入れるという形式で展開されるものです。私の回答が誤りだったことをお詫び申し上げます。

分かってもらえたぞ! ではいよいよ本題へ。

〈私〉
いえいえ。では中日ドラゴンズを題材に「ヤホー漫才」風の漫才台本を書いたりはできますか?

〈ChatGPT〉
はい、中日ドラゴンズを題材にした「ヤホー漫才」風の漫才台本を書くことは可能です。ただし、漫才の台本はボケとツッコミの掛け合いで構成されているため、具体的な内容は台本を書く人のアイデアや創造力によって異なります。そのため、どのようなボケやツッコミを使うか、どのような設定にするか、など検討が必要です。もし具体的なアイデアがあれば、それに基づいて台本を書くことができます。

なるほど、そうきたか。分かりました。具体的なアイデアを書きましょう。

〈私〉
例えば以下のようなボケとツッコミを重ねていく感じでどうでしょう。

塙:今の監督が「波風立つ」という名前でして。
土屋:立浪監督ね。監督が波風立たせるのはよくないからね。

塙:エドはるみという助っ人がいまして。
土屋:ビシエドでしょ。バッターボックスで「グーグー」言ってたら怖いよ。

がんばって2つのボケ・ツッコミ例を書きました。やってみると大変だな、これ。でも楽しいぞ。

さて、どう返してくるでしょう。

いよいよ核心へ!

〈ChatGPT〉
それは面白いボケとツッコミの例ですね! 以下にもう少し続けてみました。

塙:さっきの試合で負けてしまったんですけど、原因はなんだったんでしょう?
土屋:もしかして、打てなかったからじゃないですか?(塙が微妙な反応をする)
塙:それは言いたくないなぁ。でも、ピッチャーがダメだったんですよ。
土屋:あー、坂本投手か。そんなにショボい球投げてたもんね。
塙:いや、そうじゃなくて、スコアボードに全然数字が出なかったんですよ。
土屋:あ、そっちか。そりゃ問題ですね。

うーむ。

ヤホー漫才風どこいった?

「面白いボケとツッコミの例ですね!」と書いてくれているのに、全然その例に基づいたネタになっていません。

そのことを抜きに読んでも、何だか、何というか……不思議な会話ですね。

でも一生懸命考えてくれたのだから、もう何も指摘しません。このまま続けましょう。

〈私〉
ありがとうございます! もっと続けてください。

〈ChatGPT〉
続けてみますね!

塙:最近の中日ドラゴンズは、若い選手が台頭しているようですね。
土屋:そうですね。若手が育って、監督も手応えを感じてるみたいです。
塙:でも、まだまだチームとしては未熟なところがあるんですよね。
土屋:それは確かですね。でも、どのチームもそうじゃないですか?未熟なところを克服して勝ち進むのが野球ですよ。

塙:中日ドラゴンズの選手って、みんなハイテクなものを持っているんでしょうか?
土屋:それはどうでしょうね。でも、ホームランバッターはバットが武器だし、投手は球を投げる腕が武器ですよね。
塙:そうだったんですか!それなら私も武器を持って試合に出たいですね。
土屋:あの、塙さんはちょっと何言ってるかわかりませんが…(笑)。

塙:中日ドラゴンズは、応援歌も熱いですよね。
土屋:それは確かですね。特に「燃えろドラゴンズ!」は有名です。
塙:でも、あの歌詞ってちょっと古いんじゃないですか?
土屋:古いですけど、それがいいんですよ。懐かしさもあるし、何よりも「燃えろ!」っていう気持ちが大事なんですから。
塙:そうですね。私も「燃えろ!」って気持ちで、中日ドラゴンズを応援したいと思います!

ヤホー漫才風かどうか以前に、もはや漫才とはいえない普通の会話になっている気がします。でも総じてドラゴンズ愛が伝わってくるやりとりにはなっていますね(武器のくだりについては、こっちが「ちょっと何言ってるかわからない」と言いたい感じですが)。

「若い選手が台頭」とか、「燃えろドラゴンズ!が有名」とか、ドラゴンズについてちゃんと調べて書いてくれている感じがします。

機嫌良さそうで何より

あ、でも今調べてみたら応援歌の正確なタイトルは「燃えよドラゴンズ!」ですね。「燃えろ」ではなく「燃えよ」が正解です。

もうそんなことはいい。がんばったな、ChatGPT。

〈私〉
面白いですね! 中日ドラゴンズについて詳しいんですね。

〈ChatGPT〉
ありがとうございます! 実は私はスポーツに詳しいわけではありませんが、ボケとツッコミのやりとりは漫才の基本的な形式なので、ある程度は作れるかなと思いました。楽しんでいただけたようで、私も嬉しいです!

ここで会話を終えました。ChatGPTくんも機嫌良さそうで何より。ライターの仕事を奪うといわれているAI。かといって敵と捉えるわけにはいきません。味方になってもらい、共に歩んでいくしかないのです。友好的な関係を築くに越したことはありません。

今回は「ナイツ風漫才」をつくることはできませんでしたが、今後進化したら実現できるのかな。というか、GPT4でやったらどうなるんだろう。また試してみます。